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消費者問題速報 VOL.190 (2021年1月)

1 ダイキン製エアコン火災について,製造物責任法3条の責任が認められた判決(東京高裁令和2年2月27日判決)

 本判決は,製造物責任法3条に基づく損害賠償請求における主張立証責任の枠組みについて,「①利用者の側の立証によって認定される諸事実に照らして欠陥及び火災との因果関係の存在が推認される場合には,②製造業者等の側でその推認(事実上の推定)を覆すに足りる立証(間接反証)をしない限り,製造業者等は損害賠償責任を免れない」とした上で,ルンバール事件に関する最高裁判決(昭和50年10月24日)に鑑み,利用者による立証は「社会通念に照らして当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることを推認するに足りる諸事実が立証されていれば足り,必ずしもその部位・態様や技術的原因等の詳細まで立証を要するものではなく,…因果関係の存在についても,必ずしも当該危険事象の発生に至った科学的機序等の詳細まで立証を要するものではない」との判断基準を示した。

 その上で,本件に関しては,①本件建物及び本件室外機周辺の焼損状況等,②本件火災の発生初期の燃焼状況及び本件建物の延焼・消火活動の経過等,③本件室外機の部品であるファン電動機の物理的・工学的な観点からみた発火可能性等の間接事実を総合考慮し,本件火災は,本件建物2階ベランダに設置されていた本件室外機が本件火災の発生源であり,同室外機の欠陥によるものだと推認される(事実上の推定)と認定した。

 さらに,上記推認を妨げる事情(本件室外機が発火源となる余地のないことが明らかであるなどの特段の事情)は認められず,また,その推認を覆す事情(他の箇所が発火源であることが明らかであるなどの特段の事情)も認められないと認定し,製造物責任法3条に基づく損害賠償責任を認め,原審の結論を維持した。

 【消費者法ニュース124号213頁】

2 新東名建設による日照権侵害を認めた判決(名古屋高裁令和2年7月30日判決)

 本判決は,新東名高速道路の建設で生じた日照権侵害をめぐる事案であり,近隣住民による賠償請求を退けた原判決を取り消し,一世帯について慰謝料および弁護士費用の請求を認容した。

 「居宅の日照は,快適で健康な生活に必要な生活利益であって,法的保護の対象となるが,他方,一切の日照阻害が許されないとするのも非現実的であるから,加害者と被害者の利益を衡量し,被害者の日照被害が社会生活上一般に受忍すべき限度を超えた場合に違法となるものと解すべきである。そして,受忍限度を超えるか否かは,①被害の程度及び②地域性を中心に,具体的事実に応じて,③加害回避可能性,④被害回避可能性,⑤建物の用途,⑥先住関係,⑦公法的規制違反の有無,⑧交渉経過等の諸般の事情を総合的に考慮して判断するのが相当である。」と判示したうえで,「春分及び秋分の日における日影時間が7時間程度に上り,年間平均日影時間も5時間に及ぶなどの状況にあるBCD宅建物における日照被害は相当に大きく,…むしろ特段の事情がない限り受忍限度を超えているものというべきである。」として,一世帯については受忍限度を超え,不法行為としての違法性を有するものと判断した。

 なお,被控訴人の中日本高速道路株式会社は,国土交通省の通達「公共施設の設置に起因する日陰により生ずる損害等に係る費用負担について」(以下「本件通達」という。)が,冬至日の日陰時間について,北海道以外の区域について4~5時間を超える場合に限り補償対象としていることを根拠に,本件では賠償責任を負わない旨の主張をしたが,本判決は,本件通達は法令ではないから裁判所の判断を拘束するものではないと判断した。

 【ウエストロー・ジャパンHP】