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消費者問題速報 VOL.145 (2016年4月)

1 詐欺商法に用いられた銀行口座の開設に関与した者について、幇助による不法行為責任が認められた事例(東京地方裁判所平成28年3月23日判決)

 ロト6の当選番号情報を教えるなどと欺罔して金員を銀行口座に振り込ませるという詐欺商法において主犯が利用した銀行口座の開設に関与した者に対して、幇助による共同不法行為に基づく損害賠償請求をした事案である。

 判決は、被告ら名義の口座の存在は詐欺の成立に不可欠であるところ、本人確認書類等を第三者に交付した後、自己宛に送られてきた郵便物をそのまま開封せず指定された場所に転送するという内職をした被告らの行為は、第三者による被告ら名義の銀行口座開設手続を可能とさせ、金融機関が第三者による口座開設を避けるため、名義人本人へキャッシュカード等を郵送させることを無意味なものとして、第三者が被告ら名義の口座を開設することを可能にさせるものであるから、詐欺の幇助行為に該当するとした。そして、内職の依頼者が何らかの事情により自らの住所を使用できない手続のためであることは明らかであり、被告らは、自らの行為が何らかの違法行為に使われている可能性が高いことを容易に知り得たにもかかわらず、報酬を得るために転送を続け、その結果として被告ら名義の預金口座が開設されて詐欺の用に供されたのであるから、被告らには過失があるとして詐欺の幇助を認めた。一方、個々の被告らの過失による幇助は、被告らの個々の口座が用いられた振込の限度で詐欺行為と関連共同性があるにとどまり、詐欺全体についての共同不法行為は否定した。

 また、判決は、原告による振込みは、地方自治体に欺罔行為を行い原告に当選金を交付させるという不法行為を前提とした情報料の支払であるから不法原因給付に当たるとの主張に対して、仮に不法性を帯びるとしても、その程度は原告を欺罔した者に比して極めて弱いとして、不法原因給付には当たらないとした。

 そして、原告は一般的にあり得ない話を軽信し、一度も当選番号を得られなかったのに消費者金融から借入れまでして、また、何度も不審を感じる機会がありながら漫然と振込送金を続けたことなどから過失の程度は相当重いとして、被告らの口座の開設への関与の程度に応じて5割又は7割の過失相殺を認めた。

 【判決文はあおい法律事務所HPに掲載】

2 過払いの事案で合併前の会社との取引と吸収合併後の存続会社との取引について一連計算を認めた事例(福島地方裁判所いわき支部平成28年2月26日判決)

 判決は、吸収合併前の会社との間で反復継続して行われていた第1取引を終了させ、吸収合併後の存続会社との間で新たに基本契約を締結して第2取引を開始したことを根拠とする分断計算の主張を退け、第2取引の開始が第1取引の取引終了日であったこと、第2取引開始時に収入資料に基づく与信審査を行っていないこと、約定利率、約定遅延利率及び融資限度額が共通していることから、第1取引と第2取引との一連計算を認めた。

 また、判決は、期限の利益喪失・遅延損害金の主張に対して、遅滞後17年間も一括弁済を求めることなく、分割金を受領し、分割金を遅延損害金に充当することの通知もしなかったことから、信義則に反し許されないとした。

 【判決文は名古屋消費者信用問題研究会HPに掲載】

3 未公開株ファンド詐欺事件で,銘柄会社の幇助による不法行為責任及び銘柄会社の取締役に対する任務懈怠責任を認めた事例(大阪高等裁判所平成27年12月18日判決)

 未公開株に投資する投資事業組合の出資証券(みなし有価証券)を詐欺的勧誘により一般投資家に無登録で販売していた会社から上記証券を購入した控訴人が、銘柄会社は販売会社の不法行為を幇助したと主張して、銘柄会社の代表取締役に対し不法行為又は任務懈怠責任に基づく損害賠償請求をした事案である。原審(大阪地方裁判所堺支部平成25年(ワ)第84号)は、販売会社の不法行為責任を認めたが、銘柄会社の幇助による不法行為責任及び銘柄会社の取締役の任務懈怠責任を認めるに足りる証拠はないと判断したため、これを不服として控訴した。

 本判決は、銘柄会社は販売会社の未公開株販売がインターネット上やマスコミから問題視されていたことを認識していたにもかかわらず何らの調査をすることなく、販売会社から事業資金を得るために販売会社が未公開株を取得できるように協力したり、実際とは異なる売上予測に係る資料等を販売会社に提供するなどして、一般投資家に対する未公開株販売に協力し、これを支える行動をとっていたとして、銘柄会社の幇助による共同不法行為責任を認めたうえで、銘柄会社の代表取締役の任務懈怠責任を認めた。