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消費者問題速報 VOL.119 (2013年12月)

1 121関連ファンドに関し,代理店や収納代行会社の責任を認めた判決

 東京地方裁判所平成25年11月13日判決は,121ファンド商法(複数の会社が関与するFX自動売買システム商法。代理店が複数階層にて構成されていた。なお,外国人の代表者の所在は不明)に関して,運用実態が伴っていなかったことや違法勧誘があったことを前提に,代理店の「運用実態がないことを知らなかった」という主張を排斥し,その責任を認めました。また,資金送金先となっていた収納代行会社からは「カード業務委託契約に基づく収納委託業務をしていただけである」との主張がなされましたが,契約内容と業務実態の齟齬を指摘した上で,同社が「121商法の資金収集の一端を担っていた」と認定して,同社及びその代表者の責任も認めました。

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2 債務者が消滅時効完成後に一部弁済したのは,ギルドの脅迫的言動によって恐怖心を抱いていたからだとして,その後の消滅時効援用を認めた判決

 大阪地裁平成25年10月25日判決(控訴審)は,ギルド(旧トライト)が,債務者が消滅時効完成後に2回弁済(合計1万5000円。なお,残債務は90万円以上)して債務を承認したことを理由に,貸金の返還を求めた事案について,債務者が合意成立前の電話督促翌日に支払をしたのは,ギルドからの脅迫的言動により恐怖心を抱いていたことによるものだと認定したうえで,債務者がかかる支払によって消滅時効援用権を失うことはないと判断し,ギルドの請求(控訴)を棄却しました。

 

3 マルフクからディックファイナンスへの債権譲渡について,異議を留めない承諾があっても,ディックファイナンスはみなし弁済の適用がないことについて悪意・重過失であったとして,債権譲渡額についての引直し計算を認めた判決

 東京高裁平成25年8月28日判決は,CFJ(旧ディックファイナンス)に対する過払金返還請求事案について,マルフクからディックファイナンスへ債権譲渡された際に,債務者が異議を留めない承諾をした場合であっても,ディックファイナンスは,貸金登録業者であり,譲渡に際しては金銭消費貸借契約書,借入申込書,審査記録等を譲り受け,その内容を認識していたと推認でき,当該取引にみなし弁済の適用がないことについて悪意(仮に善意だとしても重過失)であったと認められるとして,譲渡時の債権額につき引直し計算後の金額を前提に,過払金請求を認容しました。

 なお,同様の事案について同旨の判断をしたものとして,仙台地裁平成25年11月20日判決(控訴審)もあります。

 

4 17条決定について錯誤無効を認め,その効力を否定した引直し計算を認めた判決

 大分地裁平成25年11月19日判決は,平成15年4月に特定調停において貸金返還に関する17条の決定がなされている事案について,17条決定は実質的には裁判所による最終的な調停案の提示であり,異議申立がない場合に裁判上の和解と同一の効力を生じる制度であり,和解の効力規定や錯誤の規定の類推適用があるとしたうえで,本件では,特定調停時に取引履歴の開示を受けておらず,債務者が当該取引についてみなし弁済の適用がなく過払金返還請求権が発生していることについて判断するための基礎となる情報を有しておらず,貸金債務の不存在及び過払金の発生は,当該決定の内容である事項にはなっていなかったので,かかる事項の錯誤は,当該決定の前提又は基礎とされた事項であり,本件ではかかる事項について錯誤が認められると判断し,17条決定の効力を否定して引直し計算をした上で,過払金請求を認容しました。

 

5 集団的消費者被害回復訴訟制度についての法律の成立・公布

 集団的消費者被害回復訴訟制度を定めた「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」が平成25年12月4日に可決され,同月11日に交付されました。詳しくは消費者庁HP

 http://www.caa.go.jp/planning/index14.html

6 カネボウ美白化粧品白斑被害救済愛知弁護団結成

 ㈱カネボウ化粧品外が製造販売する一部の化粧品を使用したことによって白斑被害を受けた被害者の被害救済を図るため,12月21日,カネボウ美白化粧品白斑被害救済弁護団が結成されました。今後,全国各地の弁護団と連携をしながら被害救済にあたっていきます。お問い合わせは弁護団長石川真司もしくは事務局長徳田万里子まで。HPアドレスは,http://www.hakuhan-aichi.jp/

7 商品先物取引の不招請勧誘禁止の撤廃が問題とされています

 金融庁が総合取引所の下での商品先物取引の不招請勧誘禁止の撤廃を検討していま  す。これに対して、内閣府消費者委員会は、平成25年11月12日に、「規制が緩和 されると、商品先物取引の被害の増加が予想される」などとして禁止撤廃に反対の意見 を出しました。また、日弁連や、当会をはじめとする全国の30を超える単位弁護士会 でも、禁止撤廃反対の会長声明や意見書を出しています。しかし、金融庁は、最終的な 結論を出しておらず、まだ予断を許さない状況にあります。