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消費者問題速報 VOL.202 (2022年3月)

1 結婚披露宴契約の新型コロナウイルスの影響による解約申し入れがやむを得ない事由によるものと認められ、規約に基づく取消料の請求が棄却された事案(名古屋地方令和4年2月25日判決)

 被告らは、令和元年9月16日、原告との間で、原告運営のホテルで令和2年6月14日に結婚披露宴を開く旨の結婚披露宴契約を締結し、申込金20万円を支払ったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年4月8日、上記契約の解約の申出をした。原告の結婚披露宴規約には、披露宴日の90日以内の披露宴の取消しの場合、申込金の全額と見積金額の30%及び実費を申込者(被告ら)が取消料として原告に支払う旨の取消料条項があった。本件訴訟は、原告が、被告らに対し、本件取消料条項に従い算定された取消料から既払分である申込金及び実費を控除した残金150万0803円等を請求した事案である。

 本件では、本件解約が本件取消料条項の適用対象か否かが争点となった。

 本判決は、本件規約上、天災等やむを得ない事由により披露宴が開催できない場合に、原告には取消料の負担のない解約権を認める定めがある一方、利用者にはそのような解約権の定めがない点を指摘し、損害の公平な分担の観点等から、利用者による契約の解約等について利用者側に帰責事由がないと認められる場合は、本件取消料条項の想定する場面ではなく、適用の対象外と解する、との判断枠組みを示した。

 そのうえで、本件では、令和2年4月7日に7都道府県を対象区域とした緊急事態宣言が発令され、同月16日には全都道府県を対象区域とする緊急事態宣言が発令されているところ、発令当時の一般的な認識として、その実施時期の終期とされた同年5月6日まで新型コロナウィルスの感染拡大が収束に向かうとの見通しを持ち得るような事情は特になく、全国的に急速に感染が拡大し日常生活や健康に甚大な影響や被害が生ずることになる可能性もあることを念頭に3密を避け、感染防止のための行動をとる必要が強く意識される状況にあり、被告らが本件解約を申し出た令和2年4月8日当時、その後2、3箇月内の披露宴の開催は感染拡大を招くおそれがあり、現実的に不可能であると一般的に認識されていたなどと認定した。そして、このような当時の一般的な認識を前提に、被告らが同様に考えて本件解約をしたのもやむを得ないことであり、被告らに帰責事由があるとは認められないと判断し、本件取消料条項の適用を否定して、請求を棄却した。

 

2 【エフォートカンパニー事件】集団クレジット被害において、クレジット契約の不成立、不実告知による取消し、またはクーリング・オフにより、クレジット代金支払債務の不存在確認及び既払金の返還が認められた事案(東京地裁令和3年10月13日判決)

 本件は、学習教材の販売等を行っていた株式会社エフォートカンパニーが、訪問販売等の形態で、モニターになれば無償で教材を提供する等と告げ、モニターになるために必要な手続きであるとしてクレジット契約を締結させていた(クレジット代金は同社が自ら負担すると約束して顧客の口座に送金していた)ところ、同社が破綻したことにより顧客らが多額のクレジット債務を抱える事態となり、集団クレジット被害が顕在化したという事件である。

 本件訴訟(第1事件)では、顧客らがクレジット会社に対し、クレジット契約の不成立、クレジット契約の割賦販売法に基づくクーリング・オフ、エフォート社による不実告知等を理由とする取消し等を理由に、クレジット代金支払債務の不存在確認及び既払金の返還を求めた。

 本判決は、まず、平成20年の割賦販売法改正は、個別信用購入あっせんにおいては構造的に販売業者等が違法ないし不相当な販売行為等に及んで不適正与信を発生させる(結果として購入者等は自身の信用状態に見合わない過大なクレジット代金支払債務を負う)危険性が高いことを前提に、クレジット会社と販売業者等との間には密接な関係があることから、販売業者等による違法販売行為等を防止する責務をクレジット会社に負わせるとともに、一定の場合に購入者等が契約から完全に解放されることを可能にし、販売業者等に関するリスクを専らクレジット会社に負担させることによって消費者である購入者等の保護の徹底を図ったものであるとし、クレジット会社の調査義務、書面交付義務、クーリング・オフ、不実告知取消についての法解釈にあたっては、個別信用購入あっせんにおいて購入者等の保護が最重視され、クレジット会社は上記保護のために調査等の責務を担い、リスクを負担するという視点から検討すべきであると指摘した。

 そのうえで、かかる購入者等の保護を最重視する視点から、販売業者等による不正行為に関与していないとまで断言できない購入者等がクレジット会社に対しクーリング・オフや不実告知等によるクレジット契約の取消しができるか、との争点について、クレジット会社は、販売契約等の実態を正確に把握して法定書面を作成し、購入者等に交付する義務を負い、不備のない法定書面を交付しない限り、いつまでもクーリング・オフができるとした。不実告知についても、購入者等は、販売業者等から、上記不正行為に関連するクレジット契約締結についての勧誘に際し、契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者等が実質的に負うこととなるリスクの有無、契約締結によりあっせん業者に実質的な損害が生ずる可能性の有無など、契約締結の動機に関する重要な事項について不実告知を受け、同不実告知に係る内容を真実と誤認し、同誤認によって上記クレジット契約を締結した場合は、同法35条の3の13第1項6号に基づき、上記クレジット契約を取り消し得るとした。

 そして、クレジット契約の不成立、割賦販売法に基づくクーリング・オフ、または不実告知取消を認めて、クレジット代金支払債務の不存在確認及び既払金返還請求を認めた(なお、第2~第6事件として、クレジット会社が顧客らに対し、エフォート社との共同不法行為に基づき損害賠償を請求したが、棄却されている。)。

 【クレジット・リース被害対策弁護団HP https://credit-lease.com】