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消費者問題速報 VOL.195 (2021年6月)

1 給与ファクタリング(ミナミ実業株式会社・廃業)について、給与債権の債権譲渡契約が無効と認められ、業者による取立てについて慰謝料等の損害賠償請求が認められた事案(熊本地裁令和3年4月20日判決)

 本件は、給与ファクタリング業者Yとの間で、勤務先に対する給与債権を買戻特約付きで譲渡(以下「本件契約」という。)したXが、Yから繰り返し買戻代金の取立てを受けたため、①本件契約の無効を主張して債務不存在確認を求めるとともに、②不法行為に基づき損害賠償を求めた事案である。

 本判決は、①について、債権譲渡の形式をとっていても、労働基準法24条1項の賃金全額払いの趣旨から、Yは自らXの使用者に対して賃金の支払いを求めることはできずXを通じて回収を図るほかないから、本件契約は、実質的には一定の利用期間経過後に返済を約して資金を融通することを目的とするものであって、金銭の交付と返還約束を主たる内容とする金銭消費貸借契約に該当すると解釈した。そして、契約締結時点から譲渡債権の支払期限又は買戻期限までの年利率が463%~3660%と貸金業法及び出資法の定める利率を大幅に超過していることから、本件契約は、貸金業法42条1項又は民法90条に違反して無効であり、Xは本件契約に基づく債務を負わないと判示した。

 また、②については、Yが弁護士からの受任通知受領後もXやXの勤務先に対して執拗に威圧的な言動で取立てを継続した行為について、Xの生活の平穏を害し、職場環境を害してXの信用を毀損したとして不法行為に該当すると認定し、慰謝料(20万円)及び弁護士費用の損害賠償請求を認めた。

 

2 「くりっく株365」(取引所株価指数証拠金取引)について,新規委託者保護義務違反及び過当取引があったとして、金融商品取引業者(KOYO証券株式会社)及びその従業員の不法行為責任を認めた事案(名古屋地裁令和3年5月20日判決)

 判決は、くりっく株365の取引について、X(60代会社経営者男性)が適合性原則違反、説明義務違反、新規委託者保護義務違反、指導助言義務違反、実質一任売買、過当取引の主張を行ったところ、新規委託者保護義務違反(指導助言義務違反については同旨として判示せず)及び過当取引の違法性を認めて、被告らに対し使用者責任ないし共同不法行為に基づき損害賠償責任を認めた。なお、証券取引の経験等を考慮して、過失相殺は4割とした。

 まず、判決は、くりっく株365の商品特性について、取引の仕組みの複雑さやリスクの程度等から、取引に習熟した者でなければ、短期間のうちに多額の損失を被るおそれが高い取引と認定した。

 その上で、判決は、新規委託者保護義務に関して、取引開始後間もない新規委託者は、相場変動や取引手法に関する知識・経験が不十分な場合も多く、それにもかかわらず過大な取引を行えば、いたずらに損害が拡大し、不測の損害を被る可能性が高いとした。そして、被告会社が提供するくりっく株365の「コンサルティングコース」においては、被告らは、取引に習熟していない新規委託者に対し、無理のない金額の範囲内での取引を勧め、限度を超えた取引をすることのないよう助言すべきであり、短期間に相応の建玉枚数の範囲を超えた頻繁な取引を勧誘したり、また、損失を回復すべく、さらに過大な取引を継続して損失を重ね、次第に深みにはまっていくような事態が生じるような取引を勧誘したりしてはならない義務を負い、これに反する行為をした場合には不法行為を構成するというべきであると判示した。

 なお、本件は双方控訴となり、名古屋高裁に控訴審係属中。

 

3 ゴルフスタジアム被害対策弁護団東海が、過失相殺なしの勝訴判決を獲得しました(名古屋地裁令和3年4月27日判決)

 東京に本社のあるゴルフ関連会社・株式会社ゴルフスタジアム(以下「GS」という。)は、「無料でホームページを作りませんか、ホームページに、ゴルフスタジアムのバナー広告を貼らせてもらえれば、広告料を支払います、このためには、ゴルフスタジアムが提携するクレジット会社・リース会社との間でクレジット・リース契約を結んでもらう必要がありますが、ゴルフスタジアムは、広告料の名目で、毎月のクレジット・リース料と同額の金額を責任もって支払います。ですので、お客様には一切のご負担はありません」などの詐欺的なセールストークを用い、ゴルフのレッスンプロやゴルフ練習場の経営者ら(以下、「顧客ら」という。)に高額のクレジット契約・リース契約を締結させ(無価値・粗品に過ぎないDVDソフトを目的とするクレジット契約・リース契約を締結させる手法)、これら顧客らの多大な経済的負担の下、提携するクレジット会社・リース会社を通じて、多額の資金を調達し、自転車操業を繰り返していました。

 こうした被害について、弁護士有志により弁護団を結成し、関連信販会社3社及びリース会社1社、並びにGSの代表者ら役員、勧誘担当者に対して訴訟を提起していたところ、代表者ら役員及び勧誘担当者に対して、被害者勝訴の判決が言い渡されました(信販会社とリース会社とは昨年和解解決済み)。

 判決は、「GS商法は、GS顧客に対して商取引上の実体を伴う物品を対象としたものとは認め難いリース契約等を締結させてGS社が販売代金名目の金員を取得した上、MAソフト(注・ゴルフのスイングを撮影し、再生・解析できる"モーションアナライザー"と称するソフト。)等の販売代金を超える収益を上げなければ、GS顧客に対する広告枠利用料を支払うことができずに自転車操業を繰り返すか、破たんすることになるものであったところ、・・・、リース契約等の債務をGS顧客に負担させてリース会社等から融資を得ようとして、ホームページを無料で制作できることを謳って営業を行い、広告枠利用料が継続的に支払われることの期待を抱かせて原告らの負担が生じることはないと誤信させ、リース契約等を締結せざるを得ない状況を作出するなどして契約を締結させていたもの」であるとして、「GS商法は、その当初から破たん必至の詐欺的なもので、違法であった」と明確に断じました。

 その上で、各被告について、GS商法が破たん必至であることを認識し又は認識し得たのに、漫然とGS商法を継続させたなどとして、被害者らの過失相殺をすることもなく、(途中退任した一部役員の退任後の責任を除き)会社法429条ないし民法709条の責任を認めました。

 なお、被告が控訴し、名古屋高裁に控訴審継続中。