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みなさん、こんにちは。
梅雨を送り出すと、夏が私たちを出迎えてくれます。

さて、次の文は、どこの文章でしょう。

「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」

これは、「労働基準法」という法律の第1条第1項の引用です。
続いて労働基準法第1条は、第2項で次のように定めています。
「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように務めなければならない。」

労働基準法第1条は、労働者に、人として、価値のある生活を営むために必要な労働条件を保障することを宣明したもので、労働基準法の解釈にあたって、基本観念として常に考慮されなければならない、とされています。

日本国憲法は、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。」と定めました(第27条第2項)。労働者が、雇用者に対して弱い立場に立っていることから、その保護が必要であり、それを法律で定めることとしたのです。
労働基準法は、この規定を受けて昭和22年に制定されましたが、その際、労働基準法第1条が定められたのです。
以後、約71年が経過しましたが、労働基準法第1条は改正されることなく、基本観念としての役割を果たし続けています。

本年6月29日に成立した働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案、いわゆる「働き方改革関連法案」は、労働基準法を含む8本の労働法関係の法律の改正を求めた法案です。
労働基準法の関係では、いわゆる高度プロフェッショナル制度の創設を含んでいました。当会は、高度プロフェッショナル制度の危険性を指摘し、廃案を求める立場をとってきました。
改正法の条文をみると、「この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。」となっていますから、改正法施行後は、上記労働条件に関しては、高度プロフェッショナル制度の対象となる対象労働者には、労働基準法の定めは適用されないことになってしまいます。

しかしながら、日本国憲法第27条第2項及び労働基準法第1条の趣旨が損なわれてはなりません。
当会は、憲法が労働者を保護することを定めた趣旨、労働基準法第1条の趣旨を踏まえ、これまでも人として価値のある生活を営むための労働条件の保障が実現するよう求めてきました。今後も、労働者の人権が損なわれないよう務めていく所存です。

皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。

平成30年7月1日          愛知県弁護士会会長  木下 芳宣

副会長

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