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消費者問題速報 VOL.161 (2017年10月)

1 成年年齢の引下げに反対する旨の意見書が,平成29年11月7日付の常議員会で採択されました!

 現在,民法の成年年齢を18歳に引き下げるための民法改正法案の提出が検討されています。しかしながら,成年年齢を引き下げるだけの立法事実がないだけでなく,引下げによって18歳・19歳の未成年者取消権が喪失し,これに伴い消費者被害が拡大することが大いに懸念されています。それにもかかわらず,引下げにより当然予測される若年者の消費者被害防止の観点から必要な施策は,極めて限定的な手当てしか取られる予定はありません。そのため,現段階での成年年齢の引下げに反対する旨の意見書を本委員会から提出し,平成29年11月7日付の常議員会で採択されました。

 また,下記日時で,成年年齢引き下げに関するシンポジウムが開催されます。皆様奮ってご参加ください。事前申込不要です。

 記

 日時:平成29年12月2日(土)午後1時30分~午後4時00分

 場所:愛知県弁護士会館5階ホール

2 外国株式の売買取引について,説明義務違反を理由とする不法行為を認めた判決(過失相殺は5割)(岡山地方裁判所平成29年6月1日判決)

 本件は,SMBCフレンド証券株式会社で外国株式(米国株式,中国株式)の売買取引を行った寡婦(取引開始当時73歳,無職)が,同社に対し,取引を担当した同社従業員の行為には,過当取引又は違法な一任売買又は適合性原則違反,説明義務違反があるとして,使用者責任に基づく損害賠償として,上記取引による損害(弁護士費用含む。)及びその最終の売買取引日の後からの遅延損害金の支払を求めた事案である。

 判決は,過当取引・違法な一任売買・適合性原則違反については否定したものの,原告が投資方針を転換して上記取引を開始するに至る前記従業員の働きかけにおいて,リスク分散のための資金配分の計画などをふくめた説明がなされたことをうかがわせる事情はみられないこと,取引開始において前記従業員が,原告の保有株式等の売却や売得金の取引口座への入金にも積極的に関与していたこと,ワークシートや登録内容変更依頼書に事実を反映していない部分があるまま審議書を作成して社内承認を受け,かつ社内承認前に買付を受注し執行するなどしていること,原告が取引開始直後から不満を漏らし,その投資方針に拒否反応を示していたことからすると,前記従業員らからは,積極的な投資運用による利益重視へと投資方針を転換することにより多額の損失が生じる可能性があることについて,原告に具体的に理解させるために必要な方法及び程度をもって説明がなされていたとは認められないとした。その上で,上記取引が,原告の従前の投資方針と大きく異なり,積極的な投資運用による利益重視の投資方針に基づくものであることに照らせば,上記取引を行うかどうかを自己責任により判断するのに必要な説明が十分なされたとは認められないとして,前記従業員らの説明義務違反を認めた。

 なお,原告自身,国内外の株式取引の経験に照らし,株式取引によって損失が生じることがあることは一般的に認識していたことなどから,過失割合を5割と認めるのが相当とされた。      

3 有価証券報告書の虚偽記載公表前の,第三者委員会設置の発表日からの株価下落の損害について,相当因果関係を認めた事例(東京地方裁判所平成29年3月28日判決,東京高等裁判所平成29年9月25日判決)

 本件は,株式会社リソー教育の株式を取得した株主らが,平成21年2月期から平成26年2月期第2四半期に係る各有価証券報告書及び四半期報告書に,売上高を過大に記載するなどの重要な事項についての虚偽記載があったことにより損害を被ったとして,金融商品取引法21条の2第1項による損害賠償請求権に基づき,実損害,弁護士費用,遅延損害金の支払を求めた事案である。

 原判決は,前記会社の損害賠償責任を認めた上で,有価証券報告書の虚偽記載公表前の,第三者委員会設置のお知らせにより,同日,虚偽記載の存在を合理的に疑わせる事実が市場に公表されたと言えるとして,上記お知らせをした日の株価の終値とその後の株式の処分価額との差額を,株主の被った損害とするのが相当とした。

 そして,原判決は,上記第三者委員会設置のお知らせ日以降に株式を購入した株主らは,前記会社株式を購入するにあたり,株価の動向が虚偽記載による影響を受けている可能性があることを認識できたというべきとして,損害との相当因果関係を否定した。

 なお,原判決は,株主らが得た配当金は,虚偽記載により損害を被る反面として得た利益とは言えないとして損益相殺を認めず,また,各株主に,株式を虚偽記載の公表後の有利な時期に処分しなかった過失があるということはできないとして,過失相殺も認めなかった。

 その後の控訴審判決でも,概ね原判決が引用された。

 【判決文はあおい法律事務所HPに掲載】