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消費者問題速報 VOL.179 (2019年9月)

1 株式会社コムテックスの従業員の勧誘・受託行為には違法性があるとして不法行為責任を認めるとともに,同社の内部統制システムに不備があったとして代表取締役らの会社法429条1項の責任を認めた原審の判断が維持された高裁判決(名古屋高裁令和元年8月22日判決・(原審・名古屋地裁平成30年11月8日(VOL.172・2)))

 控訴審では,内部統制システム整備・運営義務違反についての代表取締役らに対する会社法429条1項の責任の有無が主要な争点となり,双方から主張立証が行われた。

 判決では,コムテックスが行政処分を受けて体制整備等の改善措置を実施し,苦情,紛争等の数が減少傾向にあったとしても,行政処分を受ける前と同様の法令違反行為が繰り返されており,行政処分の理由となった法令違反行為の再発を防止するには不十分であったと言わざるを得ないとし,役員らに重大な義務違反が認められることに影響を与えるものではないとした。その上で,役員らは,法令等遵守及び内部管理体制を確立・整備し,適正な勧誘・受託の履行を確保する義務に違反しており,また,勧誘・受託のチェック体制の整備は,コムテックスにおいて容易に行うことが可能であったと推認されることからすると,役員らには重過失が認められるとした。そして,従業員の勧誘・受託行為の違法性(新規委託者保護義務違反,過当取引,指導・助言義務違反,信任・誠実公正義務違反)についても,原審の判断が維持され,従業員につき共同不法行為責任,コムテックスにつき使用者責任が認められた。

 なお,過失相殺についても,原審の判断が維持された(4割)。

 

2 原野商法被害事案において,名義貸しを行った被告の宅地建物取引士に,直接取引にかかわっていなくとも詐欺行為の幇助を認め,共同不法行為に基づいた責任を認めた事件(東京地裁令和元年7月16日判決)

 本件は,土地を購入する意思のない原告に対し,A(不動産業者)が虚偽の説明を行い,原告から38万円を詐取したという事案であるところ,原告がAの専任の宅地建物取引士である被告に対し,共同不法行為に基づく損害賠償を求めたものである。

 本判決は,被告の名義貸しを認めた上で,「宅建業法が,15条において宅地建物取引士は宅地建物取引業の業務に従事するときは,宅地又は建物の取引の専門家として,購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう,公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行わなければならないと規定し,15条の2において,宅地建物取引士は,宅地建物取引士の信用又は品位を害するような行為をしてはならないと規定していること,68条及び同条の2が,宅地建物取引士による名義貸しについて都道府県知事が必要な指示や登録の消除につき規定していることからすると,宅地建物取引士がその資格を名義貸しをして,購入者等の利益に反する行為をすることが許されないことは明らかである。」と判示し,被告がAの専任の宅地建物取引士に就任することを許諾し,名義貸しを行ったことは,Aが宅建業の免許付与を受け違法な営業活動を継続させ,原告の利益に反する詐欺行為を容易にしたもので,Aの原告に対する詐欺行為を幇助したものと認められるとして,共同不法行為に基づいた責任を肯定した。

 

3 「預託商法」に関して,内閣府消費者委員会が新法の制定を求める意見書(建議)を出し,預託商法の被害に関する弁護団が声明を発表しました。

 高配当をうたった「預託商法」「オーナー商法」と呼ばれる悪質な消費者事件が相次いでいます。

 預託商法は,物や権利を消費者に販売した上で「運用して利益を出す」として事業者が預かるため,運用実態がなくても,事業者が破綻するまで被害が表面化しにくいという問題点があります。また,預託法や特定商取引法といった現行法では,必ずしも十分に取り締まることができないため,新たな法整備が必要とされていました。

 そこで,内閣府の消費者委員会は,8月30日に,一定の販売預託取引を禁じた立法などを求める意見書(建議)を出しました。

 また,同建議が出されたのに合わせて,同日,預託商法の被害に関する弁護団であるジャパンライフ被害弁護団,安愚楽牧場被害対策弁護団及びケフィアグループ被害対策弁護団が,共同記者会見を開き,「ただちに実効性ある法整備をすべきだ」という声明を発表しました。

 http://kefir-higaibengo.com/よりケフィアグループ被害対策弁護団の声明を閲覧できます。