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消費者問題速報 VOL.130 (2014年12月)

1 「ロコ・ロンドン貴金属まがい取引」について、取引の違法性、説明義務違反及び辞任した取締役の責任を認めた判決(東京地方裁判所平成26年11月13日判決)

 本件は、相対取引であるのに実際にはカバー取引が行われておらず、実態が疑わしく違法な取引であり、また、本件は顧客にとって極めて大きな危険を伴う取引であるためその危険性を十分に説明すべきであったにもかかわらず十分な説明をした形跡がうかがわれないことからも違法であるとし、本件取引の金銭交付時に、全株式及び営業権を譲渡した上で取締役を辞任していた者の責任について、辞任する前に原告が本件取引口座の開設を申し込んでおり、これにより原告に損害が生じたのであるから損害賠償義務があるとして辞任取締役の責任を認めた。                              

 【あおい法律事務所HP

2 「CO2排出権取引」について、公序良俗違反及び詐欺的取引であるとし、損益相殺を認めなかった判決(東京地方裁判所平成26年12月4日判決)

 本件取引は、被告会社から提示される「CO2排出権の価格」や「ユーロ円為替レート」の基準とされる為替レートは、被告会社にも原告にも予見することができず、また、その意思によって自由に支配することができないものであるから、偶然の事情によって利益の得喪を争うものというべきであり、賭博行為に該当して違法であり、公序良俗にも反する。また、差金決済の指標となる取引レートが被告会社によって一方的、恣意的に決定され、それに基づいて原告の損益が確定されていた高度の蓋然性があることから本件取引は構造的な利益相反状況や顧客に不利益になる事情を秘して行われた詐欺的な取引であるとした。

 上司から「元本割れはない。」との説明を受けそのように認識していたと主張する勧誘者について、上司の説明を信じたとは容易に考えられないし仮にそのように信じたとしても過失があるとし、取引当時取締役でなく原告との接触もなかった者(後に代表取締役に就任)については、会社の規模や営業の実態からすると、被告会社の役員、従業員は、全員が共謀して組織的に顧客を勧誘していたものと認められるとして責任を認めた。

 さらに、原告が配当金名下に被告会社から支払いを受けた金員は、不法原因給付によって生じたものであるとして損益相殺を否定し、不法な原因は被告会社についてのみ存したため原告は賠償を求めることができるとした。

 原告と被告会社との間で「取引終了承諾書」が作成されていた点については、書面作成当時、損害賠償請求権の存否について争いがあり、その点について互いに譲歩して争いをやめることを約する趣旨で書面が取り交わされたと認めるに足りる証拠はないとしたとした。

 【あおい法律事務所HP

3 法人登記に関する省令の改正

 現行の省令では、平取締役は申請書の提出のみで登記が可能であるため、未公開株等の詐欺被害の事案において、登記簿に実在しない取締役が登記されているケースがあった。また、平取締役の住所は登記事項ではないため、責任追及が困難であるという問題点も指摘されていた。そこで、内閣府消費者委員会や日本弁護士連合会が省令の改正を求めていたところ、法務省は、平成26年11月13日、翌年2月に省令を改正して平取締役の住民票提出を義務化することを発表した。これにより、架空人名義の登記を防止するとともに、住民票が附属書類とされることで、利害関係のある場合にはその閲覧によって平取締役の責任追及が容易となった。ただ、住民票は一定の場合には本人以外の者も取得可能であるため、住民票のみでは、本人の承諾の有無を確認する手段としては不十分であるとして、日弁連は就任を承諾した事実を証する書面の印鑑に印鑑登録証明書を添付することを求めている

 【平成26年11月14日朝日新聞デジタル】

4 建物の売主に「敷地の基本的な安全性の注意義務」を認めた判決(名古屋高等裁判所平成26年10月30日判決) 

 土地建物の買主が売主に対して地盤沈下の瑕疵について不法行為責任に基づく損害賠償等を求めた事案である。原審では買主が敗訴していたが、控訴審で逆転勝訴している。

 本判決は、本件建物には地盤の状況に応じた適切な基礎が用いられなかった結果、重心に偏りがあり、地盤沈下を生じさせやすいという瑕疵があるものと認められるとした上で、建物の敷地の地盤の性状が、その上に建築される建物の基本的な安全性に重大な影響を与えることは明らかであるから、敷地の地盤も宅地に適した強度や安全性を有していなければならず、建物を販売する者は、敷地についても基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い、敷地の地盤が建物に適合した強度を有しているかを調査すべき義務は、法令上の根拠の有無にかかわらないとして、売主の不法行為責任を認めた。なお、主位的請求である瑕疵担保責任に基づく解除の主張については、本件の傾斜では売買契約の目的を達することができないとまでは言えないとして,これを棄却している。

 【ウエストロージャパン】

5 行政書士法人へのヤミ金相談で被害

 東京都港区の行政書士法人「鷹悠会」(既に解散している)が「ヤミ金融業者の取り立てを止める」などと宣伝していたが、「依頼したところ数十万の報酬を請求されたうえ、取り立ても止まらない」という相談が全国56人から弁護団に寄せられたため、弁護団は「嘘の説明をして高額の報酬を得ようとする詐欺的行為だ」として、鷹悠会に対して報酬の返還などを求める訴えを提起した。平成26年11月14日、第1回口頭弁論期日が開かれている。

 【平成26年11月14日NHKニュース】