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消費者問題速報 VOL.172 (2018年11月)

1 教会が火災に遭ったのは,エアコンの室外機の欠陥が原因であるとして,ダイキン工業株式会社(上記室外機の製造元,被告)に対し,製造物責任法(PL法)に基づき,牧師ら(原告)に対する損害賠償責任を認めた判決(東京地方裁判所平成30年9月19日判決)

 本判決は,まず教会内の出火場所になり得る箇所(最も焼損が激しかった場所)を列挙し,それぞれの場所に発火源があるか否かを検証したうえで,2階ベランダの室外機周辺が出火場所である可能性が高いと結論付けた。

 そして,発火源について,燃焼が激しかった室外機左側の部分で通電があり,発火の可能性がある電気系統部品は,ファン電動機だけだったと認め,発火源は室外機の冷却用プロペラファンの電動機であると結論づけた。

 

2 株式会社コムテックス(被告会社)の従業員らの商品先物取引の勧誘・受託行為には違法性があるとして不法行為責任を認めるとともに,被告会社の内部統制システムに不備があったとして代表取締役らの会社法429条1項の責任を認めた判決(名古屋地方裁判所平成30年11月8日判決)

 本判決は,被告会社従業員3名が,原告(30代会社役員男性,年収約500万円,預貯金約1800万円,投資経験はほとんどなし)に対し,原告の投資意向と乖離した投資可能資金額を設定して取引を行わせ,かつ原告の過大な取引数を把握しながらも,制御を促すなどの措置を執ることもなく,損失を回復させるなどの名目で更なる取引を勧誘し,多数の取引を受託しようとしたなどとして,新規委託者保護義務違反,過当取引,指導・助言義務違反,信任・誠実公正義務違反を認め,共同不法行為を構成するとした。

 そして,被告会社従業員らの違法な勧誘行為の態様に照らすと,被告会社代表取締役2名においては,被告会社の従業員が新規委託者保護義務違反,過当取引等により,委託者に損害を与えることがないように,法令等遵守のための従業員教育,懲戒制度の活用等の適切な措置を執ること等,法令等遵守及び内部管理体制を実効性のある形で確立・整備し,適正な勧誘・受託の履行を確保する措置をとっていたとは認めがたいとした。

 さらに,本判決は,被告会社では,懲罰規定や社内監査規程等の各種規程が改正策定され,従業員に対する研修や社内監査が実施されるなど,法令等遵守体制や内部管理体制を構築しようとしてきたことが認められるとしながらも,被告会社が顧客との間で多数の紛争を抱え,多数の訴訟を提起され,適合性原則違反,新規委託者保護義務違反,両建による特定売買などの違法行為を認める判決が出されていたこと,主務省から受託業務停止処分及び業務改善命令という重い本件行政処分を受け,同処分の中で,本件と同様あるいは類似の違法事由が指摘されていること,被告会社では各種規程を改正策定していたが,依然として顧客との間で多数の苦情,紛議,訴訟が発生し続けていたこと等を認定し,代表取締役らは,各種規程及び諸施策の実効性に疑問を持つべきであり,従業員らが本件のような違法な勧誘行為を行うことは予見可能というべきであるとし,内部管理体制の確立・整備を怠ったことにつき重過失が認められると判断して,代表取締役2名に対し,原告が被った損害の賠償を命じた(過失相殺4割)。

 

3 第一商品株式会社に対し,先物取引について,「指導助言義務違反を認めた事例【①】」及び「適合性原則違反を認めた事例【②】」(東京地方裁判所平成30年9月28日判決【①】,福岡高等裁判所平成30年8月30日判決【②】)

 判決【①】は,被告会社は,商品相場の値動きの予測に精通し,かつ原告の財産状況や取引経験,先物取引の状況を全体として俯瞰できる立場にあるのであるから,取引開始後の個別取引の場面においても両建のリスク等を原告に説明すべきであり,その結果原告が両建を選択した後も,必要に応じて損切りを指導したり早期の手仕舞いを助言したりする等の指導助言義務を負うと判示し,本件では,適切な指導や助言をしたとは認められないと認定した(過失相殺3割)。

 判決【②】は,控訴人会社が,被控訴人の収入・資産の状況を十分に把握せず,取引拡大のために高額の収入,資産,投資可能金額を申込書に記載するよう指示又は誘導し,利益の獲得を強調することによって,安全重視の被控訴人の投資意向に反して先物取引を開始させ,取引開始からわずか1か月あまりの間に被控訴人が投資の限度額としていた金額にほぼ見合う損失を負わせ,その後も損失の回復を図りたいと考える被控訴人の心理に乗じて取引を継続させながら,取引の維持及び拡大のための追加の証拠金を入金させ,結局,被控訴人が投資の限度額を考えていた額の2倍以上の損失を追わせたと認定し,控訴人会社のこのような勧誘行為は,適合性原則に違反するものであると判示した(過失相殺1割)。

 

4 株式会社ケフィア事業振興会(かぶちゃん農園)の弁護団相談受付について

 ケフィア事業振興会被害弁護団(東海)への被害相談については,平成30年12月14日(金)で相談受付を終了いたします。

 【名古屋投資被害弁護士研究会】http://www.nssmk.jp/news/819