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消費者問題速報 VOL.137 (2015年7月)

1 カードによる借入と返済の大半を,カードを貸与された借主の母親が行っていた場合の過払訴訟において,不当利得返還請求権は借主に帰属し,借主による請求権の行使も信義則に反しないとされた事例(東京地裁平成27年6月17日判決・控訴審)

 A(控訴人)がアコム(被控訴人)に対して過払訴訟を提起したところ,アコムは,カード契約に係る金銭の入出金を行ったのは,Aからカードの貸与を受けたAの母親Bであるから,不当利得返還請求権はAに帰属しないと主張。原審(東京簡裁平成26年(ハ)第6203号)はAの請求を棄却したため,Aが控訴。

 本判決は,大半の入出金を行ったのが控訴人の母親であることを認定するとともに,本件契約の当事者が控訴人と被控訴人であること, 控訴人とその母親がカードの貸与禁止を認識したうえで入出金について合意していたことを考慮した上で,控訴人とその母親いずれの入出金についても本件契約に基づく個別の金銭消費貸借契約が成立し,本件出入金に係る借入及び弁済の法律上の効果は控訴人に帰属するから,不当利得返還請求権も控訴人に帰属する,とした。

 また,控訴人による不当利得返還請求権は,名義人以外による入出金を目的としたカードの貸与という違法な行為の結果取得した権利であるから,その行使は信義則に反するというアコムの主張については,これによって被控訴人が何らかの損害を被ったとは認められず,また,これが信義則違反により許されないとなると,被控訴人が過払による利得を保持する結果を招くことになる,として信義則に反しないと判示し,控訴人の請求を認容すべき,とした。

 【判決文は名古屋消費者信用問題研究会HPに掲載】

2 異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をした債務者が,譲渡人に対抗することができた事由(旧貸金業法43条1項の適用がなく,制限超過部分の充当により元本が減少していたこと)をもって譲受人に対抗することができる場合(最高裁平成27年6月1日判決)

 貸金業者Aが貸金債権をB(被上告人)に譲渡した際,借主(上告人)が異議をとどめないで債権譲渡の承諾をしたが,借主が,Aとの当該取引には旧貸金業法43条1項の適用がなく,過払金が発生しているとして,Bに対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金の返還等を求めた事案(原審は,名古屋高裁平成26年6月13日判決)。

 上告審は,債務者が異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をした場合において,譲渡人に対抗することができた事由の存在を譲受人が知らなかったとしても,このことについて譲受人に過失があるときには,債務者は,当該事由をもって譲受人に対抗することができると解するのが相当であるとし,単に弁論の全趣旨から旧貸金業法43条1項の適用なしと判断し,被上告人には重大な過失がないとして,上告人は被上告人に対抗できない旨即断した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし,原判決中上告人敗訴部分は破棄し,原審に差し戻しを命じた。

 【判決文は最高裁判所HPに掲載】