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消費者問題速報 VOL.192 (2021年3月)

1 給料ファクタリング業者((株)ZERUTA。屋号:七福神)に対する共通義務確認訴訟において,業者の支払義務が認められた判決(さいたま地裁令和3年2月26日判決)

 本件は,特定適格消費者団体(埼玉消費者被害をなくす会)が,給料ファクタリング業者Yに対し,Yが給料ファクタリングと称し,実質的には出資法の規制を超える利息を収受して無登録により貸金業を営み,消費者から金銭を受領したことが不法行為に該当すると主張して,消費者がYに支払った相当額につき,Yが支払義務を負うことの確認を求めた事案である。

 Yは口頭弁論期日に出頭せず,答弁書等の提出もしなかった。

 本判決は,訴訟要件を認めた上で,次のように判示して,Yによる金銭受領行為について不法行為が成立するとし,Yの支払義務を認めた。

 「Yはブラックでも借りられるとうたって資金の調達方法として事業を広告し,本件対象消費者も広告を受けて金銭の借入れとして利用していると考えられること,実際にも給料ファクタリングを利用して手数料を控除し給料が売買されると,本件対象消費者は期日に利息を付して弁済をするのと同じであること,ファクタリングには回収リスクがあり,ファクタリング業者が債権管理業務を負うが,給料の不払は通常想定されず,債権回収も本件対象消費者に委ねられていること…から,Yの営む給料ファクタリングは貸金業法2条1項及び出資法5条にいう『金銭の貸付け』,又は出資法7条にいう『手形の割引,売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付』に当たる」。

 「Yの営む給料ファクタリングは,…月利10%(年利120%)超の利息を定めて金銭を貸し付け,本件対象消費者から元本及び利息の返済を受けることになるから,買取対象給料債権の額面額にかかわらず…出資法5条3項の定める年109.5%を超過するものであって,公序良俗に反する暴利として違法な行為であると認められる。」

 被害者は,今後,埼玉消費者被害をなくす会が裁判所に申し立てる手続(簡易確定手続)に参加申込をして,低額な費用負担で被害回復できる可能性がある。詳細・申込方法については下記の埼玉消費者被害をなくす会HPまで。

 【http://saitama-higainakusukai.or.jp/index.html

 なお,給料ファクタリングの問題点等については消費者問題速報VOL.184~VOL.186でも掲載している。

2 (株)HISに対する旅行代金の返還請求が認められた判決(一宮簡裁令和3年1月21日判決)

 本件は,Xが旅行会社(株)HIS(Y)に対し,支払済みの海外旅行代金の返還を求めた事案である。なお,事実関係の概要は以下のとおり。

(1) Xは,令和元年11月6日,令和2年3月20日出発のグアム旅行(以下「本件旅行」という。)の参加申込をし,その旅行代金等として合計74万6380円(内訳:旅行代金70万円,空港税,燃油サーチャージ等2万6250円,保険代金2万130円)を支払った。

(2) 令和2年,新型コロナウィルス肺炎の感染拡大。

(3) 3月15日,XはYのA営業所に架電し,担当者と対応。

(4) 同月17日,Yは本件旅行についてはツアーキャンセルとすることを決定してその旨発表した。

(5) Yは,旅行代金の2割に当たる14万円,空港税,燃油サーチャージ等2万6250円,保険代金2万130円の合計18万6380円を返金したが,取消料との名目で旅行代金の8割に当たる56万円の返金を拒否した。

 上記(3)の3月15日の電話の際,Xから解除の申出があったか否かが争点となっていたが,本判決は次のとおり判示して,Xからの56万円の返還請求を認めた。

 「Xが3月15日の電話の時点で,Xにおいて条件書18条(1)①アの規定により本件旅行を解除した場合,…本件旅行代金70万円の8割に当たる56万円の取消料が発生するものと認められるところ,3月15日の電話において,Xが同時点でXから解除した場合に取消料がいくら発生するのか事前に明確な認識がないままA営業所に電話して,取消料が旅行代金の8割となることを知って納得せずこれに異議を唱えていた状況は認められるが,3月15日の電話内容に関する録音もなく,書面による解除もなされておらず,Xの主張及びその主張に沿ったXの供述を排斥してYの主張を認めるに足る証拠もないことから,3月15日の電話でXが条件書18条(1)①アによる解除をしたとは認められない。」