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消費者問題速報 VOL.182 (2020年1月)

1 株式会社日本ユニコム従業員らによる商品先物取引の勧誘・受託行為について,適合性原則違反,誠実公正義務違反,指導・助言義務違反が認められるとして,共同不法行為責任を認めた高裁判決(名古屋高裁令和元年11月22日判決。原審・名古屋地裁平成31年4月12日判決(VOL.176・判決1))

 控訴審では,一審判決を大幅に加筆修正し,違法性について詳細な判示を行った上,過失割合を7割から6割に変更した。

 【適合性原則違反について】

 1審原告の属性(本件取引開始時39歳,東京都内の有名私立大学卒業,同族会社の専務取締役,給与収入は年額600万円,保有する金融資産は約2000万円),1審原告が数種類の金融商品取引を継続的に行っていたこと,投資可能資金額を500万円と申告し,申告した翌日には105万円を1審被告従業員に交付していたこと等から,本件取引開始時の適合性原則違反は認められないとした。

 他方で,①本件取引開始後,1審原告の投資可能資金額が合計8回にもわたって増額され,当初の500万円から4000万円まで増額されたこと,②1審原告は投資可能資金額増額についての各申出書記載の金融資産に係る預金口座又は取引口座を実際に保有するものの,それらに記載した金額に相当する金融資産を有しておらず,各申出書の記載内容が虚偽であったこと,③投資可能資金額増額の経過は,本件取引開始から約3か月半が経過した1回目に当初の500万円から1000万円に倍増され,約8か月半が経過した3回目には,1審原告が保有すると申告した金融資産2000万円を超える2200万円まで増額されており,商品先物取引は未経験であった1審原告がその仕組みや相場の変動に習熟するために必要な期間が経過する前から,矢継ぎ早に投資可能資金額の増額が繰り返されたというべきであること,④上記増額に係る各申出書の作成経過が,1審原告が1審被告従業員に対して実際に金融資産を保有する金融機関等を説明し,1回目及び3回目は1審被告従業員の助言に沿った内訳の金額を,2回目は1審原告が提示して1審被告従業員が了承した内訳の金額を,それぞれ記載したものであって,4回目以降の各申出書についても,1審被告従業員らと協議しその助言を得ながら作成したものと推認するのが自然かつ合理的であること,⑤1審被告従業員らは,各申出書の記載内容が虚偽であることを認識していたものと認めることができる,等とした上で,1審原告は「本件取引のうち投資可能資金額増額についての1回目の申出書を作成・交付した同年5月1日以降の部分に係る商品先物取引の適格性を有しない」と判断して,適合性原則違反を認めた。

 【誠実公正義務違反について】

 本件取引における特定売買比率及び手数料化率がいずれも高率であること,本件取引開始直後から特定売買の手法を用いた多数回の取引が繰り返され,早期に取引銘柄も拡大されたこと,商品先物取引は未経験であった1審原告がその仕組みや相場の変動に習熟するために必要な期間が経過する前に,1審被告従業員らも関与して虚偽の金融資産を申告させて投資可能資金額を矢継ぎ早に増額させ,適合性原則に反して多種多様な銘柄についての頻回な取引が継続されたこと等を考慮すると,本件取引中には,1審被告従業員らが,1審原告の利益を犠牲にして多額の手数料収入を得る目的で勧誘した合理的理由や必要性のない取引が含まれているものと推認するのが合理的であると判断して,誠実公正義務違反を認めた。

 【指導・助言義務違反について】

 1審被告従業員らが,商品先物取引の未経験者であった1審原告に対し,取引回数や取引金額を抑制するように指導・助言したことはうかがわれず,かえって,虚偽の金融資産の申告に基づく投資可能資金額の増額に関与し,適合性原則に反して,多種多様な銘柄についての頻回な取引を継続させたものであるから,1審被告従業員らが1審原告に対して信義則上負担する指導・助言義務に反する違法があることは明らかであるとして,指導・助言義務違反を認めた。

 また,1審被告従業員らは,指導・助言義務を負う法的根拠はない等と主張したが,これに対し,「商品先物取引の未経験であった1審原告が,1審被告従業員らが有する知識・経験・情報とその分析力を信頼し,その助言を踏まえて本件取引に係る意思決定をしていたことは容易に推認することができるから,そうした信頼関係にある1審原告と1審被告従業員らとの間では,1審被告従業員らは,1審原告に対し,信義則上,積極的な指導・助言義務を負うというべきである」と判断した。

 なお,過失相殺割合については,取引期間が約7年半にも及ぶことを重視して7割とした原審を変更し,6割に減縮した。

2 全国一斉投資被害110番のお知らせ

 国内先物取引は,平成23年1月,改正商品先物取引法が全面施行となり,不招請勧誘禁止が導入されて以降,相談件数は減少しています。しかし,現在も,一般市民への強引な勧誘がなされている事案は存在し,なお被害の根絶には至っておらず,継続的な被害実態の把握が必要です。

 その他にも,株や投資信託等の証券取引被害,FXや仮想通貨取引の被害や,特殊詐欺,CO2排出権取引,金地金売買等々の詐欺的金融商品被害の相談,原野商法の二次被害や,競馬やパチンコの必勝法詐欺の相談,預託商法の相談も多数存在しているところです。

 近時は,スマートフォンやSNS利用の普及,老後2000万円問題,副業の流行を背景等として,情報商材による詐欺被害も急増しています。

 そこで,下記のとおり,全国一斉投資被害110番(無料電話相談)を実施することになりました。

                          記

日  時:令和2年2月18日(火)午前10時~午後4時

電話番号:052-223-2355

対  象:商品先物取引,証券取引,CFD取引,FX取引,未公開株・社債・ファンド詐欺,プロ向けファンド,CO2排出権取引,金地金売買等の詐欺的金融商品被害,原野商法二次被害,仮想通貨・ICO被害,情報商材等に関する被害相談