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消費者問題速報 VOL.125 (2014年6月)

1.期限の利益喪失の主張及び遅延損害金の請求を信義則に反するとして認めなかった判決(横浜地裁平成26年5月16日判決(控訴審)、福井地裁平成26年5月16日判決)

 アイフルが期限の利益喪失後も、一括弁済を求めず、当初の約定に基づく元利金の弁済を受領し続けたことから、期限の利益を喪失していないとの借主の誤信はアイフルの不作為によるものであると認定し、アイフルからの期限の利益喪失の主張は、借主の信頼を裏切るものであり、信義則に反し許されないとした。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

2.消滅時効完成後長期間経過した後に、消費者金融の社員から一部弁済の要求に応じ、少額の弁済をした場合でも、なお消滅時効の援用を認めた判決(大阪地裁平成26年3月17日判決(控訴審)、宮崎地裁平成26年4月23日判決)

 最終の取引日から8年以上経過した後に、ギルドの社員から返済を求められ少額の弁済をした事案について、消滅時効に関して法的知識に乏しい借主に多額の遅延損害金を含む残元金の一括返済を求め、少額でも支払えば分割払いに関しての交渉が可能となるかもしれないと誤信させ、消滅時効の援用を封じようとした取立行為は、借主の無知に乗じて高額の債権を回収せんとするものであり、このような貸金業者との関係で消滅時効を援用することは信義則に反しないとした(宮崎地裁の事案では、不適切な取立行為に応じた弁済が任意に基づくものではないとして同様の結論を導いている)。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

3.同一クレジットカードで取引に4年11か月の空白期間がある事案につき、一連計算を認めた判例(さいたま地裁平成26年4月18日判決)

 第1取引終了後もクレジットカードの年会費を支払っていたこと、及びカードの失効手続がとられていなかったことから、いつでも新たな借入が可能な状態であり、借主としても自ら期限の利益を放棄して約定債務を一括して弁済するなど、本件取引を確定的に終了させる意思を有していたとは認めがたいとして、第1取引終了から第2取引開始まで約4年11か月の空白期間があっても過払金充当合意の存続を認め一連計算を認めた。

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4.原告顧客の勧誘の要請があったとする被告先物取引会社の主張を退け、不招請勧誘があったと認定し、損害賠償を認めた判例(広島地裁平成26年6月4日判決)

 本判決では、原告が当初純金積立取引に興味を持ち、被告店舗を訪れたこと、及び被告では純金積立を取り扱っておらず、その代わりに手持ち資金のほぼ全額を使って金地金を購入したことから、原告がその当時商品先物取引をすることを考えていなかったことは明らかであると認定している。

 そして、かかる原告が金地金購入から間もない時期に金先物取引を開始し、その証拠金に充てるために購入したばかりの金地金を売却することが原告の先物取引勧誘の招請の結果とは考えにくく、むしろ被告担当者からの積極的な商品先物取引開始への勧誘行為があったと認定するのが相当である判断し、商品先物取引法に反する不招請勧誘があったと認定している。

 また、原告から勧誘を招請したとする確認書に原告が署名押印していることについても、原告が同書面作成日付を被告担当者に言われるままに6日遡らせていることから、原告がその書類の文言の持つ意味を深く考えて署名押印したとは考えられないとして、結論に影響を与えないとしている。

 そして、不招請勧誘と併せ、適合性原則違反、及び説明義務違反を認定し、民法715条1項に基づき、損害賠償を認めている(過失相殺2割)。