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消費者問題速報 VOL.200 (2022年1月)

1 【ゴルフスタジアム関連】専らリース提供者と業務提携関係のある供給者等がリース契約の勧誘等を代行し、契約の媒介あっせんを行う、いわゆる「提携リース契約」に基づくリース料の請求について、信義則を理由として請求可能額をリース料残額の7割に制限した事案(大阪地裁令和3年12月23日判決)

(1) 株式会社ゴルフスタジアム(以下「GS」という。)は、ゴルフ関係事業者である被告に対してHPの製作を勧誘し、実質的にはHP製作を目的としながら、形式的には、GSが供給したソフトウェアを対象物件とするリース契約を原告と被告との間で締結させた。他方でGSと被告との間でも、GSから広告利用料の支払を受ける内容の広告契約を締結し、GSは被告に対して、被告が原告に支払うべき月額リース料(=HP製作費)と同額の広告利用料をGSから毎月支払うため、被告に実質的な費用負担は生じない旨の説明をしていた。もっとも、継続的な広告利用料の支払いは保証されてはおらず、被告は将来的には自らの負担でリース料を支払うことになる可能性はあった。その後GSが破産し、被告に対する広告利用料の支払いがされなくなったため、被告も原告へのリース料の支払いを止めた。原告は、被告に対し未払のリース料(129万6000円)の支払いを求めて提訴した。 

(2) 本件の争点は多岐にわたるが、裁判所は、錯誤無効及び同時履行の抗弁を否定し、債務不履行解除や注意義務違反を理由とする損害賠償請求は認めなかったものの、次の様に判示し、信義則を理由として原告の請求可能額を制限した。

 「原告のようなリース提供者は、提携リースにより、利用者の勧誘や一部の事務手続等を自ら行うことなくリース契約締結に至ることができるという便益を得ているところ、前記(1)アで説示した利用者の利益が害され得る提携リースの構造的な危険は、そのような便益を実現する際に随伴するものといえるから、上記構造的な危険が現実化した場合において、原告のようなリース提供者がいかなるときも利用者に対してリース料の全額の支払を求めることができると解するのは相当ではない。

 そして、提携リース自体を否定的に評価することはできないとしても、既に説示した提携リースの構造等に照らせば、提携リースにより一定の便益を享受しているリース提供者は、そのような便益に随伴する上記構造的な危険の現実化をできる限り防止するために可能な対策を一般的に講じることが期待されている」

 「原告が、そのような対策を十分に講じなかったために、供給者による不当な勧誘等により利用者の利益を害する内容のリース契約が締結され、利用者の利益が害されるという結果を招来した場合には、原告が利用者に対してリース料の支払を請求するに当たって、信義則上一定の制約を受けることになってもやむを得ないというべきである。」              

2 消火器の訪問販売を行い、リース契約を締結していた事業者に対し、適格消費者団体が申し立てた差止訴訟について、リース契約の拘束力を認めず、不当条項の使用や不当勧誘等の禁止等を言い渡した事案(仙台高裁令和3年12月16日判決)(原審:仙台地裁令和3年3月30日判決)

(1) 本件は、高齢者を狙って不当な消火器販売を繰り返しているとして、適格消費者団体が消火器販売会社による不当勧誘行為などの差し止めを求めた訴訟の控訴審であり、適格消費者団体の主張が全面的に認められたものである。

(2) 裁判所は、契約期間途中で解約を制限する条項、解約時に残余料金を一括して支払う条項、契約を自動更新する条項、被告らの権利の実行等に要する費用や弁護士費用を負担させる条項、契約当事者が契約後に決まるとする条項、物件の受領、維持管理責任及び損害負担に関する条項について、消費者契約法(以下「法」という。)8条1項1号に規定する事業者の損害賠償責任を免除する条項又は同法10条に規定する消費者の利益を一方的に害する条項にあたるとした。なお、解約時に残余料金を一括して支払う条項について、原審は法9条1号の平均的損害を超える部分について無効として法10条による無効の主張を排斥したのに対し、控訴審は全部につき法10条による無効とした。

(3) さらに、控訴審は次の条項についても法10条により無効と判断した。

 ア 代理人として署名した者に連帯債務を負担させる条項

 「何ら合理的な理由なく、 民法の代理人の規定に比して消費者の義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項であり、消費者契約法10条により無効となる条項であると認められる。」

 イ リース料等の支払方法は契約日から10日頃に送付する書面により知らせる旨の契約条項

 「この契約条項は、特商法4条及び5条による書面の交付義務の要件を満たさない別紙1、2のパッケージリース契約書と題する契約書用紙や天秤と題する書面を交付して先に契約を締結させ、支払方法が通知された時には契約日から8日間のクーリング・オフ期間が徒過していると誤信させるための条項であると認められるから、特商法のクーリング・オフ制度による消費者の解約権の行使を実質的に制限することにより、消費者の権利を制限し、信義則に反し消費者の権利を一方的に害する条項であり、消費者契約法10条により無効となるものである。」

 ウ 専属的合意管轄を定める条項

 「民事訴訟法が定める管轄に比べて裁判を受けられる裁判所を限定し、民事訴訟法の規定に比べて消費者の権利を制限するものであって、被告らが、仙台市(略)の店舗を仙台支部と称し、被告らの顧客の多くが、仙台市内を中心とする宮城県に在住し、消火器の設置も宮城県内でされているにもかかわらず、横浜簡易裁判所又は横浜地方裁判所を専属管轄とするような専属管轄を定めることは、被告らの営業の実情に照らしても専属管轄を定めて消費者の権利を制限する合理的な理由が認められないから、信義則に反して消費者の利益を一方的 に害する条項にあたり、 消費者契約法10条により無効となる条項である。」

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