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消費者問題速報 VOL.181 (2019年11月)

1 株式会社西山ファームについて,破産開始決定が出されました。

 岡山地裁は,令和元年10月10日,株式会社西山ファームについて破産手続きの開始を決定した。破産管財人には妻鹿安希子弁護士が選任され,被害者を含む債権者からの問い合わせを受ける専用ダイヤル(086-803-2188)が設置されている。

 本件の第1回債権者集会は,令和2年2月12日午後2時に指定されている。

2 投資用マンション購入の勧誘において,リスクを具体的に説明しなかったことが説明義務違反にあたるとして不法行為責任を認めた判決(東京高裁令和元年9月26日判決)

 本件の被害者Xは投資経験のない高校教師である。投資マンション業者Yの勧誘を受け,平成23年6月に1室,同年8月にもう1室の投資マンションを購入したが,購入後の平成26年3月,内1室が空室となって賃料収入が得られなくなったことから,同月中に弁護士に相談。平成29年7月に1室を第三者に売却した後,同年9月1日に本訴を提起した。なお,被害者は,もう1室も同年9月中に売却した。いずれも購入額を下回った金額で転売したものであり,購入代金等から転売代金等を差し引いた差額を損害として,Yの勧誘行為につき,不利益事実の不告知,詐欺的な勧誘,断定的判断の提供,説明義務違反があったとして不法行為に基づく損害賠償請求をした事案である。

 原審(東京地判平成31年4月17日)は,Xには不動産取引や投資経験のないこと,自己資金も乏しかったこと(投資に充てることが出来る自己資金は約150万円)を指摘した上で,このような属性を有するXに対して多額のローンを負担させてまでマンション投資を勧誘する際には,マンション投資の空室リスク,家賃滞納リスク,価格下落リスク,金利上昇リスク等を分かりやすく説明すべき注意義務を負っているにもかかわらず,業者はこれを怠ったとして,説明義務違反の違法(使用者責任)を認めた。また,業者側からの消滅時効の抗弁については,Xが損害の発生を現実に認識したのは,突然の空室が生じたことにより約1箇月分の家賃収入が得られなかったことによって危険性が顕在化したときであるとして,これを排斥した。Y控訴。

 本判決は,Yの控訴を棄却した上で,Xの附帯控訴を一部認めて賠償額を若干上乗せした。

 また,本判決は,Yが,不動産売買に慣れていない者に対して特別に用意した「告知書兼確認書(不動産価格が変動すること,賃料収入は保証されないこと,計算例の値も保証されないことなどが抽象的に記載された書面)」を示して説明したから説明義務違反はないと主張したのに対して,Yが不適切な説明を具体的計算式等に基づいて詳細に行ってXの投資判断を誤らせたことは明らかであって,一般的・抽象的な説明をしただけの上記書面は,説明義務違反を問われないために体裁を整えただけの書面に過ぎないとして,これを排斥した。説明義務違反の認定において他の事案でも参考になる判示である

 なお,Xは高校教師であり相応の社会経験を有していること,自己資金が少ないことを自覚していたこと,告知書兼確認書の記載等を通じて投資用マンション購入に伴う危険性を認識する契機は十分にあったこと等を理由に4割の過失相殺あり。

 本判決の着目すべき点は,不動産購入や投資の経験に乏しい消費者に対してマンションを販売する際には諸リスクを説明する義務を負うとしたこと,消費者が諸リスクを確認した旨書面に署名押印をしたとしても当該義務を果たした

 とは言えないことを判示した点である。     

3 出会い系サイトの利用料金収納業務の代行会社の共同不法行為責任を認めた判決(福岡地裁平成31年2月22日判決)

 本件は,出会い系サイト(以下「本サイト」という)を利用した者(X)が,本サイトの料金収納の代行業務をしているY1社~Y3社(Y社ら)に対しては共同不法行為に基づき,Y社らの各代表取締役(Y代表ら)に対しては会社法429条に基づき,損害賠償を求めた事案である。

 本事案においては,本サイト運営者とY社らの関連共同性及びY社ら相互の関連共同性の有無が争点となった。

 本判決は,本サイト運営者がXから金員を詐取したことを認定したうえで,本サイト運営者とY社らに関連共同性があるかについて,①本サイトの運営者は,Xに対して費用の支払いを求める際,その都度,本サイトの会員番号を明示してY社らの口座に金員を振り込むように指示していたこと,②Xは,本件取引の際,前記指示に従い,各金員をY社らの口座に振り込んだこと,③Y社らは,各口座に振込を受けた金員について,1件を除き,即日同額の金員を引き出していること,④本サイト運営者の不法行為においてY社らの振込先口座の存在が不可欠であること,⑤Y社らのうち2社は,本サイトの運営者の存否を確認した形跡もないこと,などの事実を認定した上で,本サイト運営者とY社らは,Y社らへの各振込に対応する部分において関連共同性が認められ,共同不法行為が成立するとした。

 そして,Y社らが,自社への各振込以外の本件取引について,他のY社らとの間で関連共同性を有するのかについて,本判決は,本サイトの運営者及びY社らは,入金先を短期間で変更させることにより違法行為の発覚を遅らせ,口座凍結や仮差押えのリスクを分散させていたものと推認され,入金先を短期間で変更させること自体によって本サイト運営者及びY社らは相互にメリットを享受していた等と認定した上で,法律上は入金ごとに不法行為が成立し,Y社ら相互の連絡を直接裏付ける証拠が見当たらないことを踏まえても,本件では,自社への各振込以外の本件取引について,本サイト運営者や他のY社らとの間で関連共同性を有するとして,本件取引全体について共同不法行為責任を認めた。

 また,以上のような事実認定をもとに,Y代表らに会社法429条の損害賠償責任があることも認めた。 【判例時報2418号104頁】