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消費者問題速報 VOL.118 (2013年11月)

1 振り込め詐欺事件の現金送付先として使用された私設私書箱の管理会社代表者に対し、不法行為に基づく損害賠償金の支払い義務を認めた判決(大分地裁平成25年10月23日判決)

 原告(70歳代女性)は昨年10月、息子を装った男から電話で「会社の金を使い込んで警察署に勾留されており、金を送ってくれないと出られない」などと言われてこれを信じ、男の指示どおり現金1000万円を箱に入れて、被告が代表を努める会社の住所宛に送付し、詐取されました。

 被告は、会社の業務として私設私書箱サービスを営んでいただけであり、詐欺事件に関与していない旨主張しましたが、上記判決は、被告が犯人とみられる男らと共謀の上、「組織的、継続的にいわゆる振り込め詐欺を行ってきたことは優に推認できる」として、被告に対し、全額の1000万円及び遅延損害金の支払いを命じました。

 

2 医師の意見書等を根拠として、高齢の女性を投資信託取引に勧誘したことは適合性原則に著しく逸脱していると判示した判例(大阪地裁平成25年10月21日判決)

 本判決は、原告女性(取引当時78歳)が購入した投資信託はそれほど投機性の高い商品ではないとしながら、原告の症状や医師の診断内容(認知症)、介護状況等に関する詳細な事実認定をした上で、原告が本件取引当時に商品の各種リスクを理解することができる状況にあったとは考え難いとし、「原告に本件取引を勧誘したことは、顧客の意向と実情に反して明らかに過大な取引を積極的に勧誘し、適合性原則に著しく逸脱したものというべきである」として、適合性原則違反を肯定しました。

 また、原告は上記投資信託の保有を継続していたため、損害発生の有無が争われましたが、「口頭弁論終結時における評価額と購入代金との差額が発生している場合には、その損害は現実化したと認められる」として、損益相殺として受領済みの分配金を控除した後の金額に約1割の弁護士費用を加え、過失相殺を行うことなく、原告の損害賠償請求を認容しました。

 【全国証券問題研究会HP

3 生命保険会社が裁判所の和解勧告を受け入れ学資保険の元本割れ分全額の返還に応じた事例(大阪高裁平成25年10月23日和解)

 本件は、子どもの教育資金を貯めるいわゆる学資保険で、支払った保険料よりも受け取る額が少ない「元本割れ」が起きたとして、契約者が住友生命に対し、子ども2人分の保険料(元本)と満期時の受取金額との差額計約42万円の返還を求めたところ、控訴審で和解が成立した事案です。

 住友生命広報室によれば、「元本割れがあり得る保険商品だったが、満期時の受取額について外交員の説明に断定的で不適切な点が一部あり、顧客に誤解を生じさせてしまった」ことを理由に、裁判所の和解勧告を受け入れたとのことです。

 【2013年10月28日付読売新聞】

4 貸付けと返済に個別対応関係がある回数指定払であってもカード契約に過払金充当合意が含まれるとし、取引の中断期間が1年以上あっても同一の基本契約下の取引において充当合意の内容を変更又は解約する新たな合意がされたと認めるべき事情もないとして、一連計算を認めた判例(東京高裁平成25年8月30日)

 本判決は、本カード契約ではリボルビング払による取引と1回払を含む回数指定分割払の取引とが順次又は並行的に行われることも当然に予定されており、回数指定分割払を選択した場合であっても、借主が借入限度額の範囲内において繰り返し貸金業者(オリコ)から金員を借り入れることができるという法律関係からみれば、リボルビング払による弁済とは繰り返し借り入れる借入金の返済の額及び時期の違いに過ぎないとして、本カード契約に過払金の充当合意が含まれていると判示しました。

 その上で、同一基本契約の下での取引において、取引中断期間が441日あったとしても上記充当合意の内容を変更し又は解約する新たな合意がされたと認めるべき事情もないとして、一連の充当計算を認めました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

5 貸金業者間(タイヘイ・アイク間)の債権譲渡につき借主が異議をとどめない承諾をしても、譲受人アイクが悪意であるとしてその承諾の効果を認めなかった判決(大津平成25年6月13日)

 本件借主は、貸金業者タイヘイからアイクへの債権譲渡について「債権譲渡・譲受の御通知兼承諾書」と題する書面で異議なく承諾する旨の記載の下に署名をしていたところ、本判決では、債権譲受人たる貸金業者(アイク)は、債務者の抗弁事由につき悪意であるから信頼保護を与えることを要しないとして抗弁喪失の効果を認めず、借主の請求を認めた。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP