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消費者問題速報 VOL.116 (2013年9月)
1 ホームページ制作会社の詐欺的商法によるクレジット契約は無効だとして,美容院を経営する60代の女性がセディナに対し支払済代金54万円の返還を求めたところ,契約を無効としたうえで,全額の返還を命じた判決(京都地裁平成25年7月30日判決)
セディナとの間の立替契約に関する意思表示は,表示(CDROM購入代金のクレジット契約の申込み)と内心の意思(ホームページ制作代金のクレジット契約の申込み)との間に不一致があり,同不一致は要素に関する錯誤に該当するため民法95条により無効として,残債務(108万円)の支払義務は負わず,既払額(54万円)の返還を求めることができるとしました。セディナからは「錯誤について重大な過失がある」との主張がされましたが,旧クオークの担当者でさえ加盟店の行動に疑いを持たなかった点で顧客と変わりがないこと等から,民法95条による救済を否定すべきではないとし,当該主張は失当としました。
2 クレジットカード契約につき,4年4ヶ月の取引の空白期間のある事案で,毎年年会費を払っていた等として契約の終了を認めず,原判決を破棄・差し戻した判決(広島高裁平成25年7月18日判決)
同一クレジットカード(オリコ)で,取引に4年4ヶ月の空白期間がある事案につき,取引を分断し分断前の過払金の時効消滅を認めた控訴審判決につき,約定債務の完済後もカード年会費を支払っていたこと,クレジットカードが専ら金銭消費貸借取引に利用する目的でカード契約を継続したものと推認されるとして,約定債務の完済により本件取引を終了させる意思があったとは認められないと判示し,原判決を破棄・差戻としました。
3 実際には70万円余りの過払金が発生しているにもかかわらず,約定利息で計算した34万円の支払義務をあることを確認した平成19年4月の訴外和解の錯誤無効を認め,アイフルに過払金の支払いを命じた判決(神戸地裁平成25年6月19日判決)
債務の不存在及び過払金の発生は争いの目的事項となっていなかったとして,過払金には和解の確定効が生じないことを認めたうえで,借主は,過払金債権が発生しているにもかかわらず残債務があることを前提とした合意を締結しているところ,借主が錯誤に陥っていなければ合意を締結するはずがないことは当然であり,意思形成の前提となる重要な事実に錯誤があったとして,実際には70万円余の過払金が発生しているにもかかわらず,約定利息で計算した34万円の支払義務のあることを確認した平成19年4月の訴外和解の無効を認め,アイフルに過払金の支払いを命じました。
4 特定調停における利害関係の調整は,調停で開示された取引履歴の期間の債権債務に限定され,17条決定の清算条項の及ぶ範囲もその期間の債権債務に限定されるとして,CFJに過払金の支払いを命じた判決(福岡高裁宮崎支判平成25年5月29日判決)
特定調停において,実際には157万円の過払金が発生していたにもかかわらず,13年間に及ぶ取引履歴のうち最後の5年分しか取引履歴を開示しなかったことから,解決金をCFJに支払う旨の17条決定を借主が受け入れた事案につき,借主が正確な認識を有していたならば,CFJに金員を支払うという内容の17条決定を受け入れたとは到底考え難く,当事者間ではCFJが提出した取引履歴の期間の取引により生じた債権債務に限定して利害関係を調整する意思を有していたことが認められ,17条決定の清算条項の及ぶ範囲も開示された取引履歴の債権債務に限定されるとし,CFJに過払金の支払いを命じました。(CFJは上告受理申立て。)
5 貸付中止措置の時から過払金債権の消滅時効が進行を始めるというアコムの主張を退けた判決二つ(東京高裁平成25年5月9日判決,仙台高裁平成25年5月10日判決)
アコムの貸付け中止措置は,取引実績に応じて見直しが行われ,弁済の状況等に応じて解除されて新たな貸付けが行われることがあったことが認められるとし,貸付中止措置が講じられたことをもって,直ちにその後において新たな借入金債務の発生が見込まれなくなったとはいえない等として,貸付停止措置の時から過払金の消滅時効が進行するというアコムの主張を退けました。
6 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入と弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合において,過払金が発生している時点で新たな借入れをしたときには,利息制限法1条1項にいう「元本」の額は,新たな借入金に上記過払金を充当した後の額をいうとした判決(最高裁平成25年7月18日判決)
過払金が発生している時点で新たな借入れをしたときの利息制限法1条1項にいう「元本」の額につき,「継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約に基づいて金銭の借入れと弁済が繰り返され,同契約に基づく債務の弁済がその借入金全体に対して行われる場合において,過払金が発生している時点で新たな借入れをしたときには,利息制限法1条1項にいう「元本」の額は,新たな借入金に上記過払金を充当した後の額をいうものと解するのが相当である。」「過払金24万1426円が発生している時点で新たに100万円の借入れがされたというのであるから,利息制限法1条1項にいう「元本」の額は,上記借入金に上記過払金を充当した後の額である75万8574円となり,以降の取引に適用される制限利率は年1割8分となる。」として,同「元本」の額を新たな借入金そのものの額とし,100万円の借入れ以降の取引に適用される制限利率を年1割5分と判断した原審の計算書記載の取引に関する部分を破棄・差戻としました。
【最高裁判所HP】
7 第70回先物取引被害全国研究会名古屋大会開催のお知らせ
第70回先物取引被害全国研究会名古屋大会が、下記のとおり開催されます。名古屋先物証券問題研究会が30周年を迎えるのにあわせて,10年ぶりに地元名古屋での全国大会開催となります。先物取引被害に関心のある方は,ぜひ奮ってご参加ください。お問い合わせ先は当会の正木健司会員です。
日時:平成25年11月1日(金),2日(土)
場所:研究会(兼懇親会)会場 「マリオットアソシアホテル」
〒450-6002 名古屋市中村区名駅JRセントラルタワーズ2階