愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > 消費者委員会 > 消費者問題速報

消費者問題速報 VOL.158 (2017年6月)

1 弁護士法23条の2に基づく照会につき,日本郵便㈱に,当会に報告する義務があることを確認した差戻審判決(名古屋高等裁判所平成29年6月30日判決)

 本件は,詐欺被害者が,加害者との間で訴訟上の和解をしたところ,和解金を払わず所在不明となったため,動産執行を行うべく,日本郵便に対し,転居届記載の新住居所等につき23条照会を行ったが,報告拒絶されたという事案である。

 当会は,詐欺被害者と共に,日本郵便に対し損害賠償請求をしたところ,一審は,報告拒絶は正当な理由を欠くが,日本郵便に過失ありとはいえないとして請求を棄却した。そこで,当会及び詐欺被害者が控訴し,当会が予備的に報告義務の確認請求を追加したところ,2審は,日本郵便の過失を肯定して当会の損害賠償請求を一部認容し,他方,詐欺被害者の請求は棄却した。

 最高裁は,報告拒絶は当会に対する不法行為を構成しないと判示した上で,確認請求について,高裁に差し戻すとの判決を言い渡した。

 差戻審は,①照会先は照会事項を報告すべき公法上の義務を負うが,当会と照会先との紛争は,行政過程における紛争とはいえず,行訴法4条の「公法上の法律関係に関する確認の訴え」には当たらず,本件確認請求の追加的変更を適法とした。また,②23条照会制度の趣旨及び弁護士会に課せられた責務に照らせば,弁護士会が23条照会を適正かつ円滑に運営し,その実効性を確保することは,法的に保護された弁護士会固有の利益であり,弁護士会と照会先の判断が食い違った場合には司法判断による紛争解決を図ることが相当であるとして,本確認請求の即時確定の利益を肯定した。なお,弁護士会が行う給付請求につき許容性に疑義があるとして確認の利益及び当事者適格も肯定した。③その上で,本件で報告拒絶されれば,詐欺被害者は,司法手続によって救済が認められた権利実現の機会を奪われるから,ア転居届提出の有無,イ届出年月日,ウ転居届記載の新住居所については,強制執行手続(動産執行)をするに当たり知る必要性が高い(なお,エ電話番号については,ア~ウに加え,更に報告を求める必要性があったとはいえない)として,日本郵便に対し,ア~ウの事項について当会に報告すべき義務があると判示した(日本郵便が上告・上告受理申立)。

 

2 高齢者に対する金融商品取引の勧誘行為に適合性原則違反等があったとして,証券会社に不法行為責任を認めた判決(東京地方裁判所平成28年6月17日判決)

 本件は,X(昭和5年生まれ)が,平成20年4月~9月にかけて,Y1証券から4種類の仕組債を4回購入したものの,いずれも参照銘柄の株価が予め定められたノックイン水準以下になり,各期限前償還判定日に予め定められたノックアウト水準以上にならなかったため,中途売却または償還によって損失を被ったとして,不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。

 争点は,①適合性原則違反,②説明義務違反であった。

 本判決は,適合性原則違反については,本件各商品の購入による損得を適切に判断するためには相当程度高度の投資判断能力が要求されるものであったのに対し,Xの年齢や認知症の程度に加え,その投資意向,財産状態および投資経験等の諸要素を総合的に考慮すると,適合性の原則から著しく逸脱したものであるとして,適合性原則違反を認めた(争点①)。

 また,Xの属性,投資取引に関する知識,経験,財産状況等に照らすと,Xにおいて本件各商品の取引に伴う危険性を具体的に理解できるような情報が必要な時間をかけて十分に提供されたとは認め難いとして,Y1証券担当者の説明義務違反を認めた(争点②)。ただし,過失相殺3割。      

 【判例タイムズ1436号201頁】

3 全国一斉銀行カードローン問題ホットラインの案内

 近時,マイナス金利政策の影響のもと収益確保のため,銀行が,貸金業法の総量規制の対象外とされた個人向けカードローンを急激に増加させており,杜撰な与信審査・過剰な貸付が行われているとの一部調査結果も出ています。

 そこで,当会では,日弁連と共催して,以下のとおり,全国一斉銀行カードローン問題ホットライン(無料電話相談)を開催することにしました。

 記

 相談日時:平成29年8月1日(火)午前10時~午後4時

 電話番号:0570-073-316

4 消費者契約法が改正されました!平成29年6月3日施行!

①契約取消権の行使期間が1年に伸長されました(7条1項前段)。

②過量契約の取消ができるようになりました(4条4項)。

③不実告知における「重要事項」の範囲が拡大されました(4条5項3号)。

 特定商取引法においても,電話勧誘販売における過量販売規制や通信販売におけるFAX広告規制が導入される等の改正がなされましたのでご確認を!