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消費者問題速報 VOL.142 (2016年1月)

1 時効消滅した過払金返還請求権を自働債権とした相殺の主張が民事訴訟法142条に反しないとした判決(最高裁平成27年12月14日判決)

 貸金業者から金銭を借り入れた顧客が、平成8年から平成12年までの取引(第1取引)と平成14年から平成21年までの取引(第2取引)について、これらは一連一体の取引であると主張し、貸金業者に対して過払金の返還を求めた。

 これに対して貸金業者は、第1取引と第2取引は別個の取引であるから、第1取引に関する過払金返還請求権は時効消滅しており、第2取引については過払金が発生していないとして、第2取引に関する貸金の返還を求める反訴を提起した。

 反訴に対して、借主である顧客は、仮に第1取引が時効消滅しているのであれば、予備的に第1取引の過払金請求権を自働債権として、第2取引の貸金返還請求権と相殺するとの主張をした。

 本件の争点は、当該相殺の予備的抗弁の主張が、重複起訴を禁じた民事訴訟法142条の趣旨に反して許されないか否かである。

 判決は、時効消滅した債権であっても、時効消滅前に相殺適状にあった場合にはこれを自働債権として相殺をすることができるから、訴訟物である債権が時効消滅していると判断される場合に、同時に審判される反訴にて時効消滅した本訴訴訟物たる債権を自働債権とする相殺の抗弁につき判断をしても、当該債権の存否に係る本訴の判断と矛盾することは無く、審理が重複することも無いとして、借主の相殺の抗弁を認めた。

 【最高裁HP掲載】

2 初めてEB債を購入した顧客が株式償還の仕組みについて十分な理解が得られていなかった事案において、原審の事実誤認を認めた上で、契約締結前交付書面を交付しなかった事実や、提出された通話録音において証券会社担当者から商品の仕組みやリスク等の説明等がなされていない事実を指摘し、説明義務違反の違法を認め、過失相殺を行わなかった判決(大阪高裁平成27年12月10日判決、原審:大阪地裁平成27年4月23日判決、業者:みずほ証券)

 平成20年頃にみずほ証券からEB債の投資勧誘を受けた顧客(平成17年頃に一週間程度の株取引経験あり)が、いわゆるリーマンショックが原因となって本件EB債の対象株式がノックイン価格以下となったため、値下がりした株式による償還となり損失を被ったという事案である。

 EB債(他社株転換可能債)とは、仕組債の一種である。EB債は、通常の債券に比べて高率の利息が支払われるのが一般的であるが、代わりに、指定された対象株式が一定価格以下になると、金銭の代わりに値下がりした当該対象株式が現物償還される仕組みの金融商品である。

 本件EB債は、①対象銘柄の株価の1.05倍をノックアウト価格(早期償還される価格)②対象銘柄の株価の0.7倍をノックイン価格(株式償還される価格)とし、③満期までの間に一度でもノックイン価格以下となった場合には、判定日にノックアウト価格まで株価が上昇しない限り値下がりした株価の株式にて現物償還されるというものである。

 第一審は、証券会社担当者は、顧客に対して、契約締結前交付書面を交付の上、上述の本件EB債の仕組みを十分に説明し、株式償還の場合に損失が生じるリスクを説明したとして、説明義務違反を認めなかった。

 これに対して、本判決は、証券会社が作成するアプローチ履歴(顧客対応の履歴)には、他の資料の交付記載があるのに、契約締結前交付書面については交付した旨の記載が無いこと、契約締結前交付書面の受領書や確認書が提出されていないこと、契約締結前交付書面を交付したとされる日の後の通話録音において契約締結前交付書面の記載内容に関する会話が存在しないことなどから、契約締結前交付書面が交付されたものとは認められないとした。

 その上で、本判決は、証券会社担当者には、本件EB債の元本欠損が生じるおそれ、元本欠損の原因となる指標、元本欠損を発生させる仕組みについて顧客に説明すべき義務があると判示し、上述の通り証券会社担当者は契約締結前交付書面を顧客に交付していないこと、通話録音にも株式償還となった場合に株式数の計算方法や損失額の見込みについて何らの説明もしていないことなどから、証券会社担当者は顧客に対して元本欠損の仕組みやリスクについて説明をしていないとして、説明義務違反を認めた。

 【金融・商事判例NO.1483掲載】

3 葬儀の料金トラブルに関するお知らせ(国民生活センター)

 独立行政法人国民生活センターから、葬儀に関するトラブルの記事が出ております。以下のURLをご参照ください。

 http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20151217_1.html (国民生活センターホームページ)