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消費者問題速報 VOL.141 (2015年12月)

1 年金を実質的に担保に取るなどして出資法を潜脱する高金利を支払わせる「偽装質屋」の貸付行為及び弁済受領行為が違法であるとして,その「偽装質屋」を運営する会社の代表取締役につき会社法429条1項の責任を認め被害者に対する損害賠償を命じた判決(福岡高等裁判所平成27年10月22日判決)

 質屋営業では,流質期限後は流質によってのみ貸付金の回収を行う点に特色があり,そうであるが故に,質屋営業法は年109.5%という特例の高金利を認めている。ところが,近時,質屋営業の許可は受けているものの無価値あるいはほぼ無価値な物品を預かって金員を貸し付ける偽装質屋(その実態は小口高利金融であって,貸金業法の無登録営業に他ならない)による被害が増加していた。

 本件は,その偽装質屋による被害に対して,救済・保護をおこなった高裁判決である(本判決の原審は消費者問題速報VOL.134(2015.4)号掲載の福岡地裁判決)。

 控訴審は,一審判決を是認し,被告の経営する会社の行う営業は,主観的にも客観的にも質物として価値のない時計を質物として提供させる一方,公的年金の受給口座から自動振替をする契約をしなければ,融資をしないという方式であり,流質による債権債務の清算を予定しているのではなく年金からの回収を予定しているものであり,質屋営業法上の質屋営業に該当しないと認定している。

 そして,質屋営業に該当しないにもかかわらず質屋を標榜し組織的に多数の顧客から違法に年96%という高利の利息を年金受給口座から自動振替の方法で得ており反倫理性が高いことを理由に,貸付金は不法原因給付となるとして,損益相殺を否定している。

 さらに,違法な流質目的年金振替融資の実情を把握しこれを是正する義務に反したものとして,同営業を行う会社の代表取締役である被告に会社法429条1項に基づき被害者が被った損害の全ての賠償責任を負う認めた。

 【判決文は名古屋消費者信用問題研究会HPに掲載】

2 住宅兼店舗において喫茶店を経営する者が訪問販売により電話機とファクシミリのリース契約を締結した事案において,同人のしたクーリングオフによる契約解除が有効であるとした判決(東京地方裁判所平成27年10月27日判決)

 被告は,喫茶店を経営する者であるところ,訪問販売員に回線の変更のため電話機の変更が必要であるとの説明を受け電話機とファクシミリのリース契約を締結したが,下記事案においては,被告が「営業のため若しくは営業として」リース契約を締結したのではないとしてクーリングオフによる契約解除を有効とした事案である。

 被告の経営する喫茶店は,1階部分が店舗兼住居,2階部分が住居であり,住居部分には被告の家族が居住し,電話機の親機は2階に設置していたところ,喫茶店利用者は近隣住民にほぼ限られており営業の規模は小さく,出前などの注文があっても被告の携帯電話に直接架電されるのが常態で,リース対象の電話機の使用割合は家族の私用が大半で業務に関連した電話がかかってくることはほとんど無かった。

 また,ファクシミリは購入後3ヶ月で調子が悪くなったため,被告らは利用をやめ,従前利用していた家庭用ファクシミリを利用している。なお,その用途は被告の子のクラブ活動の連絡手段や勉強のためのコピー機としての利用に限られていた。

 このようなリース契約の経緯,営業規模,及びリース物件の営業使用の必要性や頻度が極めて低いことに照らせば,契約名義が喫茶店の屋号であること,リース料を営業経費に計上していること,インターネットサイトや地元の飲食店マップにリース物件の電話番号が記載されていることを考慮しても,リース契約が「営業のために若しくは営業として」(特商法26条1項1号)締結されたとはいえず,特商法の適用除外に当たらないとしてクーリングオフによる契約解除を有効とし,原告のリース料請求を棄却した。

 

3 資料紹介(トラブルになってからでは遅い!結婚式トラブルへの備えとは-「キャンセル料」「打合せ不足」に関するトラブルが後を絶ちません-)

 「結婚式」をめぐる消費者トラブルが近年増加しており,「申込金が返金されない」等の契約段階でのトラブルや,契約後の打ち合わせ段階,「担当者の手違いで当日の料理が打ち合わせと違った」等の結婚式当日のトラブル等,様々な段階のトラブルがあるが,「契約・解約」に関する相談が最も多い。しかも,キャンセル料については,近年の裁判の流れを見ると,消費者側の主張が認められることが難しい状況があることから,キャンセルに至らないよう未然にトラブルを防ぐことが重要であり,トラブルや対応策についてまとめた資料が国民生活センターによって作成されたので,一度確認されたい。

 【国民生活センターHPに掲載(PDFファイル)】

4 注意喚起(マイナンバー制度に便乗した詐欺的トラブル)

 マイナンバーの通知が開始された10月以降,マイナンバー制度に便乗し,住所や口座番号等の個人情報やマイナンバー自体を聞き出そうとしたり,「あなたのマイナンバーが漏えいしている」などとしてウエブサイトへのアクセスを誘導したりするなどの不審な電話・メールに関するトラブルが増加している。

 【国民生活センターHPに掲載】