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消費者問題速報 VOL.178 (2019年8月)

1 複合機のリース契約に関して,契約書になされている押印につき,申込者(被告)の意思に基づくものと認めず,リース契約の成立を否定した事例(東京地裁平成31年2月8日判決)

 原告は株式会社クレディセゾン,補助参加人は電気通信機器の販売,設置工事および保守管理等を目的とする株式会社である。他方,被告は,昭和9年生まれの女性で,幼児園の事業を行っていた者である。

 本件では,被告を借主(申込者),原告を貸主,補助参加人を売主とし,申込日:平成27年4月1日,契約日:平成27年4月2日,リース期間72か月,月額リース料3万2000円との内容で複合機のリース契約が締結されているところ(以下当該契約を「4月2日契約」という),4月2日契約については,被告自身が契約書に署名し,同人の銀行印(以下「本件銀行印」という)を押印したことには争いがない。

 その後,4月2日契約については,遅くとも5月26日までに解約処理がなされたが,被告を借主(申込者),原告を貸主,補助参加人を売主とし,申込日:平成27年4月1日,契約日:平成27年5月14日,リース期間72か月,月額リース料4万2500円とする複合機のリース契約書(以下「本件契約書」という)が別途存在したことから,原告が被告に対し,リース契約に基づき残リース料を請求した事案である。なお,本件契約書には,被告名義の署名および被告名の印鑑による押印(以下「本件押印」という)がなされており,本件契約書と複写式になっている預金口座振替依頼書等には本件銀行印による押印がなされていた。

 本判決は,本件押印が被告の実印によるものではないことを認定した上で,「本件口座振替依頼書に使用された本件銀行印は,本件幼児園の事務室の机の上に置かれていた印鑑がまとめられたケースに入れられていて,被告以外のものであっても銀行印を取り出して使用することは容易であったといえる」等と判示して,本件銀行印による押印があるとしても,同押印が被告の意思によってなされたものとは認めがたいと判断し,リース契約の成立そのものを否定した。

 

2 デート商法詐欺において,当該詐欺行為に使用された携帯電話のレンタル業者およびその代表者につき不法行為責任を認めた事例(仙台高裁平成30年11月22日判決)

 本件は,被害者(原告,控訴人)が「女性とのデート等の希望に対応することで金銭が得られる」「そのためには供託金が必要である」等と虚偽の話を詐欺業者から申し向けられ,約580万円を騙し取られたところ,上記の勧誘・連絡に際してはレンタル携帯電話が用いられていたことから,レンタル業者およびその代表者(被告,被控訴人)に対して不法行為責任の追及を行った事案である。なお,原判決では,被告らの責任が認められなかったため,被害者が控訴を申し立てた。

 本判決は,代表者が,法規制により貸与時本人確認等の悪用防止策が講じられていることを十分に認識しながら,被控訴人会社を設立しレンタル業を始めたこと,レンタル時に,被控訴人会社がレンタルした携帯電話が実際に犯罪に悪用されていることを警察からの指摘を受けて知りながら,被控訴人会社の事務所ではなく公園で利用申込者と会い,支払履歴等の物的証拠が残りにくい現金払い,かつ,領収証は交付しないこととした上,具体的な使用目的も確認せず,約4か月の間に合計10台もの携帯電話を貸与したこと等を認定した上で,提供した携帯電話が詐欺等の犯罪行為に悪用される可能性が極めて高いことを具体的に認識し,少なくとも未必的に認容した上で利用申込者に貸与したと判断し,被控訴人らの故意による不法行為責任を肯定した。過失相殺なし。

 

3 アコムの無担保リボ貸付から,不動産担保リボ貸付への同日切替え事案につき,一連計算を認めた事例(大阪地裁平成30年9月10日判決)

 アコムの無担保貸付から不動産担保貸付に同日に切り替えた事案につき,不動産担保借入金で,無担保借入金の約定残債務を完済する処理を行い,差額のみを借主に交付し,いずれの取引もリボルビング方式の契約であったことから,無担保貸付取引と不動産担保貸付取引との一連計算を認めた判決である。不動産担保切替えの論点をきれいに整理した判決と評価できる。