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消費者問題速報 VOL.134 (2015年4月)

1 約定の返済日に遅滞して返済が行われた場合、その返済が行われるまでは遅延損害金の請求をしていたが、その余の期間は、通常の利息で請求していた事案において、期限の利益を再度付与したとされた事例(さいたま地裁平成27年3月6日判決)

 約定の返済日に遅れて返済を行った場合、その返済日までは遅延損害金の利率で遅延損害金を収受したものの、その後の期間は、通常の利率でのみ元利金を計算していたことから、被告アイフルは、原告に対し、期限の利益を再度付与したと認められた。

2 脱法的な質屋営業を行ったとして、借主の、質屋の代表取締役に対する会社法429条1項に基づく損害賠償請求が認められ、原告が受領した貸付金については、不法原因給付として損益相殺等の対象とならず、返金額全額の損害が認められた事例(福岡地裁平成27年3月24日判決)

 被告が経営する質屋は、借主である原告から無価値の質物を徴求して、形式的に貸金について質権設定契約を結び、質屋営業としての貸付の外観を作出して年96%の高利の貸付を行っていたが、その一方で、原告の年金が入金される口座から流質期限前に自動的に送金させることで、貸付金を回収する方法を繰り返していた。このような質屋営業の実態は、流質によってのみ債権回収を行う質屋営業法所定の質屋に当たらないから、質屋営業法の適用を受けず、出資法の適用を受けるとした上で、年96%の貸付は違法であり、また、その貸付金は不法原因給付に当たるとして、貸付金を損益相殺せず、原告の返済金全額の損害賠償請求を認めた。

 【判決文は名古屋消費者信用問題研究会HPに掲載】

3 時効完成後の債務の承認であっても、時効の援用が信義則に反せず許される場合があるとして、貸金請求を認容した原審の判断を破棄し、差し戻した事例(大阪高裁平成27年3月6日判決)

 平成15年9月4日を最後に、平成25年1月30日まで、貸金業者からの借入金に対する弁済を行っていなかった借主に対し、貸金業者の従業員が、商事消滅時効が完成していることを知悉していながら、元利金181万円を自宅に訪問して取立を行い、その際、支払わないと裁判をする、お金がないにしても家族なら支払える、1万5000円を払って欲しいなどと申し向け、翌日借主がこれに応じて1万5000円を支払った事案において、原審は、支払ったのが翌日であるから、借主は落ち着いて判断して支払ったものであるなどとして時効完成後の債務の承認にあたり借主の時効援用は信義則上認められないとしたが、本上告審は、最判昭和41年4月20日等の解釈として、信義則は、個別具体的事情による判断が必要であり、時効完成後の債務の承認により一律に消滅時効の援用が出来なくなるものではないことを示し、本件においては、右弁済は、借主の時効に関する法的無知や、高額な請求を受けたことによる困惑動揺に乗じたものである可能性があり、この点の解明が信義則の判断に必要であるとして、原審を破棄し、差し戻した。

 【判決文は名古屋消費者信用問題研究会HPに掲載】

4 過失相殺が原審の3割から4割に変更されたものの、商品先物取引における適合性原則違反の不法行為に基づく損害賠償請求を認容し、業者の差損金請求が信義則に反するとして棄却した原審が維持された事例(東京高裁平成26年10月8日判決・原審東京地裁平成26年3月24日判決)(上告受理申立)

 口座開設書に保有流動資産をすべて投資できるように資産等に虚偽の記載をするように誘導され、取引開始1ヶ月半で保有流動資産のほぼ全額の損失が発生した点について、顧客が自らの一存で実際とは大きく異なる資産、収入を記載する理由は考えがたく、被告従業員が当該金額を示して記入させたと考えるのが合理的で、被告従業員も真実に反する可能性が高いことを認識し得たこと及びその他の勧誘状況から、適合性原則に反する勧誘が行われたと認めた。

 【判決文は判例時報2248号40頁に掲載(一審判決同44頁)】

5 金融商品まがいの投資ファンドに出資させたとして、販売会社、運用会社、取締役、従業員等に対する出資金相当額の損害賠償請求が認められ、また、配当金は、不法原因給付に当たるとして損益相殺を認めなかった事例。(東京地裁平成27年3月26日判決)

 株式会社QuessParayaは投資目的で投資家から出資金及び申込手数料名目で金員を集め、集めた金員をエターナルファンド株式会社に貸し付け、エターナルファンド株式会社が資金を運用しているかのような投資ファンドの外形を作出していたものの、エターナルファンド株式会社においては、集められた資金の一部がFX取引に運用されたのみで、多額の資金は出先不明であり、行われた配当も当初から出資金を取り崩して行われていたものであった。これらから、本件ファンドは、当初から破綻することが必至のものであり、投資家に適正な損益を帰属させるものではなく、被告らの利を図ることを意図して組成された不正な金融商品であるとされ、そしてこのような不適正な金融商品を適正な金融商品であると誤信させて出資者に対し出資させることが詐欺行為にあたるとした。

 そして、配当金は、このような詐欺行為の発覚を防ぎ、新たに出資を行わせる手段であったから不法原因給付に当たり損益相殺の対象として控除することは許されないとした。