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消費者問題速報 VOL.133 (2015年3月)
1 残債務承認の和解契約を無効とした判決(東京高裁平成27年2月25日判決、裁判長:加藤新太郎、1審さいたま地裁川越支部平成26年9月11日)
新生フィナンシャルが、遅滞後の借主宛に約定利息による残元金とほぼ同額の残債務を承認する和解契約書を送付し、借主が署名・返送して分割払いを続けていたが、実際にはこの時点(平成24年6月)で200万円超の過払金が発生していた。判決は民法696条の適用を認めず、要素の錯誤に当たるとして和解の無効を認めた。
【判決文は名古屋消費者信用問題研究会HPに掲載】
2 不動産担保取引への切り替えにつき一連計算を認めた判決(大阪高裁平成27年2月26日判決)
借主側控訴により一連計算を認める判決が下された(極度額限度内での貸付と弁済の繰り返し、同日での契約切り替え、切り替え後の貸付による残債務の弁済、カード番号等が同一等)。なお、アイフルが控訴審結審後に借主側が請求した全額(過払利息込み)を振り込んだのちに弁論再開となって判決が下されたため、控訴棄却となるも控訴費用は全額アイフルの負担となった。
【判決文は名古屋消費者信用問題研究会HPに掲載】
3 出資詐欺の実行犯に携帯電話を貸与していた者の不法行為責任を認めた(東京地裁平成26年12月25日判決)
出資詐欺の実行犯に携帯電話を貸与していた者に対する損害賠償請求。判決は、被告の詐欺への関与・認識を認めなかったが、携帯電話不正利用防止法(携帯音声通信事業者による契約等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律)の趣旨から、貸与者は不正利用をさせない措置をする義務を負い、これを怠った場合には過失(義務違反)による幇助として共同不法行為者としての責任を負うとした。
【判決文は先物取引裁判例集72号に掲載】
4 日本郵便の転居先情報の回答拒絶を違法とした判決(名古屋高裁平成27年2月26日判決)
未公開株の被害者に200万円を支払う裁判上の和解が成立した後に相手方は転居するも住民票はそのままであった。被害者は日本郵便に対して転居届提出の有無やその内容等につき弁護士法23条の2による照会を行ったが、日本郵便は回答を拒否したため被害者と愛知県弁護士会が提訴した。同種事案に東京高裁平成22年9月29日判決(判例時報2105号11頁、判例タイムズ1356号227頁、金融法務事情1936号106頁)がある。
判決は、転居届に係る情報は個々の通信内容を推知するものではなく、憲法21条2項後段の「通信の秘密」や郵便法8条1項の「信書の秘密」にも該当しないとした。また、郵便法8条2項(郵便物に関して知りえた他人の秘密)による一律の拒絶は認められず、守秘義務を負う照会先は23条照会に対し報告する必要があるか自ら判断すべき職責があるとし、事案での利益衡量から一律の回答拒絶に正当な理由はなく違法であるとした。
被侵害利益について、弁護士会にとって照会が実効性を持つ利益(報告義務が履行される利益)は法的保護に値する利益とし、被害者(照会申出人)が受ける利益は照会制度が適正に運営された結果もたらされる事実上の利益にすぎないとして、弁護士会にのみ損害を認めた。(上告中)