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消費者問題速報 VOL.209 (2023年2月)

1 家賃債務保証業者に賃貸借契約を無催告解除する権限を付与する趣旨の消費者契約の条項(いわゆる「追い出し」条項)等が消費者契約法10条に該当するとして、適格消費者団体による差止等請求が認められた事案(最高裁令和4年12月12日判決、原審:大阪高裁令和3年3月5日判決)

(1) 本件は、家賃債務保証業者Yが、消費者である賃借人や個人の連帯保証人との間で締結する保証委託等の消費者契約の条項に、消費者契約法により無効とされるべきものが含まれているとして、適格消費者団体であるNPO法人消費者支援機構関西が、消費者契約法12条3項に基づき、条項の使用の差止等を求めた事案である。

 問題となった契約条項の内容は、以下のとおり。

① 支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、Yが、無催告にて原契約(賃貸借契約)を解除することができるものとする(13条1項前段)。 

② 賃料等の支払を2か月以上怠るなど4つの要件を満たすときは、Yが、建物の明渡しがあったものとみなすことができる(18条2項2号)。

(2) 本判決の概要

 ア ①13条1項前段について

 原審が、賃料等の支払の遅滞を理由に原契約を解除するにあたり催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情が存する場合に、無催告で解除権を行使することを定めた条項であると解したのに対し、最高裁は、消費者契約法12条3項に基づく差止等請求において、原審のような限定解釈をすることは、解釈に疑義の生ずる不明確な条項が引き続き使用されることにより消費者の利益を損なうおそれがあるから相当ではないと判断した。

 その上で、当該条項は、原契約の当事者ではないYがその一存で何らの限定なく原契約につき無催告で解除権を行使することができるとするものであり、賃借人が重大な不利益を被るおそれがあるとして、消費者契約法10条に該当すると判断した。

 イ ②18条2項2号について

 原審が、所定の4要件を満たすことにより、賃借人が建物の使用を終了してその占有権が消滅しているものと認められる場合に、Yが、建物の明渡しがあったものとみなし、原契約を終了させる権限を付与した趣旨であると解したのに対し、最高裁は、原契約が終了している場合に限定して適用される条項であることを示す文言はないなどとして、原契約が終了していない場合でも、Yに建物の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定めた条項であると判断した。

 その上で、当該条項に基づいて建物の明渡しがあったものとみなされると、賃借人は、原契約の当事者ではないYの一存で、建物に対する使用収益権が一方的に制限されることになる上、建物の明渡義務を負っていないにもかかわらず、法定の手続によることなく明渡しが実現されたのと同様の状態に置かれ、著しく不当であるなどとして、消費者契約法10条に該当すると判断した。

 【最高裁HP】【消費者支援機構関西HP:http://www.kc-s.or.jp/】

2 事業者向けのファクタリング取引が、実質的に貸金業法及び出資法にいう「金銭の貸付け」に該当するものと認められた事案(名古屋地裁令和3年7月16日判決・確定)

(1) 本件は、Yが株式会社Aに対し債権譲渡の形式を用いて違法な貸付行為をしたとして、Aの破産管財人Xが、Yに対し、不法行為に基づき、AがYに支払った金員合計5444万円の損害賠償を請求した事案である。本件の「ファクタリング取引」の概要は、以下のとおり。

 ア Aは、複数の商業施設等のディベロッパーから一定区画を賃借(定期建物賃貸借契約)して書籍や雑貨等の販売店舗を経営していた。これら定期建物賃貸借契約では、Aは毎日の売上金をディベロッパーに預託し、一定期間内に預託された売上金から賃料債務等が控除されて、一定の支払日に返還されることになっていた(以下、Aのディベロッパーに対する債権を「本件債権」という。)。なお、本件債権は、譲渡禁止特約付き債権であった。

 イ AとYは、本件債権のうち5444万円分を買取額4900万円で債権譲渡する旨のファクタリング取引契約(以下、「本件契約」という。)を締結し、Yは、Aに対し、本件契約に基づき4900万円を交付し、「売買」を原因とする債権譲渡登記を具備した。

 ウ 本件契約の条項には以下の内容が含まれていた。

① Yは、債権譲渡登記の登記事項証明書を債務者に送付することについて、Yの判断で猶予することができる。(なお、実際、Yは登記事項証明書をディベロッパーに送付することなく、Aがディベロッパーから本件債権の支払を受けた上でYに支払をしていた。)

② AはYに対し譲渡した債権について債務者の資力を担保しない。

(2) 本判決は、①本件契約ではYが自らディベロッパーから支払を受けることは想定されておらず、Aがディベロッパーから支払を受けた上でYに支払いをすることが予定されており、この点は、本件契約の法的性質が、真正な売買ではなく、消費貸借契約と評価することに整合し、また、②Aが譲渡した債権につき債務者の資力を担保しない旨の条項があるものの、本件債権の内容からしてディベロッパーによる債務不履行の可能性は極めて低いなどと認定したうえで、本件契約は実質的に貸付けと同様の機能を有するものと認められ、YがAに対し本件契約に基づき金銭を交付したことは貸金業法や出資法にいう「金銭の貸付け」に該当すると認定した。

 また、本件契約に基づくYのAに対する金員の交付は、不法原因給付にあたるから、AがYから交付を受けた4900万円を損害額から控除する必要はないとし、Xが請求した損害額(5444万円)が全額認められた。

 【判例時報2534号76頁】

3 先物全国研・欠陥全国ネット名古屋大会開催のお知らせ

 以下のとおり地元名古屋で全国大会が開催されますので、関心のある方はぜひご参加ください。なお、参加方法等については、下記までお問い合わせください。

(1)第88回先物取引被害全国研究会・名古屋大会

 日 程:令和5年(2023年)4月14日(金)・15日(土)

 場 所:ウインクあいち(愛知県産業労働センター) ※ウェブ併用

 問合先:名古屋先物取引被害全国研究会代表・平野憲子弁護士

(2)第53回欠陥住宅被害全国連絡協議会・名古屋大会

 日 程:令和5年(2023年)6月10日(土)・11日(日)

 場 所:ウインクあいち(愛知県産業労働センター) ※ウェブ併用

 問合先:欠陥住宅被害東海ネット事務局・水谷大太郎弁護士