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消費者問題速報 VOL.227 (2025年3~5合併号月)
1 特殊詐欺の口座提供者の責任を認めた事案(東京地裁令和6年9月27日判決)
犯行グループ構成員による詐欺行為や被害者から150万円が振り込まれたことについては知らないとして、犯行グループ構成員との共犯関係を否定する自己名義の預金口座の情報を第三者に提供した者について、①自己名義の預金口座の情報を第三者に提供する行為がおよそ通常の商取引からかい離し、犯罪につながりかねないものであることは、社会常識として一般に明らかであること、②口座情報提供者は、副業をして儲けるという安易な誘いに乗って口座情報の提供を行ったものであり、その結果、犯行グループ構成員が被害者から150万円を騙取することを容易にさせていることなどから、犯行グループ構成員の不法行為を幇助したものと認められるので、口座情報提供者は、犯行グループ構成員の被害者に対する詐欺行為について、犯行グループ構成員及び他の振込先口座の提供者らと共同不法行為責任を負うと認められるとした。
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2 ゲインスカイの投資案件で、商法を伝播した者に対して、注意義務の存在を明示し責任を認めただけではなく、直接の勧誘を行っていない上位者についても、勧誘行為を制止するなど、自らの勧誘の影響を排除する行動に出たというような事情がない限りは責任が肯定されるとした事案(東京地裁令和6年10月24日判決)
投資を開始しようとすると、既に投資案件へ投資を行っている者の紹介を受ける必要があり、それにより紹介の連鎖が生じることとなる事案について、裁判所は、直接の勧誘者に対しては、どの程度の運用益があれば本件案件を維持することができるのか、支払った投資金は適正に管理及び運用されているのかなどといった事情について、客観的な裏付けに基づいた調査及び確認を行うべき注意義務があるとして責任を認めただけではなく、上記注意義務に違反して勧誘を行った以上は、直接の被勧誘者から更に勧誘を受けた第三者との関係においても、直接の被勧誘者による勧誘行為を制止するなど、自らの勧誘の影響を排除する行動に出たというような事情が認められない限り、上記注意義務違反に基づく責任を負うべきと判示し、直接の勧誘者だけではなく、その上位者についても注意義務違反を認定し不法行為責任を認めた。
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3 損失を被ったのがFX取引の経験を有する会社経営者であっても、金融商品取引業者に対し、新規委託者保護義務違反と過当取引の違法を認めた事案(東京地裁令和6年11月13日判決)
たとえFX取引の経験を有する会社経営者であったとしても、取引所株式指数取引を初めて行う者に対しては、取引当初の一定期間は、無理のない範囲の取引にとどめるよう助言すべき注意義務があるとした上で、取引開始直後から、投資可能金額を超える入金及びこれに基づく多数回の取引を勧誘し、更には両建等の特定売買を含む取引も多数回勧誘していることをもって、新規委託者保護義務違反を認めた。
また、取引期間に比して相当多数の取引が実行されていること、提示した投資可能金額300万円を大幅に超え、金融資産3000万円のうち5分の4にも上る2400万円の入金がされていること、外務員の積極的な勧誘によって両建等の特定売買を含む多数回の取引が行われており、これにより生じる取引手数料を考慮した助言等がされていないことをそれぞれ指摘し、本件取引は専ら取引手数料を収受する目的で、意向に沿わない過当な取引を勧誘して実行させたものと判示して、過当取引の違法を認めた。
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4 ロマンス詐欺のマッチングアプリアカウント転売者の責任を認めた事案(東京地裁令和6年12月20日判決)
SNS型詐欺(ロマンス詐欺)事件について、マッチングアプリのアカウントを氏名不詳の第三者に提供した者に対して、①本件提供行為は、被害者に対し、相手の実在と勧誘された本件取引の安全性に対する誤信を生じさせた誘因となったものとして、本件詐欺の実行を促進し又は容易にさせたというべきであり(幇助行為該当)、②本件アカウントが違法行為に用いられる可能性に思い至らず、安易に本件提供行為に及んだといわざるを得ず(過失認定)、③本件アカウントを第三者へ提供すれば違法行為に用いられる可能性があることは予見することができるといえるから、予見可能性を欠くこともなく、④本件提供行為は、本件詐欺の実行を促進し又は容易にさせたというべきであるから、本件詐欺により原告が被った損害との間で因果関係を欠くことはない、として損害賠償責任を認めた。なお、本件は、約3億円の損害のうち1000万円の賠償を求めたものであるが、公平の観点から被告の過失相殺の主張は排斥されており、全額認容されている。
