愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > 消費者委員会 > 消費者問題速報

消費者問題速報 VOL.129 (2014年11月)

1.公序良俗に反する無効な契約により給付を受けた金銭の管財人からの返還請求について,当該給付が不法原因給付に当たることを理由として拒むことは信義則上許されないとされた事案(最高裁判所第三小法廷平成26年10月28日判決)

 無限連鎖講を事業内容とする破産会社から多額の配当金の給付を受けた会員に対して,破産会社の破産管財人が,配当金の返還を求めた事案である。

 原審は配当金の給付が不法原因給付にあたることを理由に返還請求を認めなかったのに対し,最高裁判所は,配当金の原資は他の会員が出捐した金銭であること,会員の相当部分は被害の救済を受けられていないこと,破産管財人が配当金の返還を求め,破産手続の中で破産債権者への配当を行うなど適正かつ公平な清算を図ろうとすることは衡平にかなうこと,被上告人が配当金の返還を拒めるとすれば,被害者の損失の下に被上告人が不当な利益を保持できることになり相当でないことから,被上告人が不法原因給付を理由として配当金の返還を拒むことは信義則上許されないとして,原審を破棄した。

 【最高裁判所HP

2.違法な商品先物取引に基づく損害賠償請求権の時効の起算点は取引終了時であるとする会社側の主張を排斥した原審に対する上告が棄却された事例(最高裁判所平成26年10月28日第三小法廷決定)

 商品先物取引について消滅時効の起算点が争われていた事案について,最高裁判所はニューザックの上告を棄却した。原審(名古屋高裁平成25年2月27日判決、先物研HP)は,弁護士から,本件取引が違法な商品先物取引による損失による被害である可能性がある旨指摘された時点が不法行為の消滅時効の起算点にあたると判示していた。

 本決定は,時効の起算点は個々の事案の事実認定の問題と捉えていると言える。

3.CO2排出権取引商法事案につき,既払の配当金を損害から控除することは民法708条の趣旨に反するとして認めなかった事例(東京地方裁判所平成26年10月21日判決)

 CO2排出権取引商法事案であるが,確定配当を支払うとして勧誘した点に特徴がある事案である。判決では,本件取引の仕組みは相対の差金決済取引であるにも関わらず,あたかも保証金に応じて一定の配当金が交付されるかのような虚偽の説明をし,このような資料を交付して顧客を欺罔し,誤信させる一方で,利益相反関係や預託金以上の損失を被る危険性について十分な説明することなく保証金名目で金銭を交付させた行為は違法であり,違法な勧誘を行わせた役員に損害賠償責任を認めた。

 本件では被害者に配当金が支払われているが,本件取引によって配当金を得たかのように装ったものであり,被害者をして取引を継続させ,違法行為の発覚を防ぐ手段にほかならず,これを損害から控除することは民法708条の趣旨に反するとして認めず,配当金にまで踏み込んで判示したことに特色のある事案である。 

 【あおい法律事務所HP】                  

4.株式会社及びその代表者が顧客である株価指数2倍連動債の事案で,説明義務違反及び錯誤無効が認められた事案(大阪地方裁判所平成26年10月31日判決)

 取引当時66歳の,過去に相応の株式の取引経験と資産のある会社社長とその経営会社が,電気ガス指数の2倍連動債を購入させられ,個人,会社共に損失を負った事案である。

 判決では,2倍連動債について,ノックイン条件が満たされた事実を担当社員が顧客に告げていないのに,告げた旨の虚偽の社内の接触履歴を作成したこと,顧客が勧誘時に元本保証と告げられていたこと等の事情から,顧客が元本保証の商品と誤信して購入したものであるとして説明義務違反を認めた。また,ノックイン条件及びノックイン条件が満たされた場合のリスクは,本件仕組債の最も重要な商品特性かつリスクであるとして,この点に関する錯誤は要素の錯誤に該当すると判示し,錯誤無効も認めた。その上で,認容額が大きくなる不法行為による損害賠償請求を認容した。

 【セレクト47掲載予定】

5.アコムの空白期間がある事案について,同一の基本契約に基づく継続的な取引として一連計算が認められた事案(大阪地方裁判所平成25年6月28日判決,奈良地方裁判所平成26年9月19日判決)

 アコムの取引に6年の空白期間のある事案について,旧取引の終了日に基本契約の解約手続がとられず基本契約に関する変更契約が締結されたこと,新取引は変更契約に基づいて行われた取引であることから,上記変更契約は基本契約を同一性を有する範囲内で変更したものであり,同一の基本契約に基づく貸借取引であるとして一連計算を認めた(大阪地方裁判所平成25年6月28日判決)。

 また,アコムの取引に4年2か月の空白期間のある事案について,基本契約が解約されていなかったこと,新たな貸付の際に実質的な与信審査をしていないことなどから,同一の基本契約に基づく貸借取引であるとして一連計算を認めた(奈良地方裁判所平成26年9月19日判決)。

 【名古屋消費者問題研究会HP