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消費者問題速報 VOL.206 (2022年9月)

1 NPO法人Xが、高齢者Aとの間で身元保証契約締結に伴って締結した死因贈与契約が、公序良俗に反し無効と判断された事案(名古屋高裁令和4年3月22日判決、原審:名古屋地裁岡崎支部令和3年1月28日判決)

(1)亡Aは、入所していた特別養護老人ホームから斡旋されたNPO法人X(一審原告・控訴人)との間で、身元保証契約を締結するとともに、亡Aの不動産を除く全財産についてXに無償で譲渡する内容の死因贈与契約を締結した。本件は、Xが本件死因贈与契約に基づき、亡Aが預金口座を有していた信用金庫に対して亡Aの預金の払戻請求をするとともに、亡Aの相続人であるYらに対して主位的にA名義の預金債権をX名義に変更すること、予備的に債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償として預金相当額の支払いを求めて訴訟提起したものである。

(2)裁判では、本件死因贈与契約が公序良俗違反により無効となるか否かが争点となり、本件身元保証契約と本件死因贈与契約の関係性、本件身元保証契約の内容及び必要性、本件死因贈与契約の必要性、消費者契約法4条3項5号の違反、暴利性等が検討された。

(3)本判決は、Xの身元保証契約書等のひな型に当初から死因贈与が契約に含まれているかのような説明があるほか、Xが葬儀・納骨まで又は全部面倒をみるという内容の身元保証契約を締結したときは死因贈与契約を締結してほしいと施設側に明言していた等の事情から、Xとの死因贈与契約は、身元保証契約を前提とし、当初から想定していた死因贈与の部分を具体化したものということができるとした。そうすると、本件死因贈与契約は本件身元保証契約の内容も踏まえて内容を理解すべきであるところ、Xは、身元保証等の対価90万円の支払いを約したにもかかわらず、それに加えて自身の死後に不動産を除く全財産(当時の預金残高で550万円余り)をもXに贈与することをも同時に約したことになるとした。

 【実践成年後見№94】

2 原告及び被告(ハウスクリーニング事業のフランチャイズを展開する株式会社)の間で締結されたフランチャイズ加盟店契約につき、原告が被告に対して支払ったフランチャイズ開業初期費用約219万円の返還請求を認容した事案(大津地裁令和2年5月26日判決)

(1)本件は、原告が、特定商取引に関する法律(以下「特商法」という。)58条1項に基づきフランチャイズ加盟店契約のクーリングオフを主張し、本件契約締結時に被告に対して支払っていた開業初期費用約219万円の不当利得返還及び不法行為に基づく損害賠償を求めて訴訟提起したものである。

(2)裁判では、本件契約に係る取引内容が「業務提供誘引販売取引」(特商法51条)に該当するか否かが争点となった。被告は、本件契約は原告自身の営業により獲得したハウスクリーニングの業務を行うことを予定したものであり、原告は被告のクリーニング業務のノウハウを得るために本件契約を締結したにすぎないことから、「業務提供誘引販売取引」には該当しないことを主張した。

(3)本判決は、本件契約に係る取引について、被告は、①ハウスクリーニング事業に必要な機材等を販売し、また、開業前研修等の役務の提供を有償で行う事業であって、被告が提供し、あっせんするハウスクリーニング業務に従事することにより利益(業務提供利益)を収受し得ることをもって原告を誘引したこと、②原告ら加盟店が、フランチャイズ開業初期費用として、機材や研修費等合計約219万円を支払うなどの金銭的負担(特定負担)を伴っていたことから、特定商取引法51条の「業務提供誘引販売取引」に該当することを認めた。

 【現代消費者法NO.55】