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消費者問題速報 VOL.180 (2019年10月)

1 被告(豊商事)の担当者による勧誘行為について,適合性原則違反は否定したものの,担当者の説明義務違反及び過大取引を理由に被告の使用者責任を認める一方で,損害額については過失相殺を適用し,原告の請求の一部を認容した事案(京都地裁令和元年8月27日判決)

 本件の原告は,40代の会社役員(家族経営の有限会社)の女性(高卒)である。

 本判決は,適合性原則について,「顧客の適合性を判断するに当たっては,当該金融商品の取引類型における一般的抽象的なリスクのみを考慮するのではなく,当該金融商品に含まれるリスクの大きさやその仕組みの難解さといった具体的な商品特性を踏まえて,これとの相関関係において,顧客の投資経験,金融商品取引の知識,投資意向,財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要がある」ことを前提として,本件では,原告の行った証拠金取引(以下「本件取引」という。)は損失の発生するリスクが極めて高いものであり,その仕組みも単純とはいえないものであるところ,原告には投資経験がなく,金融商品取引の知識も全くなかったものの,原告の認知能力や判断能力に問題はなく,また,原告が預貯金を何らかの形で投資に回したいとの意向を有していたことからすれば,原告が十分な説明を受けた上で相当額の範囲で本件取引行うのであれば原告を本件取引に勧誘した行為が直ちに違法とはいえないと判断した。

 他方で,本判決は,原告を本件取引に勧誘するに際し,被告担当者が原告に本件取引に関するパンフレットや取引ガイドを交付しているものの,投資経験がなく,金融商品に関する知識もない原告がこれらを通読してもその内容を理解できるとは解されず,上記パンフレットや取引ガイドに記載された以上に詳細かつ具体的に本件取引の仕組みやリスクについて被告担当者が説明した事実は認められないとして,被告担当者の説明義務違反を認めるとともに,本件取引の客観的な状況に加え,原告が被告担当者の指示に従って本件取引の個別売買を行っており,本件取引において特定売買を行ったことについて合理的理由があったという事情が見当たらないとして,本件取引は,専ら被告の手数料稼ぎを目的とするものであり,原告の知識や経験,資力等に照らして過大かつ不相当なものとして不法行為を構成すると判断し,被告に使用者責任を認めた。

 もっとも,本判決は,本件取引のような金融商品取引がリスクの高いものであることは広く知られているところ,原告は被告担当者の説明を理解しないまま本件取引を開始し,本件取引開始後も本件取引の仕組みを理解しようしたり,取引の状況を把握したりしないばかりか,被告からの取引状況を知らせる書面やメールの内容を確認せずに処分または散逸させたという原告の態度からすれば,本件取引により損害が拡大したことについて過失相殺(3割)は免れないと判断した。

 

2 過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引における消滅時効の起算点について,貸金業者による貸付禁止措置の時点から消滅時効期間が進行するとの主張を斥け,特段の事情のない限り,取引が終了した時点から進行するとした事案(宮崎簡裁平成31年3月13日判決)

 本件は,原告が,被告(CFJ)との間で,平成8年11月1日,利息制限法所定の利率を超える約定が付された金銭消費貸借取引に係る契約(以下「基本契約」という。)を締結し,平成20年11月14日までの間取引を行っていたところ,平成30年10月3日に過払金返還請求の訴訟を提起したものである。なお,基本契約には過払金充当合意が含まれていた。

 本件において,被告は,消滅時効の起算点について,基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなり,借主がそのことを認識し又は認識し得た場合には,過払金充当合意を過払金返還請求権行使の法律上の障害として理解すべき根拠が失われるところ,本件では,平成14年10月30日に被告が原告に対して恒久的な貸付禁止措置をとっており,同措置以降,原告は返済のみを繰り返し,追加の借入れは全くしていないことから,同措置がとられた時点で原告は新たな借入金債務の発生が見込まれないことを認識又は認識し得たとして,同措置の時点(平成14年10月30日)から消滅時効期間が進行すると主張した。

 本判決は,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引継続中は過払金充当合意が過払金返還請求権行使の法律上の障害となるとしつつ,「借主は基本契約に基づく借入れを継続する義務を負わず,一方的に基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を終了させ,その時点において存在する過払金の返還請求をすることができるが,それをもって過払金発生時からその返還請求権の消滅時効期間が進行すると解することは,借主に対し,過払金が発生すればその返還請求権の消滅時効期間経過前に貸主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることを求めるに等しく,過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反する」ことを根拠として,基本契約が存続しているにもかかわらず借主が貸主からの新たな借入れができないと客観的に認識できたと認められるなどの特段の事情のない限り,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点から消滅時効期間が進行するとし,本件における貸付禁止措置は特段の事情には該当しないとして被告の上記主張を斥け,原告の請求を認容した。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

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