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消費者問題速報 VOL.185 (2020年5月)

1 特定適格消費者団体「消費者機構日本」が東京医科大学に対して提起した共通義務確認訴訟において,入学検定料等の支払義務が認められた判決(東京地裁令和2年3月6日判決)

 本件は,特定消費者適格団体である「消費者機構日本」が東京医科大学に対し,平成29年度・平成30年度の医学部医学科の一般入学試験及びセンター試験利用入学試験において,出願者への事前の説明なく,出願者の属性(女性,浪人生及び高校学校等コード51000以上の者)を不利に扱う得点調整が行われたことについて,不法行為または債務不履行に該当すると主張して,同大学が入学検定料等の支払義務を負うことの確認を求めた事案である。

 本判決は「請求を基礎付ける事実関係は,本件得点調整がなされる一方で,これに関する事前の説明が欠如していたことのほか,対象消費者において本件試験に出願したこと又は本件試験の一次試験を合格し,二次試験を受験したことであり,請求を基礎づける事実関係が主要部分においては全ての対象消費者に共通である。また,法的根拠も本件得点調整の説明義務違反を理由とした不法行為,若しくは,入学試験を公正かつ妥当な方法で行う義務違反を理由とした不法行為又は債務不履行であって,全ての対象消費者に共通しているから,基本的な法的根拠が共通であるといえる。」として,消費者裁判手続特例法(特例法)の共通性の要件を満たすと判断した。また,多数性の要件につき,「特例法の制定趣旨に照らして,個別の訴訟によるよりも,同法の定める訴訟手続等を活用した方が審理の効率化が図られることを要求する趣旨と解され,この観点からは,『相当多数』とは,社会通念に照らし,不特定かつ多数の消費者の利益保護を活動目的とする特定適格消費者団体の訴権の行使を正当化する程度に対象消費者の範囲が広がっていることを意味するものと解すべきである。」と判示した上で,本件の事実関係の下では多数性の要件を満たすと判断した。

 さらに,本件で行われた得点調整について事前の説明がなされなかったことにつき,次のとおり判示して,不法行為に該当するとした上で,入学検定料,受験票送料,送金手数料及び出願書類郵送料,特定適格消費者団体に支払うべき報酬及び費用に相当する額について,支払義務を認めた。

 「本件対象消費者を性別,年齢,社会的身分といった属性により一律に不利益に扱うものであるところ,被告は,本件得点調整が合理的な根拠に基づく差別的取扱いであることについて具体的な主張立証をしていない。本件得点調整は,憲法14条1項や大学設置基準2の2の趣旨等に反するものであって,本件対象消費者との関係で違法である疑いが極めて強いものというべきである。」「出願者は,試験が公正かつ妥当な方法で行われることの期待,すなわち,事前に学生募集要項やアドミッション・ポリシー等で説明されていない以上は,性別,年齢,社会的身分等によって一律に不利益に扱われることはないとの期待を有しており,同期待は単なる事実上の期待にとどまらず,…法的保護に値するものと評価できる。」「以上によれば,被告が学生募集要項やアドミッション・ポリシー等において,本件対象消費者に係る属性の考慮につき事前に説明していなかったにもかかわらず,密かに本件得点調整を行っていたことについては,本件対象消費者との関係では,不法行為上違法との評価を免れない。」

 本判決が確定したことによって,今後は簡易確定手続へ移行します。簡易確定手続開始決定が出された後は,消費者機構日本のHP上にて,対象消費者の方々へ向けて手続参加方法について公告されるそうです。

 【消費者機構日本HP http://www.coj.gr.jp/zesei/topic_200306_01.html

2 レオパレスと賃貸住宅オーナーとの間の賃料減額合意について,錯誤無効を認めた判決(岐阜地裁令和2年2月28日判決)

 本件は,Xの祖父がレオパレスとの間で締結したサブリース契約(契約期間30年。当初10年間は賃料月額115万4700円固定,その後は協議によって改定するとの内容。)の契約期間中に,賃料減額合意がなされたものの,相続によって賃貸人の地位を承継したXが本件賃料減額合意の錯誤無効等を主張した事案である。

 本判決は,レオパレスの担当者Aが行った説明について,「このまま本件賃貸借契約の締結から10年が経過すると,本件賃貸借契約書3条4項に従えば,平成25年9月分以降(注:11年目以降)の賃料額は,…月額72万8700円(全体で月額42万6000円の減額)となること,10年が経過する前に賃料の減額に応じた場合には,…減額の幅を抑えることができることを説明した。」等と認定した上で,「Xは,賃料の減額に応じなければ,…(注:全体で月額42万6000円の減額のような)大幅な減額になると信じ,その減額を避けるためには,より減額幅の少ないAの提案に応じるしかないと考え,Aに対し,上記減額案に応じる旨返答した。」と本件賃料減額合意に至った経過を認定した。

 その上で,Xには,本件賃貸借契約締結から10年が経過した後の賃料額およびその定め方(減額合意に応じなかった場合の本件賃貸借契約の定める賃料額)につき,誤解があった等として,錯誤無効を認めたものである。

 

3 スルガ銀行シェアハウス問題,解決報告及び新規の弁護団依頼者受付のご案内

 スルガ銀行のシェアハウス問題について,スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団が,本年3月25日,スルガ銀行と和解しました。

 具体的には,被害者オーナーとスルガ銀行に加え,シェアハウスの譲渡先である第三者を加えた和解で,シェアハウス関連融資について,①スルガ銀行が被害者オーナーに対し一定額の解決金支払債務を負うことを確認し,同債務とローン債権を対当額で相殺したうえで,②スルガ銀行が,相殺後の残ローン債権を第三者に譲渡し,③被害者オーナーが当該第三者へ,残ローン債権の支払いに代えてシェアハウス物件を代物弁済として給付する,との合意をし,同時に履行しました。

 これにより多くの被害者オーナーが,融資資料改ざん等の多数の不正行為によって負担させられた多額のローン債務から解放されました。同弁護団は,同様の解決スキームによって,より多くの被害者オーナーを救済するため,弁護団への第2次の依頼を受け付けているとのことです。

 上記の和解の詳細と,同弁護団への依頼方法については,下記の弁護団ホームページに掲載されています。なお,同弁護団の愛知の担当者(弁護士水谷大太郎,弁護士今泉麻衣子,弁護士加藤博子)でも相談対応可とのことです。

 (弁護団HP)http://suruga-smart-bengodan.com/

4 「給与ファクタリング」被害が急増しています。ご注意ください!

 新型コロナウイルス禍による困窮で"給与ファクタリング"という新たな闇金被害が拡大しています。

 東京では,東京ファクタリング被害対策弁護団が立ち上がっていますので,最新情報をチェックしてください。(弁護団HP)https://www.stop-factoring.com/

 また,近く,「給与ファクタリング+事業者ファクタリング」による被害対策のための全国的な弁護士の連絡会が作られる予定です。