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消費者問題速報 VOL.186 (2020年6月)

「新型コロナウイルス消費者問題Q&A」

 日弁連・消費者問題対策委員会が,新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって生じ得る消費者問題への対応について「新型コロナウイルス消費者問題Q&A」にまとめました。今回は,特に相談が増加していると思われる①結婚式のキャンセル,②旅行・宿泊のキャンセル,③給与ファクタリング・事業者ファクタリングに関する相談対応について,上記Q&Aから一部を引用してご紹介します。

 ★Q&Aは日弁連「新型コロナウイルス対応関連情報」ページに掲載されています。

 →https://www.nichibenren.or.jp/news/year/2020/topic2.html

1 結婚式のキャンセルについて(Q7~9)

 新型コロナウイルスの影響で結婚式をキャンセルした場合,結婚式場から多額のキャンセル料を請求されることがあるが,ケースによっては,キャンセル料を支払わなくてよい場合がある。また,高額すぎるキャンセル料の規定は無効になる場合もある。

○ 事業者との契約に,消費者から解約を申し入れた場合にキャンセル料を請求する規定がある場合でも,結婚式の開催が社会通念上,履行不能と評価し得るような状況下で消費者から解約を申し出たケースでは,不可抗力による解約といえるため,上記規定(顧客都合による解約)は適用されないと考えられる。

○ 事業者との契約の中に不可効力による解除に関する規定がない場合は,民法536条1項(危険負担・債務者主義)によって判断する。

 新型コロナウイルス感染拡大の状況下では,密閉された空間における家族以外の不特定多数での会食や,都道府県をまたぐ移動をほぼ必然的に伴う結婚式の開催は,法的には,社会通念上,双方に帰責性のない履行不能にあたると考えられ,挙式披露宴の実施という債務を履行できない事業者に対し,消費者は代金の支払いを拒むことができると考えられる。

○ 不可抗力か否かを問わず消費者から解約するとキャンセル料を請求するとの規定は,消費者契約法第10条により無効と考えられる。

○ 仮に不可抗力による解約とはいえず,キャンセル料規定が適用される場合であっても,「平均的な損害の額」(基本的には実費相当額と考えられる。)を超える部分は消費者契約法9条1号により無効となる。

2 旅行のキャンセル・宿泊のキャンセルについて(Q11,12,16~18)

 ツアー旅行が中止になった場合,中止の翌日から7日以内に返金が行われる。
 万一,旅行会社が倒産してしまい返金が受けられない場合,「営業保証金」「弁済業務保証金」「ボンド保証制度」を確認する。

○ パッケージツアーのような募集型企画旅行が催行中止になった場合,標準旅行業約款では,旅行会社は催行中止の翌日から7日以内に払戻を行うものとされている。

○ 万一,旅行会社が倒産したような場合は,旅行業法が定める「営業保証金」と「弁済業務保証金」のいずれかから弁済限度額の範囲で弁済を受けることができる。いずれから弁済を受けることができるかは,ツアーの契約書やパンフレット等を確認。

 ・営業保証金 →官公庁観光産業課または各都道府県庁担当課に還付申立て

 ・弁済業務保証金 →旅行業協会に認証申出

 また,旅行業協会が設ける任意加入の「ボンド保証制度」が利用できる場合もある(契約書やパンフレット等で確認)。

 東京オリンピック・パラリンピックが延期となったため,観戦のために予約したホテルをキャンセルする場合,自己都合キャンセルにあたると考えられる。ただし,キャンセル料は,一部または全額の支払いを免れられる可能性もある。

○ オリンピック・パラリンピック期間中の宿泊の予約については,キャンセル料が,キャンセルの時期にかかわらず宿泊代金の100%とされていることも多いようであるが,消費者契約法9条1号により「平均的な損害の額」を超える部分は無効と考えられる。

○ オリンピック・パラリンピック期間中は宿泊料金が通常より割高に設定されている場合があるが,ホテル側に生じる「平均的な損害の額」を考えるにあたっては,通常の宿泊料金を基準として算定すればよいと考えられる。

○ 以上を踏まえて,ホテル側と具体的なキャンセル料について協議することが必要。

3 給与ファクタリング・事業者ファクタリングについて(Q21~27)

 給与ファクタリングは貸金業に該当する。貸金業の登録がない場合,違法なヤミ金融であり,絶対に利用してはならない。

○ 給与ファクタリングは,給料債権の譲渡という形式を取るが,金融庁は令和2年3月5日付「金融庁における一般的な法令解釈に係る書面照会手続(回答書)」において,貸金業法上の貸金業に該当するとの見解を示している。したがって,無登録での給与ファクタリングはヤミ金融である。

○ 無登録業者の給与ファクタリング(ヤミ金融)を利用した場合,返済義務はないと考えられる。また,返済してしまった場合も,返済のために支払った金額全額の返還を求められると考えられる。

○ 東京ファクタリング被害対策弁護団HP→https://www.stop-factoring.com/

 事業者ファクタリングは,高額の手数料が設定されているものについては,かえって経営を圧迫するため利用すべきでない。

○ 手数料(債権額と買取金額との差額)が極めて高額に設定されたファクタリングを利用すると,本来受け取れるはずだった売掛債権の額と比べて大幅に目減りした金銭しか受け取れず,すぐに資金不足に陥り,かえって経営を圧迫するので,利用すべきでない。

○ 新型コロナウイルスの影響への対策として,金融庁が金融機関や貸金業者に対して,借入等の債務の支払いにつき,支払猶予や支払条件の変更の要望に柔軟に応じるようにと要請している。ファクタリングの前に,まずは,借入れをしている金融機関や貸金業者に対し,売掛債権が回収できるまでの間の支払いの猶予や条件変更を求めるなどして,支出を極力抑制し,持続化給付金の受給や,新型コロナウイルス感染症特別貸付等の制度を利用するようにしていただきたい。

○ 事業者ファクタリングも,実態によっては,ヤミ金融に該当する場合がある。