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消費者問題速報 VOL.175 (2019年4月)

1 商品先物取引事案において,指導助言義務違反を理由として損害賠償責任を認めた判決(東京高裁平成31年3月28日判決)

 本判決は,東京地裁平成30年9月28日判決(以下「第1審」という)の控訴審判決である。

 第1審原告が第1審被告ら(受託業者(第一商品)および従業員)に対し,①適合性原則違反②断定的判断の提供③説明義務違反④新規委託者保護義務違反⑤指導助言義務違反⑥一任売買禁止義務違反があったため損害を被ったと主張し,損害賠償責任を追及した事案について,第1審は⑤の指導助言義務違反のみ認めた。かかる第1審判決に対し,第1審原告,第1審被告ら共に控訴した。控訴審は第1審と同じく,①~④⑥の義務違反は認めなかったものの,⑤の義務違反につき,「商品先物取引業者は,顧客の相場予想が当たっても,当たらなくても,取引ごとに手数料収入を得ることができ・・・先物取引の射幸性及び危険性に加え,先物取引業者と顧客との間にそのような不均衡が存在する」こと,「被告らは商品相場の値動きの予想に精通し,かつ,第1審原告の財産状況や取引経験,本件先物取引の状況を全体として客観的に俯瞰できる立場にある」ことを根拠に,第1審被告は「取引開始後の個別の場面においても両建のリスク等を第1審原告に説明すべきであり,その結果第1審原告が両建を選択した後も,必要に応じて損切りを指導したり早期の手仕舞いを助言したりする等の指導助言義務を信義則上負う」と⑤の義務内容を具体的に判示した。その上で,第1審被告従業員には,具体的に,いつ,どのような相場予想に基づいて,売玉,買玉いずれの決済をすべきか特定できないとしても,指導助言義務違反の過失があると判示した。なお,3割の過失相殺あり。

 

2 建物の外壁等の塗装工事に係る請負契約(以下「本件契約」という)に関し,特定商取引法(以下「法」という)第5条1項で交付が義務づけられている法定書面を請負人から交付されなかったことから,契約から3か月以上経過した後でも消費者のクーリングオフを認めた判決(大阪高裁平成31年3月14日判決)

 本判決は,大阪地裁平成30年9月27日判決(以下「第1審」という)の控訴審判決である(消費者問題速報No173の3掲載)。

 控訴審判決において,塗装会社は,①ペンキ塗装工事は,外壁塗装工事に付随する細目的な工事であって,契約内容の特定に不可欠なものではなく,また,着工前に具体的な塗装箇所を特定することも困難であるから,「一式」との記載でも契約内容の特定として許される,②本件契約書と共に注文者に交付した見積書により,法4条1号の「商品若しくは権利又は役務の種類」の記載が補完されており(本契約書と見積書の一体性の主張),法5条1項の法定書面の交付はあったと主張した。

 しかし,控訴審判決は,①につき,「ペンキ塗装工事は建物の外構部分に関する工事であるところ,その内容や範囲は建物全体の外観等に影響を及ぼすものと思われること,本件確認書は,その内容・体裁に照らせば,本来,工事の完了状況を確認するために確認するために作成されるべき文書であるところ,これには・・・工事内容欄に「外壁塗装」「屋根塗装」と並んで「外回りペンキ」との名称でペンキ塗装工事が独立の項目として設けられ,その具体的な塗装箇所が不動文字を丸印で選択する方法及び手書きによる書き込みの方法によって明示されていることからすると,ペンキ塗装工事の具体的内容が契約内容の特定のために不必要であるということができない」等とし,法4条1号の「商品若しくは権利又は役務の種類」の記載があったとは言えないと判示した。

 また,②の本契約書と見積書の一体性については,「購入者等に交付された法定書面それ自体によって契約内容等が明らかとなることが必要というべきであり,書面交付時の口頭の説明によって補われていれば足りると解するのは相当ではない」として,見積書により,「商品若しくは権利又は役務の種類」の記載が補完されたとは認められないと判断し,クーリングオフによる契約解除を認めた。

 

3 テキシアジャパン被害対策愛知弁護団が結成されました!

 テキシアジャパンホールディングスの会長,幹部らが,巨額の架空投資を巡る問題で逮捕,起訴されたことを受け,愛知県弁護士会の消費者委員会,民事介入暴力対策委員会の有志により,平成31年3月20日,「テキシアジャパン被害110番」を実施しました。

 被害110番には,県内在住の方だけではなく,全国の19都道府県の方々から被害相談が寄せられ,改めて,本件投資被害の深刻さを痛感させられると同時に,二次被害発生を早急に阻止する必要性があると考えるに至りました。

 以上の経緯から,テキシアジャパンホールディングス社への投資を巡る被害救済が急務であると考え,訴訟提起も念頭において,4月17日,「テキシアジャパン被害対策愛知弁護団」が結成されましたので,ご報告いたします。

 【問合せ先】  弁護士 淺 見 敏 範

 愛知市民法律事務所 

 電話 052-529-6156(受付9:30~17:30)