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消費者問題速報 VOL.139 (2015年10月)

1 分譲マンションの売主に説明義務違反が認められた事例(大阪高等裁判所平成26年1月23日判決) 

 本件は、被控訴人ら(複数の買主)が事業者である控訴人(売主)から分譲マンション(以下「本件マンション」という。)を購入した際の控訴人の説明義務違反が問題となり、説明義務違反が認められ、控訴人に10万円から50万円の損害賠償責任を認めた原審に、控訴人が控訴し原審が維持された事案である。

 本件マンションの建築された土地とその南側の土地は、もともとスポーツや文化施設を建築する区画になる予定であったため、周辺土地に課されていた日影規制が課されていないという状況であった。被控訴人はかかる規制の漏れを知って本件マンションの敷地とその南側の土地を購入し、規制の漏れを利用して本件マンションの南側の土地にもマンションを建てる予定であった。控訴人は上記の予定を実行に移したため、被控訴人に本件マンションを売却した控訴人が建てたマンションが被控訴人らの日照を阻害することになった。

 控訴審は、上記の事実関係をもとに、控訴人には、被控訴人の購入するマンションが日影規制の保護を受けておらず、控訴人が本件マンションの南側にマンションを建築した場合に、本件マンションにも日影の影響が及ぶ可能性があることを説明する義務があったとした。その上で、被控訴人は、本件マンションが建築基準法による日影規制の対象とならないことを説明したにとどまり、南側のマンションについては、マンションが建つかもしれないがプライバシーや日照について本件マンション住民への配慮がされるといった誤解を招く説明をしたとして、説明義務違反を認めた原審を維持した。

 なお、原審では、説明義務違反に基づく損害賠償請求のほか、建築差止め及び日照阻害による不法行為に基づく損害賠償請求も行われていた。建築差止めについては、マンションの完成により訴えの利益がなくなったとして却下され、不法行為については、日照阻害は受忍限度を超え又は社会的妥当性を欠くとまではいえないとして、請求が棄却された。

 【判決文は判例時報2261号148ページ以下に掲載】

2 過払金の発生後に被告がした新たな貸付の利息制限は、その新たな借入の元本の金額によって決すべきという主張が退けられた事例(京都地方裁判所平成27年8月20日判決)

 原告が被告(アイフル)に対し、過払金の返還を請求したところ、被告が、いったん過払金が発生し、その後の借入で新たに元本が発生したとき(例えば、平成10年6月13日の弁済により過払金が生じ、同月22日に5万円の貸付が行われたとき)は、過払金発生以前の制限利息ではなく、その新たな元本によって、利息制限法上の利息の上限を決するべき(この事案では、制限利息が18パーセントから20パーセントに上昇する)と主張した事案。

 裁判所は、従前の取引により発生した過払金の額と新たな貸付にかかる金額とを合計した後のものが、利息制限法1条1項の「元本」とすべきであるが、最高裁平成22年4月20日第三小法廷判決によれば、上記の原告と被告との各取引に係る各基本契約所定の利息の約定のうち年18パーセントを超える利率を定める部分は新たな貸付けの前に無効になっており、貸金元本が10万円未満になっても無効となっている部分は有効とならないとして、制限利率は変更されないと判じ、被告の主張を退けた。

 【判決文は名古屋消費者信用問題研究会HPに掲載】