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消費者問題速報 VOL.143 (2016年2月)

 愛知県弁護士消費者委員会

1 クレジットカード取引で,一連計算を認めた控訴審判決(宮崎地方裁判所平成27年12月18日判決)

 クレジットカード取引で,第1取引と第2取引の間に約7年4ヶ月の空白期間のある事案につき,第2取引を開始するに際し信用状況について調査し直したような事情は認められず,第1取引及び第2取引で使用されているカード及び取引口座が同一であることから,一連計算を認めた。       

 【判決文は名古屋消費者信用問題研究会HPに掲載】

2 破産免責決定後の過払金請求を認めた判決(福岡地方裁判所小倉支部平成27年11月27日判決)

 原告は,破産手続開始決定,廃止決定及び免責許可決定を受けた。また,原告は,破産手続開始決定前,貸金業者である被告との間で継続的に借入れと返済を行っていたところ,免責決定後,被告に対し,過払金返還を求めた。

 判決は,後に過払金返還請求を行う意図を隠して破産の申立てをしたと認められない限り,一般条項に反して許されないとはいえないと判示した。

 【判決文は名古屋消費者信用問題研究会HPに掲載】

3 現金の送付先となっていた私書箱事業者に対し,詐欺の幇助責任を認めた判決(東京地方裁判所平成28年1月26日判決)

 投資詐欺の被害者である原告が,詐欺グループから被害に係る現金の送付先として指示された私書箱を開設していた会社及びその代表者に対し,過失によって同詐欺グループの詐欺行為を幇助したとして,損害賠償を求めた事案。

 判決は,犯罪収益移転防止法を引用し,同法の趣旨に鑑みれば,同法上の本人確認義務は,単に形式的に本人確認書類(又はその写し)の提示を受けるなどすれば足りるというものではなく,当該本人確認書類自体が真正なものであることなどを然るべき方法を用いて確認することにより,もって本人特定事項の実質的な確認をすることを求めている」とした。そして,平成21年には被告会社の私書箱業も不正に利用された経験があることなどから,平成22年頃には詐欺行為に不正に利用される具体的な可能性を認識するに至っていたと認定し,遅くとも平成23年11月の時点においては,私書箱業を営む者として,顧客との間で私書箱契約を締結する際に,同法及び同法施行規則の定める本人確認の方法により顧客の本人確認をすべき注意義務を負っていたものというべきであるとした。そして,非対面取引である私書箱契約の締結にあたっては,被告会社は転送不要郵便物による本人確認をすべき義務を負っていたのであり,私書箱事業者には,これを怠った過失があると判断した。       

 

4 仕組債を販売する証券会社に対し,説明義務違反を肯定した判決(名古屋地方裁判所岡崎支部平成27年12月25日判決)

 本件で問題となった仕組債は,為替が円安に進めば高利回りでの運用ができ,クーポン発生や償還の条件は理解困難なものではない。一方で,最大損失は元本額(但し、当初半年分のクーポンを除く。)に限定されているものの,満期に至るまで投資資金の拘束が続く可能性は低くはなく,拘束が続いた場合には購入代金である5000万円もの資金が30年間との極めて長期間拘束されること,早期償還のためには,米ドル及び豪ドルの為替相場が,設定された基準価格よりもいずれも円安に進む必要があるが,1年に2度の利払日の午後5時の時点において,基準価格よりも円安となるかを購入時点で予測するのは極めて困難であり,しかも,為替相場が思惑と外れて円高に進んだ場合に途中売却をすれば,大幅に元本を欠損するリスクのある商品である。

 判決は,上記の商品特性を認定したうえ,原告は投資に関する知識を有していたものの,専門的な知識はなく,仕組債を購入した経験もなかったことなどを認定し,本件仕組債を原告に販売するに当たっては,本件仕組債が抱えるリスクについて,相当具体的な説明をする義務があるというべきであると判断した。そして,被告証券会社担当社員の説明は,「本件仕組債においてクーポンが生じないリスクや満期時の元本欠損のリスクを過小に評価させ,また,途中売却によって元本を欠損させるリスクを具体的に説明していないものであり」,仕組債の取引経験のない原告に対する説明としては不十分なものであったと言わざるを得ないとして,説明義務違反を肯定した。             

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