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消費者問題速報 VOL.212 (2023年5月)

1 国際ロマンス詐欺の振込先の口座名義人(以下、「被告」という。)に、被告以外の者の名義の口座への送金分も合わせて被害額全額についての共同不法行為責任が認められた事案(名古屋地裁令和4年10月25日判決)

(1) 原告は、マッチングサイトで知り合った「エイミー」と名乗る人物とLINEの交換を行った。その後、エイミーからFX投資話を持ち掛けられ、必ず儲かる等と言われ、「fortune ever」なる架空の投資サイト(以下、「本件サイト」という。)への登録・投資を勧誘された(以下、「本件詐欺」という。)。

 原告は、本件サイトに登録し、被告名義の口座(以下、「本件口座」という。)に、令和3年6月25日及び同月28日に合計96万円を振り込んだほか、被告以外の者の名義の口座にも合計370万円を振り込んだ(被害総額466万円)。

 原告は、被告が本件詐欺において単なる口座提供行為にとどまらない重要な役割を担っており、本件詐欺の被害全体について本件サイト運営者らとともに共同不法行為責任を負うとして、本件口座の名義人である被告に対して、上記被害額合計466万円及び弁護士費用46万6000円の合計512万6000円の損害の一部請求として232万円(本件口座の口座凍結時残高)を請求した。

(2) 裁判所は、以下の通り判示し、原告の請求を全て認容した。

 「本件口座は令和3年6月22日から同年7月1日までの間、本件サイトを利用した詐欺の入出金に利用されており、合計5417万8181円の被害金の入金があったところ、被告は、振り込まれた被害金の全額について身体認証キャッシュカードを利用して自ら出金し、それを本件サイト運営者らに交付するとともに、原告以外の被害者5名に対して本件サイトの利用が詐欺の手段であることを気付かせないためのいわゆる撒き餌として本件口座から上記被害者らの預金口座に対して自ら送金を行っていた」。これらの事実に加え、被告が、被害額全額につき被告が共同不法行為責任を負う旨を記載した原告準備書面1に対して認否反論を提出していないこと、原告の申し出た本人尋問に関し、尋問事項書の送達を受け、裁判所から呼び出しを受けたにもかかわらず、正当な理由なく期日に出頭しなかったことも考慮すれば、「被告が本件口座を本件サイト運営者らに利用させた行為は、原告に対する故意又は過失による不法行為であり、本件詐欺の全体について、本件サイト運営者らの不法行為との間で関連共同性を有するものであると認めるのが相当である。」

 以上によれば、本件サイト運営者らと被告は、本件詐欺に関し、原告が本件口座に送金した96万円だけでなく、被告以外の者の名義の口座に送金された370万円についても共同不法行為に基づく損害賠償責任を負う。

 (なお、本件では、提訴後の調査嘱託により本件口座の取引履歴が開示され、取引履歴上、1回の入出金の額が、身体認証キャッシュカードの利用を必要とする金額以上であったことがわかり、身体認証キャッシュカードが利用されていたことが判明した。)

 【消費者法ニュースNo.134 2023.1】