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消費者問題速報 VOL.225 (2024年11月)
1 診療報酬債権等を裏付資産として発行する社債(レセプト債)を購入した原告らが、発行体の資金流用により損害を被ったことにつき、購入を勧誘した田原証券や同社役員らに対して不法行為等に基づく損害賠償請求を行った事件の控訴審判決(名古屋高等裁判所令和6年4月25日判決)
(1)本件の第一審判決は、VOL.204(2022.5)の1に掲載。
(2)田原証券の責任
控訴審判決は、レセプト債は、集められた資金が診療報酬債権の買取りのみに使用されることが確実に担保されていないことなどから、非常に大きなリスクを内包した安全性の低い商品であり、田原証券はそのことを認識可能であったにもかかわらず、リスクが低い非常に安全性の高い商品である旨の説明をしたとして、第一審判決が認めなかった金融商品取引法38条8号の「虚偽の表示」についての故意・重過失による不法行為責任を認めた。
(3)役員らの責任
控訴審判決は、第一審判決が責任を認めた代表取締役に加えて、取締役内部統括責任者についても、誠実かつ公正な商品審査を自ら行い、代表取締役に対して、レセプト債の販売に際して虚偽の説明を行うことのないよう進言すべき職務上の義務を負っていたのに、これに反して、代表取締役の行為を是正しなかったことに監督義務違反かつ重過失が認められるとして、損害賠償責任を認めた。
また、他の取締役についても、金融商品取引業者の役員として、自社が取り扱ったことのない種類の商品の取扱いを開始する場合には、当該商品の販売に際して虚偽の表示を行うことにならないように代表取締役を監視・監督すべき義務を負っていたにもかかわらず、取締役会で正すことなく放置したことに著しい任務懈怠かつ重過失が認められるとして、損害賠償責任を認めた。
【先物取引裁判例集88巻33頁】