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5 被控訴人(原審原告)が控訴人会社(原審被告)に対し戸建て住宅(本件建物)の建築を発注して引渡しを受けたが、本件建物に存在する主観的瑕疵(※)が建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵(最高裁平成23年7月21日判決、以下「基本的安全性瑕疵」という。)に当たるとして共同不法行為に基づく損害賠償責任を認めた控訴審判決(東京高裁令和6年10月23日判決)
(1)本件契約において、外壁防火構造として国土交通大臣認定の工法(本件では「9021工法」と呼ばれる方法)によることが契約内容となっていたが、同工法による施工がされていなかった(瑕疵①、主観的瑕疵)。
瑕疵①について、9021工法は国土交通大臣の認定を受けた仕様に従 った施工を行うことによって、初めて防火構造であると認められることになる。しかし、本件建物の外壁は、国土交通大臣の認定を受けた仕様に従った施工をしておらず、防火構造とはなっていなかった。
そのような本件建物の外壁を補修することなく放置すると、本件建物の近隣等で延焼や類焼があった場合に本件建物に居住する被控訴人やその家族の生命、身体又は財産が危険にさらされるおそれがあるといえるとして、基本的安全性瑕疵に当たるとした。
(2)また、選定した断熱材のメーカーが指定する仕様で施工しておらず、断熱材の充填不足等が存在した(瑕疵②、主観的瑕疵)。
断熱材メーカーは、断熱材の施工による断熱効果を確保するため、施工マニュアル等を定めて当該マニュアルに従った施工を求めているものと考えられるところ、本件建物には、施工上の瑕疵が存在し、控訴人会社が上記マニュアル等に従った施工をしなかったことを示すものである。そして、かかる瑕疵について補修することなく放置すれば、本件建物には本来設置されているはずの小屋裏換気口が全くないことも相まって、壁内等に結露等が生じるおそれがあり、構造耐力上の主要な部分の腐食を招き、本件建物の耐久性を低下させるおそれがあるといえる。
このことは、本件建物に居住する被控訴人やその家族の生命、身体又は財産への被害につながる危険があるということができるとして、基本的安全性瑕疵に当たるとした。
(3)結論として、瑕疵①・②を基本的安全性瑕疵に当たるとして、控訴人らの賠償責任を認めた。
※主観的瑕疵とは、目的物が、当事者がその契約締結に際して予定した品質・性能を欠く場合をいう。一方で、客観的瑕疵とは、目的物が取引上通常有するべき品質・性能を欠いている場合をいう。本裁判例においては、目的物に客観的瑕疵はないが、本件建物に存在する主観的瑕疵について基本的安全性瑕疵が認定された。
≪判決文は弁護士会保管≫
6 脱毛エステサロンが無償アフターサービスを変更したことについて、契約書に当該無償アフターサービスの内容が記載されていなかったことは重要事項の記載欠如に当たるとし、クーリング・オフを認めた事案(大阪地裁令和7年3月26日判決)
(1)被告の脱毛エステサロンでは、有償の脱毛コースの終了後、無償アフターサービスを提供していた。
当初、本件アフターサービスの内容は、被告の従業員が有償コース同様に光脱毛の施術を行うというものであったが、その後、被告の店舗において光脱毛の機器を貸与し、利用者自らが施術を行うというものに変更された。
そこで、特定適格消費者団体である原告が、被告に対して、不当利得返還を求める共通義務確認訴訟を提起した。
(2)裁判所は、①当初の本件アフターサービスが、期間及び回数無制限で本件有償コースと同様の施術を行うものであり、それ自体社会通念上独立した経済的価値を有すること、②光脱毛による脱毛の効果を得るには長期間継続して施術を受ける必要があることから、消費者は被告従業員による施術を長期間継続して受けられることを前提に本件エステ契約の締結を検討するといえること、③脱毛施術を自分で行うか他者が行うかは、消費者にとって重大な関心事であること、④本件有償コースの高額な代金は本件アフターサービスに対する対価をも含むと解されることを理由に、本件アフターサービスも本件エステ契約を構成するものであると認定した。
そして、本件エステ契約の契約書において、契約の内容である本件アフターサービスの内容等の記載がなかったことから、特定商取引法42条2項に規定する書面の交付がなかったとして、本件エステ契約の契約書等交付日から8日間経過後におけるクーリング・オフを認めた。
現在、控訴審係属中。
【KC's(特定非営利活動法人消費者支援機構関西)のホームページ】
URL:https://www.kc-s.or.jp/archives/10006290