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消費者問題速報 VOL.216 (2024年1月)

1 芸能人養成学校の運営法人が入学時諸経費用について、退学等の場合返金しないと定めていることに対し、そのような意思表示を行わないよう差止請求訴訟を提起した事案の控訴審(東京高裁令和5年4月18日)。被告に入校しうる地位の権利性・対価性が否定された事案。

(1)第一審判決(東京地裁令和3年6月10日判決)

 受講生らの消費者性を認め、消費者契約法9条1号の「平均的損害」のほか、被告に「入学し得る地位」に権利性・対価性を認めて、その評価額を超えて不返還とする意思表示を行わないよう判示。

 原告は、「入学し得る地位」の対価を不返還とすることを認めた点について、不服であり控訴した(被告も控訴)。

(2)控訴審判決

 平均的損害の個々の具体的な費目の評価が変更されたほか、被告に入校しうる地位の対価性については、本件スクールは、法令による規制や所轄官庁の監督等が行われている大学と同列に論ずることは困難であるなどとして、かかる地位の権利性・対価性を否定した(東京高裁令和5年4月18日判決)。

(3)被告法人は上告

 令和5年4月27日付判決で被告は、上告及び上告受理申立てを行っており、原告としても上告審に対応していくこととなる。

 【消費者機構日本HP https://www.coj.gr.jp/zesei/topic_230519_01.html

2 悪質リフォーム訪問販売

 被告会社と自宅の屋根裏補修工事につき請負契約を締結した原告が、上記請負契約の締結にあたり被告会社の従業員の違法な勧誘行為があったとして、被告会社とその従業員、ならびに代表者に対して損害賠償を請求した事案(名古屋地裁岡崎支部令和5年3月30日判決)

 判決では、本件工事の必要性、有効性を否定し、重要事項に関する不実告知と不利益事実の不告知が認められるとしたうえで、勧誘を行った従業員と被告会社に不法行為と使用者責任を認めた。

 さらに、従業員が被告会社のマニュアルに従って本件工事を勧誘していること、被告会社において、従業員が本件工事を勧誘するにあたり何ら客観的根拠を示していないことについて問題があったとする姿勢を見せていないことから、消費者の利益を損なう状況を生じさせた被告会社の経営方針を形成した被告会社の代表取締役らについて、従業員への監視監督義務の懈怠による重大な過失があり、会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負うとした。

3 国際ロマンス詐欺の振り込み先口座提供者に対する不当利得返還請求について、当該振り込みが第三者への債権を消滅させるため法律上の原因があるとした被告の反論を排斥した事案(岡山地裁倉敷支部令和5年9月5日判決)

 本件事案では、被告である口座提供者について、提供口座が詐欺に利用されたことの故意や過失を認めることはできないとして、不法行為に基づく請求は否定されたが、不当利得の返還請求を認めた判決。

 被告である口座提供者は、昭和49年判決を引用しながら、原告の振り込みが、被告の債権者である第三者の有する債権を消滅させる贈与契約に基づく債権の支払い、または、第三者弁済であるとして、法律上の原因があるため不当利得返還請求が成立しないと反論したが、裁判所は債務の存在を否定して弁済を認めず、被告が引用した昭和49年判決の射程も及ばないとして被告の反論を排斥している。