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消費者問題速報 VOL.146 (2016年5月)

1 商品先物取引事案において,①取引終了後に取り交わした和解契約を無効であると判断し,②不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の有無について,弁護士に相談して初めて損害を被ったことを認識したと判断した判決(東京地方裁判所平成28年4月28日判決)

 本件では,取引の終了後である平成15年11月6日当時,原告と被告会社との間で和解契約書を作成しているところ,本判決は,和解契約書作成の際,従業員らの違法行為やこれによる損害について何ら話をしていなかったことから,原告は損害賠償請求をなし得ることを認識していなかったものと認められ,他方で,原告が当該認識を有していなかったことは従業員らに対して黙示に表示されていたと認められると認定し,要素の錯誤があったとして,当該和解契約は無効であると判示した。

 また,被告会社は,和解契約締結時には原告は損害及び加害者を知っていたとして,消滅時効の主張を行ったが,本判決は,上記のとおり,原告は和解契約書作成当時,被告会社従業員らの違法行為について何ら認識していなかったとの判断を前提に,原告は,平成25年1月28日に原告訴訟代理人弁護士に相談して初めて被告会社従業員らの違法行為によって損害を被ったことを認識したとして,消滅時効期間は満了していないと判示した。                 

 

2 家賃を滞納した賃借人に対する追い出し行為について不法行為を認めた判決(東京地方裁判所平成28年4月18日判決)

 本件は,賃貸建物における家賃,共益費,管理費等の代金支払保証業務を目的とする業者が連帯保証人となっていたところ,賃借人が家賃を2ヶ月分滞納後,上記業者が玄関扉に補助錠を取り付ける等の追い出し行為を行った事案である。

 本判決は,①玄関扉に補助錠を取り付けた行為について,当該物件への立ち入りを強制的に遮断する行為であるとして,不法行為責任を認めた。

 また,上記業者が,②本件物件内に立ち入り,原告の家財,設置物等一切を撤去し,処分した行為についても,刑事において窃盗罪又は器物損壊罪に処せられるべき行為であるとして,不法行為責任を認めた。

 なお,財産的損害として金30万円,精神的損害として金20万円,弁護士費用として金5万円の合計金55万円が損害として認められた。

 

3 CO2排出権取引について詐欺取引であることを認定した判決(名古屋地方裁判所平成28年4月6日判決)

 本件において,被告会社は,顧客の注文をロンドンにあるAXマーケット社(金融会社)に取り次ぎ,インターコンチネンタル取引所(ロンドンにある二酸化炭素排出権市場)で取引をしていると主張した。

 しかし,本判決は,インターコンチネンタル取引所を通じて決済がなされたとの記録を被告会社が一切提出しないこと,そもそもAXマーケット社はインターコンチネンタル取引所の会員ではないし参加資格者でもないこと,被告会社からAXマーケット社へ送金された金額がわかる資料もないこと等を認定して,被告会社はインターコンチネンタル取引所に原告の注文を取り次がず,呑み行為をしていたと認めて,当該行為は詐欺に該当すると判示した。