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消費者問題速報 VOL.213 (2023年6月)

1 「ゴルフスタジアム」の個別クレジットの債務について、信販会社の請求の3割を減額した事案(東京地方裁判所令和4年9月30日判決)  

(1)東京に本社のあるゴルフ関連会社・株式会社ゴルフスタジアム(以下「ゴルスタ社」という。)は、顧客らに対し、ホームページを作ってゴルスタ社のバナー広告を貼れば広告料を支払う、と申し向け、具体的には、顧客と提携するクレジット会社・リース会社との間でクレジット・リース契約を結ばせ、ゴルスタ社が毎月のクレジット・リース料と同額の金額を広告料の名目で支払う、などとして勧誘を行い、全国1000名以上のゴルフのレッスンプロやゴルフ練習場の経営者らに300万円~1000万円もの高額のクレジット・リース契約を締結させた。なお、ゴルスタ社は、上記の手段により、提携するクレジット会社・リース会社を通じて多額の資金を調達していたが、突如、「広告料の支払いができなくなった」として支払停止状態になった。本件は、個別クレジット会社(SMBCファイナンスサービス㈱)が、顧客らに対して、クレジット料の支払いを求めた訴訟である。

(2)本判決は、個別クレジット会社について、不当勧誘行為予防義務自体は負わないと判示する一方で、個々の顧客らについて、「信義則に基づいて原告の請求が一部制限される余地が生じうるかについては、本件の具体的事情の下において個別に検討することを要する」とした上で、加盟店契約及び日本クレジット協会の自主規制規則から、1年に1回、加盟店契約の継続時期に行う審査の際に、「法令を遵守した適正な営業活動を行っていることをも対象に調査し、審査しているものといえる」として原告の調査権限を導き、具体的事情として、平成28年には前年の6倍以上のクレジット契約が締結されていること、ゴルスタ社の対象商品がソフトウエアであること、当時「ソフトウエアを対象としたリース契約において顧客から多数の苦情が寄せられてい」たこと、「ソフトウエアがいわゆるホームページ商法として利用されることの多い商品であること」を知っていたものと認められることを認定した上で、平成28年12月に行われた継続審査が不十分であったことと、顧客らが債務を負担するに至ったこととの間には相応の関係があるとして、平成28年12月以降に契約した顧客らについては、信義則の観点から、個別クレジット会社の請求を一部制限し、認容額を残債務額の7割にとどめるのが相当であると判示した。

 【消費者法ニュース134号・148頁】

2 花火大会で冷やしきゅうりを食した原告らがO-157に感染し集団食中毒が発生したことにつき、製造物責任ないし不法行為責任に基づき、露天商に対し損害賠償が認められた事案(静岡地方裁判所令和3年3月11判決)

(1)本件は、花火大会の露店で加工販売した冷やしきゅうりを購入して食した原告らが食中毒を発症したと主張して、露天商に対して製造物責任ないし不法行為に基づき、街商連合に対して安全配慮義務違反ないし使用者責任に基づき、大会本部に対し安全配慮義務違反に基づき、市に対し国家賠償法1条1項ないし安全配慮義務違反に基づき損害賠償請求をした事案である。

(2)本判決は、「製造物責任法3条本文の「製造物」とは、「製造又は加工された動産」をいい(同法2条1項)、「加工」とは、原材料に人の手を加えることによって、その本質を保持させつつ新しい属性ないし価値を付加することをいうところ、食品の場合、原材料に味付けなどを行ってこれに新しい属性、価値を付加したといえる程度まで人の手が加えられていれば、加工に該当する。」、「本件冷やしきゅうりは、」「原材料であるきゅうりを□△に漬けて味付けをし、その味や食感について新たな属性、価値を付加したものであるといえるから、「加工された動産」としての「製造物」に該当するというべきである。そして、」露天商は、「業として、本件従事者らを介して、きゅうりを切ったり皮を剥かせ、□△に漬け込ませる等して加工し、製造物である本件冷やしきゅうりを製造したといえるから、「製造業者」といえる。」さらに、原告らは、「本件冷やしきゅうりを喫食するなどしたことにより、食中毒を発症した者らである。」製造業者である露天商は、「その製造物である本件冷やしきゅうりが通常有すべき安全性を欠いた欠陥により、他人の身体等を侵害したものであり、これによって生じた損害を賠償する責任を負うというべきである。」として、露天商に製造物責任が成立するほか、露天商の注意義務違反も認めて不法行為責任が成立することも明らかにした。

(3)なお、露天商は、花火大会の来場者が冷やしきゅうりを食べたことで食中毒事故が発生したことは立証されていないと主張していたが、花火大会において食中毒を発症したとされる513人のうち大多数である510人が本件冷やしきゅうりを食していたこと、これら発症者が本件冷やしきゅうり以外に共通して飲食したものはないことが認められるとして、食中毒事故はO-157が付着した冷やしきゅうりを食べたことが原因であると推認されるとして、露天商の主張を排斥した。

(4)街商連合、大会本部、市に対する責任はいずれも認められなかった。

 【国民生活2023年4月号・31頁、Westlaw Japan】

3 投資用マンション・投資用不動産被害110番実施のお知らせ

 以下の要領で110番を実施します。

 【日時】令和5年6月30日(金)午前10時~午後4時

 【電話】052-223-2355(3回線)  

 以 上