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消費者問題速報 VOL.226 (2025年1月)
1 ポイント商品の販売が、当該販売スキームが破綻して購入者に損失が生ずる危険があるにもかかわらず、その危険性について説明されることなく行われたものというべきであるとして、代表者につき会社法429条1項、販売業者につき同法350条による損害賠償責任を認めた事案(東京高等裁判所令和6年10月23日判決)
(株)ジェイコスメ・ジャパン(以下「ジェイコスメ」という。)は、化粧品等の販売を目的と標榜し、実態は、換金可能なポイント商品(商品と交換したり換金したりできるショッピングポイント)をマルチ的手法で販売していた業者である。
裁判所は、①ポイント商品の実質年利が約16%ないし26%以上にも及ぶこと、②ポイント商品を購入するための条件としては、登録時に指定された商品を購入し、登録キット料を支払うことが定められていただけであること、③新たな会員を紹介する場合には紹介料が得られる特典も設けられていたことといった当該ポイント商品のスキームからすれば、当該ポイント商品の販売は、いずれ当該スキームが破綻して購入者に損失が生ずる危険があるにもかかわらず、その危険性について説明されることなく行われたものというべきであるとして、代表者につき会社法429条1項、ジェイコスメにつき同法350条による損害賠償責任を認めた。
2 マンションの売買契約を締結するに当たり、消費者の就職に関する不安をあおったケースにおいて、消費者契約法に基づき取消しが認められた事案(東京地方裁判所令和4年1月17日判決)
転職活動を行っていた原告は、採用面接の際、他の就職応募者より劣っている、家を購入してでも入社したいとの意欲を示す必要があるなどと告げられた。原告は、マンションを購入する予定はなかったが、購入しなければ採用されないと考え、面接において、家を購入してでも入社したい旨を述べたところ、内定が決まった旨を伝えられた。そして、原告は、マンションの売買契約を締結した。
原告は、消費者契約法4条3項3号(現5号)イにより本件売買契約を取り消せると主張し、売買代金3000万円の返還等を求めた。
裁判所は、そもそも就職の採用面接においてマンションの購入を勧誘すること自体が極めて不自然であり、勧誘者らは、原告が就職について不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、何ら正当な理由がある場合でないのに、マンションの購入が願望を実現するために必要である旨を告げ、それにより原告は困惑し、本件売買契約の申込みの意思表示をしたものであり、消費者契約法4条3項3号(現5号)イにより本件売買契約の取消しが認められる旨判示し、当事者間の公平の観点から同時履行の抗弁も排斥して返還請求の一部を認めた。
【国民生活2024年12月号27頁】