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消費者問題速報 VOL.165 (2018年3月)

1 ジャパンライフ株式会社について、破産開始決定が出されました。

 東京地裁は、平成30年3月1日、ジャパンライフ株式会社について破産手続きの開始を決定しました。破産管財人には高松薫弁護士が選任され、被害者の方を含む債権者からの問い合わせを受ける専用ダイヤル(03-3511-8333)が設置されています。また、ジャパンライフにより被害を受けた方の救済のための弁護団が全国各地で結成されていて、愛知県でも「ジャパンライフ被害対策中部弁護団」が結成されています。

 被害者の方の相談窓口については、以下の中部弁護団のHPを参照してください。

 → https://japanlifehigai-chubu.amebaownd.com/

2 税の滞納分を徴収するため実質的に給与自体を差し押さえることを意図して給料受取り口座の預貯金の残高全てを差し押さえたのは違法として、差し押さえた金額全額、慰謝料及び弁護士費用の請求を認めた判決(前橋地裁平成30年1月31日判決)

 本件は、原告が、滞納していた市県民税及び国民健康保険税の徴収のために前橋市長が原告の預金債権を差し押さえたことは差押禁止債権の差押えにあたり違法であると主張し、差押えにより取り立てられた金額と慰謝料及び弁護士費用を求めた事案である。

 本判決は、原則として給料等が金融機関の口座に振り込まれることによって発生する預貯金債権は直ちに差押禁止債権としての属性を承継するとものではないとしたうえで(最判平成10年2月10日第三小法廷判決参照)、給料等が受給者の預貯金口座に振り込まれた場合でも、国税徴収法76条1項・2項が給料等受給者の最低限の生活を維持するために必要な費用等に相当する一定の金額について差押えを禁止した趣旨はできる限り尊重されるべきであって、滞納処分庁が実質的に同法76条1項、2項により差押えを禁止された財産自体を差し押さえることを意図して差押処分を行ったものと認めるべき特段の事情がある場合には、上記差押禁止の趣旨を没却する脱法的な差押処分として、違法となる場合があるとした。

 そして、本件では、給料振込前は原告名義の預貯金口座の残高は0円であったこと、前橋市はいずれも給与振込みがあった当日に差押えを行っておりかつ前橋市は原告から定期的に給与支給日が記載された給料支払明細書の提示を受けていたこと、前橋市担当者は本件預貯金口座に給与以外に振り込まれるものはない旨の説明を原告から受けていたこと、本件預貯金口座に原告の滞納市税等の計約158万円以上の貯金が存在している可能性は極めて低かったことを認定した。そのうえで、前橋市は、本件預金債権の原資が給与であることを認識しつつ、給与が本件預貯金口座に振り込まれた当日に差押え処分を行っているので、実質的に給与自体を差し押さえることを意図して本件各差押処分を行ったものと認めるべき特段の事情があり、本件差押えは国税徴収法76条1項に反する脱法的な差押処分として違法であると判示した。

 また、前橋市長には国税徴収法76条1項・2項の趣旨を没却する差押処分を行ってはならない注意義務違反を怠った過失があり、これにより原告に生活の糧を奪われたことによる精神的苦痛を与えたとして、慰謝料及び弁護士費用の請求を認めた。

 

3 破綻することが明らかなファンドを、分散投資を行う等の虚偽の事実を述べ、高利率の配当金の支払いが可能と装って出資者を募ったこと等につき、会社および代表取締役らに不法行為責任を認めた判決(東京地裁平成29年12月25日判決)

 本件は、適格機関投資家等特例業者としての届出をしていた業者(以下「A社」という)が、株式、不動産、商品(先物取引)、為替(外国為替証拠金取引)に分散投資することにより、出資金に対する月2パーセントないし2.5パーセントの配当金を支払う一方で元本欠損のリスクを低減するなどというファンド(以下、「本件ファンド」という。)を企画・組成し、A社の代表取締役B及び同人と継続的な交流をもっていたDが、Dが設立したC社及びその従業員らとともに本件ファンドへの出資勧誘を目的としたセミナーを頻繁に開催するなどしてファンドへの出資金名目での集金活動を繰り広げ、一般投資家らに多額の金員を出捐させ、損害を被らせたという商法(以下、「本件商法」という。)の被害事案である。

 本判決は、まず本件ファンドについて、上記のとおり4つの投資対象への分散投資によりリスクを低減するなどと喧伝しておきながら、実際には上記分散投資を行っていなかったこと、月2.5パーセントもの配当金の支払いを恒常的に可能とする資金の流れが見当たらないこと等の事実を認定した上、このような本件ファンドを組成した首謀者B及び販売担当のC社の代表取締役であったDについて、「破綻することが明らかな本件ファンドを、分散投資を行うなどという虚偽の事実を述べ、高利率の配当金の支払いが可能であるかのように装って募集した」などとして、故意の不法行為責任を認めた。なお、本判決は、A社及びD社については法人固有の不法行為責任を認め、B及びDに対してはそれぞれ会社法350条に基づく責任も認めた。

 また、本判決は、本件ファンドの販売会社としての役割を担ったC社の従業員とされていた者ら及びC社から本件ファンドの出資金名目で金員を出捐させる営業行為に関する業務委託を受けていたとされていた者らについても、「本件ファンドの運用先や運用状況に関する説明内容に虚偽がないかを十分に調査確認する義務を負っていた・・・にも関わらず・・パンフレットや運用報告書の記載内容の正確性について、何ら根拠にあたることなく、調査確認を行わずにその出資勧誘に協力していたものである。」などと認定し、過失による不法行為責任を認めた。

 なお、本件においては、Dは、「年5パーセントの配当金の支払い及び元本の償還が確実である」であるなどと申し向け、原告らの一部をして、本件ファンドのみならず、C社の社債の購入資金名目で金員を出捐させ、社債元本相当額の損害を被らせていた。これについても、判決は、「C社は、本件ファンドの販売代理店となった以降、A社から受領するコミッション料に依存した経営が行われていたのであるから、Dは、本件ファンド等が破綻すればC社の事業自体も継続不能となることを十分認識し得たにもかかわらず、本件ファンドへの出資者が配当金を受領し、Dの言を信じている状態を利用して、年5パーセントの配当金の支払い及び元本の償還が確実であると申し向けて本件社債を購入させたものであり、本件社債の配当・償還がされなくなったことにつき、少なくとも過失があるということができる。」として、Dの過失による不法行為責任を認めた。【判決文はあおい法律事務所HPに掲載】