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消費者問題速報 VOL.160 (2017年9月)

1 個別信用購入あっせんにおいて,購入者が名義上の購入者となることを承諾してあっせん業者との間で立替払契約を締結した場合に,販売業者が上記購入者に対してした告知の内容が,割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を及ぼすことになる重要なもの」に当たるとされた判決(最高裁判所平成29年2月21日判決)

 被告ら(34名)は,信販会社(原告)の加盟店であった販売業者Aとの間で商品の売買契約を締結したとして,原告との間でその購入代金に係る立替払契約を締結したが,上記各売買契約は架空のものであり,上記各立替払契約は,Aの依頼により,被告らが名義上の購入者となること(いわゆる「名義貸し」)を承諾して締結されたものであった。Aは,名義貸しを依頼する際,被告らに対し,ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結であり,高齢者等の売買契約や商品の引渡しは実在することを告げた上で,「支払については責任をもってうちが支払うから,絶対に迷惑はかけない。」などと告げた。Aは,被告ら名義の引落口座に入金をしていたが,その後営業を停止し,破産手続開始決定を受けた。本件は,信販会社である原告が被告らに対し,上記各立替払契約に基づく未払金の支払等を求めた事案である。

 平成20年改正法による改正によって割賦販売法35条の3の13第1項の規定が新設され,契約締結の動機に関わる事項について販売業者による不実告知があった場合にも,あっせん業者の主観的態様を問わず,立替払契約を取り消すことができることとされた。

 本判決は,上記規定の趣旨等を確認した上で,立替払契約が購入者の承諾の下で名義貸しという不正な方法によって締結されたものであったとしても,当然に同項による保護に値しないわけではなく,販売業者が名義貸しを依頼する際にした告知の内容が,本件の具体的な事情の下では,同項6号の不実告知の対象に当たる旨の事例判断を示したものである。

 【最高裁判所HP】http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86517

2 基本契約に基づいて発行されたカードの又貸しにより,カードの名義人の親族が借入と返済を繰り返した事案について,借入と弁済の法律上の効果は過払金充当合意を含む基本契約の当事者であるカードの名義人に帰属するとした判決(大阪高等裁判所平成29年7月27日判決)

 本件は,被控訴人(1審反訴原告)がCFJ(1審反訴被告)との間の継続的な金銭消費貸借取引について,過払金の返還を求めて反訴を提起したのに対し,CFJが,発行されたカードを使用して実際に借入と返済を行っていたのは被控訴人からカードを又貸しされた被控訴人の母親らである旨を主張して争ったが,原審が被控訴人の反訴請求を全部認容したため,CFJが控訴したものである。

 控訴審も原審と同様,基本契約に基づく借入と弁済の法律上の効果は過払金充当合意を含む基本契約を締結した被控訴人に帰属するものと判示し,控訴を棄却した。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP】 http://www.kabarai.net/judgement/other.html

3 仕組債を販売する証券会社(野村証券)に対し,途中売却の際の損失リスクに関する説明義務違反を理由とする不法行為を認めた判決(過失相殺8割)(名古屋地方裁判所平成29年9月15日判決)

 本件の仕組債は,早期償還の条件を満たせば元本を円貨で満額受け取ることに加えて高率のクーポンを受け取ることができるものの,対米ドル及び対豪ドルのいずれかの関係で円高傾向が続くと最長で30年間償還されず,早期償還の条件を満たさない状況で途中売却をする場合には流動性を欠くために事実上被告が買い取ることとなり,その場合には被告が算定した提示額で売買されるが,途中売却の時期や為替レートの変動状況によっては元本を大幅に割り込むリスクがあるという特性を有するものであった。

 本判決は,本件の仕組債は早期償還条件を満たさなければ30年という長期間資金が拘束されることから,顧客にとっては途中売却によってどの程度のリスクを負うかが重要な情報であるとしたうえで,満期償還時の損失リスクと途中売却による損失リスクは質的に異なるものであることを指摘した。そして,途中売却の損失リスクを説明する際には,その損失リスクが,満期償還時の損失リスクとは質的に異なる大幅な元本割れにつながることを顧客が理解できるような方法で具体的に説明すべきであると判示し,本件では被告が具体的な説明をした事実が認められないとして,被告の説明義務違反による不法行為の成立を認めた。

 もっとも,原告が会社の代表取締役会長の立場にあった者であり,一定の投資経験や経済事情の知識・理解力を有していたことや,原告自身がある程度のリスクがあっても収益性を重視する投資方針を有していたこと等を理由に8割の過失相殺とした。

 【金融商事判例1528号44頁掲載】