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消費者問題速報 VOL.117 (2013年10月)

1 結婚相手紹介サービス(特定継続的役務提供契約)について,書面不備を理由としてクーリング・オフを認めた判決(名古屋簡裁平成25年9月27日)

 業者が交付した書面には,契約締結後8日間以内は,クーリング・オフが可能との記載はあったものの,法令で定められた事項の記載を欠いていた事案で,裁判所は,契約書には,クーリング・オフに関する事項等,法令で定められた契約書面に必要な記載に不備があり,このような不備のある契約書面の交付によってはクーリング・オフ期間の開始は認められないと判示した。

 また,契約締結日から1年近く経過した時点で,解除の意思表示を行った点についても,権利濫用には当たらないとした。

2 実際には149万円余の過払金が発生しているにもかかわらず,64万円余の残債務があることを確認し,毎月3万円の分割弁済を定めた調停合意は,錯誤により無効であることを認めた判決(山口地裁岩国支部平成25年9月9日)

 上記判決は,残元金の存否ないし額等の別件調停で争いにならず,前提となった事項に関し,原告に錯誤がある場合は,調停は無効になることを前提として,利息制限法所定の制限利率に引き直して計算した結果と調停内容が乖離しており,かつ,借主がその事実を認識しておらず,認識しなかったことについて,貸金業者が正確な取引履歴を開示しないなど,貸金業者側に起因する事情がある場合には,法律行為の要素について借主に動機の錯誤があり,かつ,その動機は表示されているというべきであり,当該動機について借主に重過失があるとはいえないから,当該調停は無効になると判示し,本件では上記要件を充たすとして,上記調停を無効とし,原告の過払金請求を認めました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

3 実際には,95万円余の過払金が発生しているにもかかわらず,約定利息で計算した23万円の支払義務のあることを確認した訴外和解について,要素の錯誤による無効を認め,貸金業者(アイフル)に過払金の支払いを命じた判決(さいたま地裁平成25年6月28日)

 上記判決は,本件和解契約に際して元金の存在及び額は当然の前提として争いの対象とされておらず,被告の担当者も原告が元金の存在を信じていたことを認識していたこと,本件和解契約の内容等に照らせば,原告において元金が存在せず過払金が生じている可能性を認識していれば本件和解契約の締結に応じなかったことは明らかであることを理由に,本件和解契約には要素の錯誤があり,無効であると判示しました。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

4 17条決定は,和解に類似したものと評価することが相当であるとして,錯誤(民法95条)の類推適用を認めて貸金業者(CFJ)に過払金の支払いを命じた判決(岐阜地裁多治見支部平成25年9月17日)

 貸金業者が,取引履歴の一部を提出しなかった場合に,その部分の取引を除外してなされた17条決定の効力及びかかる17条決定を受け,原告が支払を強制されたことに対する慰謝料請求の可否が争われた事案において,上記判決は,17条決定は,その効力発生について和解と同様に当事者の意思が介在していること,異議がないときは和解と同一の効力を有するとしていること等から,和解に類似したものと評価するのが妥当とし,錯誤規定の類推適用が認められるとした。

 また,慰謝料請求の点については,貸金業者は原則として債務者に対し,信義則上,保存している業務帳簿に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負い,その一部しか開示しない場合には当該行為は違法になることを前提として,貸金業者の行為には欺罔の故意が認められるか,仮にその故意がないとしても極めて重大な過失が認められるというべきであると判示し,貸金業者に対し,10万円の支払いを命じた。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

5 適格消費者団体による差止請求訴訟の控訴審において、専門学校のAO入試等に関する学納金不返還条項について一定の時期までに入学辞退の申出があった場合は返金に応じる旨規定を変更する和解が成立(名古屋高裁平成25年9月13日和解)

 特定非営利活動法人消費者被害防止ネットワーク東海(旧名称:あいち消費者被害防止ネットワーク・ACネット)が、学校法人モード学園の運営する「名古屋医専」の学納金不返還条項(AO入試、推薦入試、専願での一般・社会人入試及び編入学入試によって合格した受験生が前納した授業料等の学費は一切返金しない旨の規定)が消費者契約法9条1号により無効であるとして使用差止を求めた差止請求訴訟の控訴審(名古屋高裁)において、それぞれの入試区分に応じ一定の時期までに入学辞退の申出があった場合は返金に応じる規定に改訂するとともに、既に募集が始まっている入試に合格した受験生に対しても同じ扱いをすることをモード学園が約する和解が成立した。

 なお、原審判決(名古屋地裁平成24年12月21日・判時2177号92頁)は、学納金不返還条項を無効としてモード学園に対し使用差止を命じていたが、モード学園は控訴し、平成25年春から開始された入試においても同様の規定を使用し続けていた。

 【消費者被害防止ネットワーク東海HP

6 美白化粧品白斑被害110番が開催されます

 愛知県弁護士会では、カネボウ化粧品等が販売した美白化粧品のうち、医薬部外品有効成分「ロドデノール」が配合された製品を使用して白斑(肌の色が斑に白く抜ける状態)被害を受けた被害者の方々を対象に「美白化粧品白斑被害110番」を実施します(開催日:平成25年11月20日午前10時~午後4時まで 於 愛知県弁護士会館)。