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消費者問題速報 VOL.184 (2020年4月)

1 新型コロナウイルスの影響による生活苦で,高額な手数料を徴収される「給与ファクタリング」被害が急増しています。ご注意ください!

 「給与ファクタリング」とは,給与所得者等から,賃金債権(の一部)の譲渡を受けたという形式で,資金融通サービスを行うものですが,利用者は手数料として利息制限法(年率15~20%)をはるかに超えた手数料を徴収されています。

 この「給与ファクタリング」については,金融庁も,貸金業に該当するとの見解を示した上で,貸金業登録を受けずにこうした業務を営む業者は違法なヤミ金融業者であるとの注意喚起をしています。

 https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/kinyu_chuui2.html

 また,東京地方裁判所でも,令和2年3月24日付で,給与ファクタリングについて「貸付け」に該当するとした判決が出ています。

 上記判決は,労働基準法24条1項の趣旨から「労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても,その支払についてはなお同条が適用され,使用者は直接労働者に対し賃金を支払わねばならず,したがって,労働者の賃金債権の譲受人は自ら使用者に対してその支払を求めることは許されない。…労働者である顧客から給与債権を買い取って金銭を交付した業者は,常に当該労働者を通じて譲渡に係る債権の回収を図るほかないことになる。このような給与ファクタリングを業として行う場合においては,業者から当該労働者に対する債権譲渡代金の交付だけでなく,当該労働者からの賃金の回収が一体となって資金移転の仕組みが構築されているというべきである。」等として,給与ファクタリングにつき,貸金業法・出資法にいう「貸付け」に該当すると判断しました。

 給与ファクタリング被害に遭った場合には愛知県弁護士会へご相談ください。4月27日より無料電話相談を行っています。

 https://www.aiben.jp/news/news/2020/04/post-125.html

2 過去に原野商法の被害にあった者に対し,その不動産の買取り(下取り)との抱き合わせで,リゾート会員権を販売した事案について,使用者責任および代表取締役の不法行為責任を認めた判決(京都地裁令和2年2月20日判決)

 本件の原告は,原野商法業者である株式会社ZKR(変更前の商号は株式会社全管連。平成25年8月16日付で民事再生手続開始決定。)から,平成22年から平成24年にかけて不動産を購入した者であり,本件の被告は,各種リゾート会員権の販売等を目的とする株式会社(ZKRのグループ会社)(Y1)とその代表取締役(Y2)である。なお,Y2はZKRで営業担当をしていた時期もある。

 本判決は,Y1の従業員Aの勧誘について,「真実は5年経過しなければ本件会員権を転売することはできず,また,Y1がその仲介をすることはないにもかかわらず,1年後には本件会員権を転売することが可能であり,Y1の仲介等により80万円ないし90万円程度で転売できる旨の虚偽の事実を述べてXを誤信させ,これによりXは,Y1との間で本件会員権契約を締結してその代金を支払ったものと認められるから,Aによる上記勧誘は,Xに対する不法行為を構成する。」と判示し,Y1の使用者責任を認めた。

 また,Y2の責任について,「Y2は,ZKRにも勤務していたことがあり,…ZKRから価値の乏しい別荘地不動産を購入した顧客らがその処分に苦慮していることを知悉しており,Y1の事業として,そのような顧客らに対して当該不動産の買取り(下取り)との抱き合わせによるリゾート会員権の販売を勧誘していたのであるから,販売担当者の中には,転売処分の困難な不動産に対する優位性を強調しようとして,あたかもリゾート会員権であれば転売が容易であるかのような虚偽の説明をして契約を取り付けようとする者が出てくるおそれがあること,顧客の側でも,価値が乏しく管理費用の嵩む不動産をなんとか処分したいと切望するあまり,販売担当者の虚偽説明を信用して契約締結に至ってしまう可能性が高いことについて,認識していたか,容易にこれを認識することができたというべきである。」等と判示した上で,Y2につき,少なくとも過失による不法行為責任を負うべきであると判断した。

 なお,リゾート会員権について金10万円の価値を認め,損益相殺がなされている。 

 

3 豊商事株式会社の従業員による一連の勧誘行為について,不法行為責任を認めた高裁判決(大阪高裁令和2年1月31日判決。原審・京都地裁令和元年8月27日判決(VOL.180・判決1))

 控訴審では,詳細な事実認定をした上で,次のように判示し,従業員らの一連の勧誘行為について不法行為を認めた。

 「被控訴人に本件差金決済取引をさせる場合には,本件差金決済取引の仕組みを説明してこれを理解させる以前に,スマートフォンやパソコンをある程度自由に操作できるようになるのを待ち,かつ,金融指標を適宜調べるよう意識付けをする必要があり,これらの点の問題が解決しない状態の被控訴人に対し,本件差金決済取引を行うよう仕向けることは極めて不適切である。

 また,被控訴人は,本件差金決済取引の特性に適合する投資意向も持っておらず,取引のリスクを甘受させるような財産状態及び生活状況にもなかったのであり,このような実情にある被控訴人をして,多額の資金を本件差金決済取引に投じるよう勧誘することも極めて不適切である。

 そうだとすれば,本件差金決済取引を開始するよう仕向け,5500万円もの資金を拠出させ,さらにはその大半を委託手数料で費消させてしまうような取引をさせる行為は,被控訴人の意向と実情に反して,明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するものであり,適合性原則から著しく逸脱している。」

 また,過失相殺については,原審の3割から1割に変更された。

 【原審:先物取引裁判例集82号187頁,控訴審:同号265頁】