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消費者問題速報 VOL.114 (2013年6月)

1 過払いとなっている貸金債権が譲渡された事案につき、譲受会社が文書提出命令に従わず債権譲渡契約書を提出しなかったので、真実擬制により既発生の過払金を承継する合意があったと認め、譲受会社に過払金の支払を命じた判決(大阪地裁平成24年12月12日判決:控訴審)

 武富士が控訴人に対する債権を富士クレジットに譲渡した(本件債権譲渡契約)際、既に発生していた控訴人に対する過払金返還債務を富士クレジットが承継する合意があったかが争点となった。原審は承継を認めなかったが、控訴審で本件債権譲渡契約書についての文書提出命令が発せられ、富士クレジットはこれに従わず債権譲渡契約書を提出しなかった。そのため本判決は、真実擬制により、武富士が負う過払金返還債務を富士クレジットが承継する合意があったと認定した。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

2 先行する無担保貸付がリボ払で、切替後の不動産担保貸付もリボ払いの事案(アコム)につき、無担保貸付取引と不動産担保貸付取引の一連計算を認めた判決(東京地裁平成25年5月13日判決:控訴審)

 第1取引(無担保・リボ払)と第2取引(不動産担保・リボ払)の一連一体性が争われた事案について、本判決は、第1取引が解消され第2取引が開始するに至る経緯、その後の取引の実情等の事情に照らし、「当事者が第1取引と第2取引が事実上1個の連続した貸付取引であることを前提に取引をしていると認められる特段の事情があるから、第1取引と第2取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価」するのが相当として、一連計算を認めた。具体的事情として、①第2取引開始にあたり特段の資金需要があったわけではない、②共にリボ払い形式で同じATMカードを使用していた(但し第1取引の契約書は返還済)、③第2取引開始にあたり借り入れた金員はほぼ全額が借入当日中に返済に充てられ、第2取引でも第1取引と同様に借入・返済が繰り返された、という点を根拠としている。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

3 クレジットカード取引(アプラス)につき、7年2ヶ月の空白期間のあるクレジットカード取引について、1個の包括的な基本契約に基づく取引であるとして、一連計算を認めた判決(大阪地裁平成25年4月26日判決)

 クレジットカードの利用契約を締結後、有効期限が複数回更新された事案において、本判決は、「本件契約が原告の退会等により終了しない限りは、カードキャッシングとして、一定の利用可能枠の限度内で、一定の契約条件の下、継続的に借入と弁済が繰り返されることが予定されており、本件契約それ自体に継続的取引契約の要素を含んでいるものとみとめられる。」とした上、「本件取引期間中、取引のない期間が長期に及ぶ時期があるとしても、複数の取引に分断されると解することはできないから、本件取引は一連の取引」であるとし、カードを利用しなかった期間がたとえ7年2ヶ月間あったとしても一連計算を認めた。

 【名古屋消費者信用問題研究会HP

4 社会福祉法人に対する仕組債(株価連動債)の販売について、野村證券に対し、適合性原則違反は否定したが説明義務違反を認めた判決(静岡地裁平成25年5月10日判決)

 本判決は、EKO債及びトリガー付株価指数リンク債という仕組債の商品特性について、それぞれ、元本毀損の確率が高くリスクの大きい商品であることを認定した上で、適合性原則違反については、顧客及び担当者に株式や投資信託の豊富な経験があり、投資にかかる知識も相当程度有していたと推認できることや、顧客の潤沢な財産状態の中で余剰資金の2分の1という限度内で投資運用していたことなどを根拠に否定した。他方で、説明義務違反については、証券会社担当者が、本件仕組債(EKO債)は公益法人向けのものであり多くの学校が購入し地方公共団体も購入しているなどとリスクの判断を誤らせるおそれのある発言をしたこと、いずれの仕組債についても元本毀損が発生する可能性がどの程度あるかについて原告が理解できるだけの具体的な説明をしていないことから、これを肯定した。

 【全国証券問題研究会HP

5 債務整理を受任した弁護士が、特定の債権者の債権につき消滅時効の完成を待つ方針を採る場合において、上記方針に伴う不利益等や他の選択肢を説明すべき委任契約上の義務を負うとされた事例(最高裁平成25年4月16日判決、破棄差戻し)

 本判決は、債務整理を受任した弁護士が特定の債権者に対する残元本債務をそのまま放置して消滅時効の完成を待つ方針を採る場合において、上記方針は、債務整理の最終的な解決が遅延するという不利益があるほか、上記債権者から提訴される可能性を残し、一旦提訴されると法定利率を超える遅延損害金も含めた敗訴判決を受ける公算が高いというリスクを伴うものである上、回収した過払金を用いて残債務を弁済する方法によって最終的な解決を図ることも現実的な選択肢として十分に考えられたなどの事情を認定し、受任弁護士について、委任契約に基づく善管注意義務の一環として、委任者に対し、時効待ち方針に伴う上記の不利益やリスクを説明するとともに、残債務額全額を支払うという選択肢があることも説明すべき義務を負うと判示した。

 【裁判所HP

6 国内公設先物取引について、説明義務違反、断定的判断の提供、過当取引を認め、過失相殺を否定した判決(名古屋高裁金沢支部平成25年4月17日判決)

 本判決は、商品先物取引も証券取引も一切経験のなかった元中学体育教師(大卒、定年退職者)に対し、リスクが小さいハイブリッド取引だと勧誘し、間もなく通常取引に移行して特定売買を繰り返し多額の手数料を支払わせたという事案について、説明義務違反、断定的判断の提供、過当取引を認定した上、口座開設申込書に虚偽の記載をするよう唆したり、取引を継続させるよう担当者を交代させて説得した行為等、従業員らの行為の違法性が強い点を重視し、過失相殺を否定した。

 【弁護士会保管】

7 K&A被害弁護団の結成について

 高利回りをうたって一般投資家に社債を販売していた投資会社「K&A」が自己破産をした問題で、被害救済のため弁護団が結成されました。弁護団長は荒尾直志会員、事務局長は正木健司会員(052-961-3071、近日中に専用ダイヤル開設予定)です。