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消費者問題速報 VOL.193 (2021年4月)

1 高齢女性への布団湿気取り製品等総額120万円余りの訪問販売について,契約をめぐる業者の行為を細かく認定し,公序良俗に違反し無効であるとした判決(千葉地裁令和3年2月15日判決)

 本件は,原告(布団の訪問販売等を業とする会社)が,被告(当時88歳の女性)方を訪問して複数商品を代金合計37万8000円で販売し(第1契約),その約3か月後にも被告方を訪問して複数商品を代金合計86万4000円で販売して(第2契約),被告に対して,その残代金を請求した事件である。被告は,本件各契約について,①消費者契約法4条3項1号に基づく取消し(不退去),②特定商取引法9条1項本文に基づく契約の解除(クーリングオフ),③同法9条の2第1項2号に基づく契約の解除(過量販売),④公序良俗違反による無効を主張して争った。

 本判決は,①から③は認めなかったが,以下のとおり④の公序良俗違反を認めて本件各契約を無効と判断した。

 すなわち,まず,本件各契約の販売価格について,原告販売の商品の製造元会社は卸売価格の3倍ないし最大でも5倍で販売するように指導していたにもかかわらず,原告は,卸売価格の10倍や20倍といった価格を販売価格の下限として設定したうえ,従業員らに対し,基本的には上記販売価格の倍額以上で売るように指導し,従業員らもこの基本方針に基づいて本件各契約における販売価格を決定していたことから,その価格は購入者にとって不当に高額で,原告は本件各契約により経済的にみて過大な利益を得ることを予定したということができると指摘した。また,被告に対する勧誘態様について,夕方の時間帯に,日程調整を経ずに被告方を突然訪問し,高齢で一人暮らしをしている被告方内に入り,商品のパンフレットを交付せず,具体的な性能や金額等契約締結の判断のために必要な情報を提供せず,商品が不要であることや早く退去してほしいことを被告が伝えても直ちに被告方から退出しないで,被告が年齢や体力的に強く拒絶できない状況にあることを認識しながらそれに乗じて商品を購入するよう勧誘したと認定し,このような勧誘行為はおよそ相当とは言い難いと指摘した。そして,以上のような原告の行為から,本件各契約は,全体としてみると,社会的妥当性を欠き,公序良俗に反し,無効であると判示した。

 

2 「スルガ銀行シェアハウス問題・第2次解決のご報告及び第3次受付のご案内」

 スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団が,第1次調停申立分(消費者問題速報VOL.185(2020年5月号)参照)に続き,第2次調停申立分についても,本年3月1日,スルガ銀行と和解しました。第1次同様の集団的な債権譲渡・代物弁済スキームにより,多くの被害者オーナーが,融資資料改ざん等の多数の不正行為によって負担させられた多額のローン債務から解放されました。

 同弁護団は,現在,第3次調停申立ての依頼を受け付けているとのことですが,受付は第3次が最終となる可能性があるほか,一定の人数に達した段階で受付を締め切る可能性があるため,申込をお考えの被害者にはできる限り早急にご相談をいただきたいとのことです。なお,スルガ銀行は,同行ホームページにおいて,同様の解決スキームへの対応は,本年8月31日までに調停が申し立てられた分で終了する旨の方針を公表しています。

 スルガ銀行シェアハウス問題の詳細のほか,上記の和解の詳細,同弁護団への依頼方法については,下記の弁護団ホームページに掲載されています。

 (弁護団HP)http://suruga-smart-bengodan.com/

 ○スルガ銀行シェアハウス問題の概要

 スマートデイズ等のサブリース業者らから勧誘を受けた被害者らが,スルガ銀行から土地取得費用・建物建築費用の融資を受けてシェアハウス(「かぼちゃの馬車」等)を取得しオーナーとなったものの,サブリース業者の破綻等により予定していた賃料収入が得られず多額のローン債務の返済に窮することとなった。その後,融資の過程において,スルガ銀行行員の関与で被害者の預金通帳や収入証明書類の違法な改ざんが行われていたことや,土地購入価格や建物建築工事費が実際の仕入価格や工事費に大幅に上乗せされたものでありスルガ銀行もそれを知りながら融資していたことなど,様々な不正行為が行われていたことが発覚したというもの。