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消費者問題速報 VOL.210 (2023年3月)

1 貸金返還請求訴訟において、既判力を有しない仮執行宣言付支払督促の確定によって消滅時効期間が10年に延長されることはないと認められた事案(宮崎簡易裁判所令和4年12月13日判決)(確定)

(1)消費者金融業者の原告(㈱しんわ)は、平成18年2月1日に被告との間で借入限度基本契約を締結し、同月27日までに合計20万円を被告に貸付け、その後、原告が支払督促の申立てをし、同年10月5日に仮執行宣言付支払督促が確定した。本件は、原告が、仮執行宣言付支払督促が確定したとして令和4年に被告に給付訴訟を提起したところ、被告が時効消滅を主張して争ったものである。

(2)本件では仮執行宣言付支払督促の確定により消滅時効は10年に延長されたのか、が争点となった。

(3)被告は、確定した支払督促は確定判決に認められる既判力はなく、既判力がない以上、確定した権利とはいえず、時効消滅期間が旧民法174条の2による10年に延長されることはないと主張し、時効を援用して、本件貸金債権は時効消滅したと主張した。
 これにつき本判決は、確定支払督促には確定判決と同一の効力があり、その結果、本件貸金債権は、本件仮執行宣言付支払督促の確定により、消滅時効が従前の商行為債権の5年から新に10年間の時効期間が進行を開始するとも解されるが、そもそも、仮執行宣言付支払督促には、その確定後も確定判決に認められる既判力は認められないことから、被告は、本件貸金債権にかかる裁判において、本件仮執行宣言付支払督促の先後を問わず生じた権利を主張して、本件貸金債権の請求の当否を争うことができるというべきであるとし、確定した本件仮執行宣言付支払督促には既判力が認められないことから、本件訴訟において、被告に生じた本件貸金債権にかかる権利の主張を阻害する結果となる旧民法174条の2第1項による消滅時効期間の10年延長を認めないことが相当と解され、この点において民事訴訟法396条の「確定支払督促には確定判決と同一の効力を有する」の解釈は制限されると解するとした。
 そして、原告は被告から平成27年12月11日に5万円の返済を受けており、遅くとも同日から5年後の令和2年12月11日が経過した時点において、旧商法522条による商行為債権の消滅時効期間が完成していることは明らかであり、被告の消滅時効援用により、本件貸金債権は時効消滅したことを認めることができるとし、原告の被告に対する請求は理由がないとして、棄却した。

(4)ただし、本争点については、本判決とは逆に消滅時効期間が10年に延長されるとの結論をとる裁判例(札幌高裁令和4年10月7日判決ほか)も存在する。

2 全国統一教会被害対策弁護団の動き

 本年2月22日、旧統一教会に対し、50人約16億円の被害回復の申入れをしました。同時に弁護団と早期の被害回復のために面談交渉の申入れもしました。

 旧統一教会から、3月2日に事実関係の調査に時間がかかることと面談交渉を拒否する回答がありました。

 弁護団は被害相談を現在も受け付けており、3月中にも被害回復の申入れを行う予定です。

 弁護団のホームページはこちら→ https://uchigai.net/