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消費者問題速報 VOL.162 (2017年12月)

1 ジャパンライフ株式会社に対し,消費者庁から業務停止命令が出されました。

 消費者庁は,ジャパンライフ株式会社に対し,①平成29年11月18日から平成30年11月17日までの12か月間,業務提供誘引販売取引に係る取引の一部(新規勧誘,申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。さらに,②平成29年12月17日から平成30年12月16日までの12か月間,連鎖販売取引に係る取引の一部(新規勧誘,申込受付及び契約締結)及び預託等取引契約に係る業務の一部(新規勧誘,申込受付及び契約締結)を停止するよう命じました。

 同社に対する業務停止命令はこれで4度目です。

 なお,愛知県弁護士会の有志にて【「ジャパンライフ被害対策中部弁護団」】が結成されています。

 【消費者庁HP

 http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/release/pdf/release_171117_0001.pdf">

 http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/release/pdf/release_171215_0001.pdf">】

2 平成29年12月1日,改正特商法が施行されました!

①電話勧誘販売に過量販売解除権を導入 

②指定権利性の見直し(「指定権利」から「特定権利」へ) 

③取消権の行使期間の伸長(6か月から1年へ)  

④特定継続的役務提供に美容医療サービスを追加 ※政省令の改正

3 証券会社で行った信用取引が過当取引にあたるとして,証券会社及び担当者

 の損害賠償責任を認めた事例(東京高等裁判所平成29年10月25日判決)

 本判決は,一審判決(静岡地判平成29年4月24日。VOL156掲載。)の,「顧客の投資経験,証券取引の知識,投資意向,財産状態等に照らして,銘柄数,取引回数,取引金額,手数料等において社会的相当性を著しく逸脱した過当な取引を行わせたときは,当該行為は不法行為法上違法となる」との判断をそのまま維持した。

 また,本判決は,野村證券からの,各取引は一審原告の強烈な取引提案の要求によるもので野村證券担当社員が主導したものではないとの主張に対し,「ときに一審原告の要求が強烈なものとなる場合もあったことは否定できないが,その実態は,証券取引の専門家である一審被告担当者に対して損失の回復のための提案を一方的に期待するものに過ぎないのであって,前記認定事実によれば,個々の取引について承諾はするものの,一審原告は,飽くまで一審被告担当者の提案頼みの受け身の姿勢であり,本件信用取引については,全体を通じて,一審被告担当者が主導したことを否定することはできない。」と判示し,野村證券の主張を斥けた。現在上告中。

 

4 連鎖(マルチ)取引類似の方法で勧誘が行われた投資被害の事案で,直接の

 勧誘者ではない上位者の不法行為責任を認めた事例(東京地方裁判所平成29年10月25日判決)

 本件は,毎月3%から8%という高配当を謳うFX取引の投資ファンド(勝

 部ファンド)が問題となった事案で,勧誘方法としては連鎖(マルチ)取引類似の方法が用いられていた。本件の原告は,被告から直接の勧誘は受けておらず,被告の下位者から勧誘を受けて投資をして損害を被った者であり,被告からは,自身は原告と面識がなく直接の勧誘を行っていないし,下位者に勧誘を行わせたこともないから責任を負わないとの主張がなされた。そこで,連鎖(マルチ)取引類似の方法で勧誘が行われた投資被害の事案で,直接の勧誘者ではない上位者が不法行為責任を負うかが問題となった。

 まず判決は,商品の違法性を指摘したうえで,被告の責任について,「常識外ともいえる高配当の支払いが謳われていることを認識していたこと」や本件における紹介料の受領の態様等を指摘して,「勝部(運用担当者)から運用実体について説明を受けていなかったとしても,被告自身としても,勝部ファンドが顧客に約束していた配当金を支払えるだけの出資金の運用の実体を有しない虚構のものであることを認識していたと優に認めることができる」とし,「本件仕組みに基づき自身の下位者を通じて投資勧誘活動を行うことで,原告を含む顧客を詐欺的な商法である勝部ファンドに出資させたものであると認められる」,「被告について,原告を虚偽取引に勧誘したことについて故意による不法行為が成立する」と判示した。

 なお,同旨判決あり。東京地方裁判所平成29年11月30日。

 【あおい法律事務所HP】

 

5 マンションの新築工事における外壁及び玄関庇への石材取付工事につき,同

 工事の施工者が,建物としての基本的な安全性が欠けることのないように配慮するべき注意義務を怠ったとして,同施工者の不法行為責任を肯定した事例(東京地方裁判所平成29年3月31日判決)

 本判決は,1階分の階高以上のある場所に落下し得る石材を取り付ける工事は,仮に石材が?落して,地表の通行人の上に落下した場合,当該人の生命又は身体に重大な損害を与える蓋然性が高いこと等に鑑み,当該工事自体が,居住者等の生命又は身体に対する高度の危険性を内在していると判断した。その上で,かかる工事について,当該施工者が,危険防止のための合理的方法として一般的に採用される施工方法(以下「一般的合理的施工方法」という。)に則することなく施工した場合には,原則として,建物としての基本的な安全性が欠けることのないように配慮するべき注意義務の違反があり,そのために,当該建物に,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があると認めることができるが,そのような場合であっても,施工者において実際に採られた施工方法が,一般的合理的施工方法と同等又はそれ以上の効用を有することを立証したときには,上記の注意義務を怠ったとはいえないとの基準を示した。

 【判例タイムズ No.1441 134~152頁】