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消費者問題速報 VOL.147 (2016年6月)

1 株価指数証拠金取引について、説明義務違反及び手数料目的の過当売買を認め損害賠償を命じた事例(東京地方裁判所平成28年5月23日判決)

 本件は、原告が被告(KOYO証券株式会社)に対し、取引損失及び弁護士費用相当額の損害賠償を請求した事案である。

 本判決は、原告(30代男性、会社代表者、現物株式取引経験1年)が被告から勧誘を受け、取引所株価指数証拠金取引(くりっく株365)を開始したものの、わずか1カ月強の期間中にほぼ毎日、合理的理由もないのに被告主導のもと短期間で終了する取引を繰り返していることから、被告による手数料稼ぎ目的のための過当な頻繁売買が勧誘されていること、取引を繰り返すことにより多額の手数料を要することになる点についての説明が十分に行われていなかったという説明義務違反があったことを認定した(原告の上記1カ月強の取引期間中に得られた売買利益は77万円、金利・配当は6万8275円であるのに対し、被告が得た委託手数料は833万7600円にものぼる。)。その上で、損害については、上記委託手数料から売買利益及び金利・配当を控除した額に加え、弁護士費用相当額も付加し、過失相殺も否定した。本判決は、市場取引の場合にも説明義務違反を肯定した点で画期的といえる。

2 消費者金融業者(CFJ)が再生計画取消の申立てを行ったこと自体が不法行為を構成するとして慰謝料の支払いを命じた事例(名古屋高等裁判所平成28年5月18日判決)

 本件は、再生計画に基づく履行を完了して5年以上経過した時点で、被上告人(CFJ)が上告人に対し、再生計画に基づく履行を一切行っていないとして、再生計画取消の申立てを行ったこと自体が不法行為を構成するかが争われた事案である。なお、上記申立自体は、その後上告人からの指摘によりCFJ側の誤入金処理が判明し、CFJが取下げた。(不法行為の成立については、簡裁は肯定、地裁は否定)。 

 これについて、上告審は、CFJが誤入金処理(同一県内の同姓同名の別人の弁済として処理していた)を十数回にわたり継続し長らく放置したこと、上記取消申立て時点で入金履歴の精査等通常行って然るべき調査を行った形跡がないこと等から、「大手の消費者金融業者にあるまじき杜撰な債権管理態勢の下、漫然と本件申立てに及んだと言わざるを得ない」として、CFJの本件申立ては「事実的基礎及び法的根拠を欠いた不相当なものであることが明白」で、かつCFJには「重大な過失があるといえる」こと、再生計画取消が債務者の経済生活の再生の妨げになることからすると「その不相当の程度は民事再生制度の趣旨目的に照らして著しい」として、不法行為を構成すると判示した。

 

3 貸衣装契約の解約金条項の使用に対する大阪地裁の間接強制決定を不服としてなされた執行抗告が棄却された事例(大阪高等裁判所平成28年4月18日決定)

 適格消費者団体である特定非営利法人消費者支援機構関西(KC'S)が提起した貸衣装契約の解約金条項の使用差止請求訴訟について、貸衣装会社ら(株式会社VeaU及び富久屋マネージメント株式会社)はこれを認諾した(大阪地裁平成27年10月30日請求認諾、消費者速報VOL.140に掲載)。

 本件は、KC'Sが上記請求認諾に基づき間接強制申立を行い、大阪地裁が間接強制決定(違法な契約条項(以下、「本件契約条項」)を使用した場合には1回につき15万円の間接強制金の支払いをすることを命じたもの)を行ったところ、貸衣装会社らがこれを不服として執行抗告を行った事案である。

 大阪高裁は、請求認諾後の両社の対応について、本件契約条項が記載された契約書用紙を破棄したと主張するのみで破棄の具体的方法及び破棄の事実を裏付ける資料がないこと、従業員に対し本件契約条項を改定した旨の説明を行ったとしているが従業員に対する周知文書配布を示す資料もないことに加え、提訴前にも再三にわたりKC'Sが本件契約条項についての問合せや修正等の要求を行っていたのに1年以上対応しなかったこと、提訴予告通知が送付されても返答をしなかった等の貸衣装会社らの不誠実な対応が繰り返されてきたことからすれば、両社が請求認諾後も本件不作為義務に違反するおそれがあるものとして、執行抗告を棄却した。なお、貸衣装会社らはこの棄却決定を不服として許可抗告を申し立てていたが、その後取下げた。

4 事例紹介(「無料」と謳っている廃品回収業者から「積み込み料金」等の名目で金銭を請求された事例)

 具体的事例としては、「無料」とアナウンスしながらトラックで巡回している業者を呼び止め廃品回収を依頼し、作業前に無料であることを確認したにもかかわらず、不用品をトラックに積み終えたとたんに6万円を請求され、話が違うと抗議しても『回収代金は無料だが積み込み料金は発生する』などとして執拗に金銭の請求がなされた、というもの。こうしたトラブルが高齢者を中心に発生しており、やむを得ず手持ちの現金数千円を支払ってしまったというケースもある。なお、一般廃棄物の収集・運搬は市町村の許可を受けた事業者しか行うことができない。