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消費者問題速報 VOL.194 (2021年5月)

1 情報商材購入に関するクレジットカード決済について行ったチャージバ ックの申請が不法行為にあたるとして、情報商材を販売する業者が消費者 に対してチャージバック認容相当額の支払を求めた事案について、業者の 請求を棄却した事案(東京簡裁令和2年10月14日判決)

 本件は、「数百万円の利益を上げることができる」などの勧誘を受けた消費者が、情報商材をクレジットカード決済により購入し(以下「本件売買契約」という。)、また、当該業者との間で、本件売買契約の瑕疵を原因とする請求権を全て放棄するといった旨の和解契約(以下「本件和解契約」という。)を締結した後、消費者が、クレジットカード会社に対してチャージバックの申請を行い、これにより代金の一部の決裁について取消しが認められたことに対し、業者が、消費者のチャージバックの申請は不法行為に当たるとして、消費者に対してチャージバック認容相当額の返還を求めた事案である。

 本件では、本件売買契約及び本件和解契約の有効性が争点になった。

 本判決は、まず、本件売買契約の有効性について、業者の勧誘文言により、当該情報商材を購入すれば容易に利益を上げられると消費者が誤解しており、業者としてはその誤解に気付くはずであるにもかかわらず、その誤解を解くような説明をしなかったことなどを理由として、業者の勧誘文言が断定的判断の提供(消費者契約法4条1項2号)に該当するものであると認定し、本件売買契約の効力を否定した。

 また、本件和解契約の有効性について、本判決は、本件和解契約は明らかに消費者契約法に反する約定を含むものであることなどを理由としてその有効性を否定した。

 このように、本判決はいずれの争点についても業者の主張を排斥し、業者の請求を棄却した。

 

2 商品先物取引について、商品先物取引仲介業者の担当者が、手数料を取得する目的で、顧客に頻繁過当な取引を行わせたとして、当該商品先物取引仲介業者及び商品先物取引業者の不法行為責任を認めた事案(大阪地裁 令和3年3月26日判決)

 本件は、日本フィナンシャルセキュリティーズ株式会社(商品先物取引仲介業者、以下「仲介業者」という。)に勧誘され、岡藤商事株式会社(商品先物取引業者、以下「取引業者」という。)に委託して商品先物取引を行った原告が、仲介業者の担当者の違法な勧誘等により損害を被ったとして、仲介業者に対して使用者責任に基づく損害賠償請求を、取引業者に対して商品先物取引法240条の26に基づく損害賠償請求を求めた事案である。

 本判決は、原告の主張した仲介業者の担当者の行為の違法性のうち、頻繁過当取引の主張について、「1日のうちに何度も、また連日取引を繰り返すと、利益が得られる場合にも、その利幅はさほど大きなものにはならない場合が多いと考えられる一方、取引回数が増えるほど手数料の負担は重くなる。短期的な価格の変動については都度、即時、的確に判断し続けることは容易なことではなく、最終的に利益を出すことは極めて難しいといってよい。商品先物取引を開始したばかりの者がこのような取引を行おうとすれば、勢い専門的知識及び経験を有する勧誘担当者の助言に従うことにならざるを得ない」とした上で、本件では、原告が実際に行った取引も、基本的には仲介業者の担当者の助言に従った内容で行われていたと認められること、先物取引の手法や商品の値動きについて、先物取引について初心者である原告が主体的に判断することが可能であったとは考えがたいことに加え、結果的に原告が行った取引による損失の過半を委託手数料が占めているという事情を勘案し、本件の取引は、仲介業者の担当者が主導して、原告から手数料を取得する目的で、原告が単独では適切に判断しがた い頻繁過当な態様で行わせたものであるとして、仲介業者の担当者の行為につき不法行為法上の違法性を認め、仲介業者に使用者責任に基づく損害賠償義務を、取引業者に商品先物取引法240条の26に基づく損害賠償義務を認めた(過失相殺4割)。

 なお、原告は、仲介業者の担当者の行為の違法性として、不適格者勧誘、両建、説明義務違反・虚偽説明、及び断定的判断の提供についても主張しているが、これらの主張はいずれも排斥されている。